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福岡で東京のCG業界の今を知る! 「クリ探 in 福岡」レポート

福岡で東京のCG業界の今を知る! 「クリ探 in 福岡」レポート

Session2 東京のCG業界で働くコト

セッション2部ではまず、東京には260社、首都圏まで範囲を広げると316社のCGプロダクションがあることが示され、全国のCGプロダクションの約7割が、首都圏に集まっていて(※CGWORLD 200号 特大プレゼント読者アンケートに基づく)一大拠点になっていることを認識させられた。パネルディスカッションでは、東京で働くことの魅力や、プロダクション同士の関係、さらに、スタッフのライフスタイルなどについて意見が交わされた。

まず、東京ならではの強みとして、「映画やアニメのほとんどが首都圏で企画、制作されているので、クライアントの数だけ需要がある」、「小規模のプロダクションでも大きな作品に携われるチャンスが多い」などのコメントが寄せられた。様々なジャンルの仕事に携わりながら、どんどん腕を磨いていける環境が東京にはあるようだ。

プロダクション同士の関係について、ノブタ氏は「他の業界よりも横のつながりは強いと思います。情報を共有したり、技術的なアドバイスをもらったり、採用に関して良い人がいないかなどを聞くこともあります」と語り、林氏も「アプリケーションごとにLINEのグループを組んでいる人たちもいて、例えばNukeで50~100人ぐらいのメンバーが仕事のやりとりなどをしていて、そのつながりから転職する人もいます」と話すなど、各社とも横のつながりの大切さを強調した。

仕事のチャンスが多い東京だが、学生たちの中には「仕事がハードなのでは?」、「家賃の高い東京でやっていけるだろうか?」と不安を感じる者もいるだろう。そこで、労働時間と休日についてのアンケート結果を踏まえながら、各社が実情を語った。

アンケート調査『CGWORLD白書 2016』より抜粋(※)。東京のCGクリエイターの実働時間は、平均9.3 時間(通常時)で、全国平均の7.9時間より1.4時間ほど長い。年間の休日は、101~120日との回答が半分近くを占め、週休2日が定着しつつあることが窺える

※調査方法:Webアンケート、調査期間:2016年6月1日(水)~13日(月)、調査対象:CG・映像業界勤務者、回答者数:198名

ノブタ氏は、「以前に比べたら労働時間は減っていて1日10時間ぐらい。それでも他の業界より長いかもしれませんが、土日は休むという習慣が根付いてきていると思います」と、労働時間が短縮傾向にあることを述べた。高田氏も、「労働時間が長いといっても、仕事中に休んでいることも多い。弊社では最近、勤務時間の見直しを図り、10時出社19時退社を徹底したところ、それまでの長時間労働が改善されました」と話し、他社もあまり遅くまで会社にいないよう、スタッフに働きかけているようだ。家賃については、住宅補助を支給する会社もいくつかあった。さらに、CG業界で長く働き続けていくためには、出産や育児をすることになった場合の会社の対応も気になるところだが、これについて林氏は、「子どもが生まれたばかりの男性スタッフは早めに退社して、残った仕事は、家で育児の合間に作業をしてもらう形をとっています。出産を機に退職した女性スタッフについては、仕事を再開したいということであれば、自宅で作業できるように、今後はインフラや機材面のサポートに力を入れていきたい」とのことで、人材を大切にしていこうという姿勢が窺えた。

Session3 採用されるコト

最後のセッションでは、ポートフォリオや面接など、採用に関わるポイントや、求める人材について意見が交わされた。

ポートフォリオに関しては、学校の課題を送ってくるケースが多いが、よほど突き抜けたものがないと採用は難しいだろうという意見が多かった。それよりも粗削りで良いから、その人の個性ややりたいことが伝わってくるようなオリジナル作品を1点でも多くつくって欲しいというのが各社共通の思いだ。山浦氏は、「ただクリエイターになりたいだけでは続かない。業界で残っていきそうだなと思う学生の作品からは目標のようなものが感じられるので、僕らも『この学生はこういうものがやりたいんだな』というのがわかります。自分のやりたいという気持ちをきちんとぶつけた作品をもってきて欲しい」と学生たちに求めた。履歴書については目を通すものの、各社ともやはり作品重視のようだ。面接に関しては、一緒に働く仲間になるので、お互いに相手の人となりを知ることは大事だという意見が出た。

採用のポイントとしては、ノブタ氏の「ガッツのある人が欲しい」という言葉に象徴されるように、各社とも意欲や熱意を重視している。実際、ノブタ氏の神央薬品では、制作意欲にあふれた18歳の若者や、31歳の社会人を採用したこともある。さらに各社とも、新卒者には即戦力であることを求めず、伸びしろを見て採用していることも興味深い。林氏は、「学生は基本的にできないと思っているので、今できなくても大丈夫。会社はうまくできる方法を知っています。半年である程度できるようにする自信は各社さんあると思います。ただ、会社はいつまでも与えてくれるわけではない。自分で様々なことを調べて、先へ進んでいこうとする自主性が見られるかどうかが採用の大きなポイントです」と述べたように、学生時代も入社後も自分から貪欲に学ぼうとする姿勢が大切であることが伝わってきた。

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