人間としてのリアリティを保ちつつ複雑なギミックを成立させる
生身の人間としての描写と同じく、本作のキャラクター表現における要となるのが、犬屋敷と獅子神の身体に組み込まれたメカの表現だ。これらのメカ機構のモデル制作をリードしたのは、キャラクターアーティストの池田直人氏と植木智之氏、そして前のページでも紹介した山田氏だ。池田氏が犬屋敷のメカ全般のモデリングと質感設定、頭部と背中のギミックを担当。植木氏は犬屋敷の腕部のメカのモデリングとギミックを担当。そして、山田氏が獅子神のモデル全般を担当した。
左から、池田直人キャラクターアーティスト、植木智之キャラクターアーティスト、山田紘士キャラクターアーティスト(以上、デジタル・フロンティア)
変形ギミックのベースデザインとギミック案についてはプロダクションI.Gの竹内敦志氏が手がけている。竹内氏から提案されたデザインに対して、キャラクターとしてよりリアルな動きを表現できるように、DFメンバーからも背骨の構造を提案するなど、具体的なアイデアの提案をしながら、最終的なメカ機構のデザインが詰められていった。
メカ機構の設定
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メカ機構のデザインならびにギミック案は、メカニックデザイナーとして高名な竹内敦志氏(プロダクションI.G)が手がけた。リアルな画づくりを実現させるべく、背骨の構造をデザインに込めてもらう、アニメーションとの整合性を高めるためのサブジェットなど、DF側からの提案も随所に反映されている
犬屋敷と獅子神2体のメカ機構を作成する必要があったわけだが、基本的に獅子神のメカ機構は犬屋敷のメカアセットのプロポーションを変更して流用しているという。ただし、頭部の分割が異なっていたりもするため、その調整に相応の時間を要したそうだ。佐藤監督からも、頭部が開いた時の断面の状態や、分割際にある毛髪の状態など細かい要望があったという。「詳細なデザイン画があったので、モデリング自体はやりやすかったです。ただ、数えきれないほど膨大なパーツ数だったのでUV展開が非常に苦労しましたね。メカ機構の制作だけでも60日ぐらい要したかもしれません」と、池田氏はふり返る。
変形ギミック
無数にあるメカパーツの質感調整ではSubstance Painterを重宝したとのこと。スマートマテリアルを使用して効率良く質感付けを行うことができたというが、そもそも物量的に手描きでテクスチャを作成するのは到底無理だったとか。Substance Painterでベースのテクスチャを作成した上で、ディテールはMARIで描き加えられていった。
メカ機構のルックデヴメカ部分の質感調整にはSubstance Painterが用いられた
メカ造形の最終ルック。細かな発光するパーツが多いため、ノイズを回避するためにはレンダリングサンプル数を高く設定する必要があったという
本プロジェクトでは、Arnoldレンダラを全面的に採用。人間としてもメカとしても非常に精細なモデルのため、サンプリング精度を上げることが必須であった。重いショットでは1フレーム8時間を要したそうだ(レンダーファームはクアッドコアを中心に約300台で構成)。アセット制作中もネットワークレンダリングを使ってレンダリングし、時間をかけた試行錯誤が行われている。DFとして、Arnoldを本格的に導入した初の事例にもなったというが、サブサーフェスの表現やヘア表現において確かなクオリティの向上を実感できたことから、今後もリアル系の案件ではArnoldをメインに用いる方針だという。
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映画『いぬやしき』
全国東宝系にて公開中
<キャスト>
木梨憲武 佐藤 健
本郷奏多 二階堂ふみ 三吉彩花
生瀬勝久 / 濱田マリ 斉藤由貴 伊勢谷友介
<スタッフ>
原作:奥 浩哉「いぬやしき」(講談社「イブニング」所載)/監督:佐藤信介/脚本:橋本裕志/音楽:やまだ 豊/プロデューサー:梶本 圭、甘木モリオ/撮影監督:河津太郎/美術監督:斎藤岩男/CGプロデューサー:豊嶋勇作、鈴木伸広/VFXスーパーバイザー:神谷 誠、土井 淳/GAFFER:小林 仁/ポスプロプロデューサー:大屋哲男/VFXプロデューサー:道木伸隆/DIプロデューサー・カラーグレーダー:齋藤精二
製作:映画「いぬやしき」製作委員会
制作プロダクション:シネバザール
配給:東宝
inuyashiki-movie.com