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『trialog vol.1「融解するゲーム・物語るモーション」』レポート

『trialog vol.1「融解するゲーム・物語るモーション」』レポート

Session 3
「What's inside "Motion"? 新しいモーションと未知なるエモーション」

最後を飾る第3セッションは、「What's inside "Motion"? 新しいモーションと未知なるエモーション」と題し、クック・イウォ氏(以下、クック氏)、塩田周三氏(以下、塩田氏)、若林氏の3名がステージに上がり、これからの新しいデジタルクリエイティブの行方を探った。
まずは、本セッションの登壇者を紹介しておこう。タイトルデザイナー/ディレクターとしてパリを拠点に活動しているクック氏は、2006年のホラー映画『サイレントヒル』のシークエンスをはじめ、モーションデザインを駆使した数多くの映画タイトルを手がけている。また、2015年にはMotion Plus Designを設立し、以降、世界中のモーションデザイナーを集めて紹介する新型カンファレンス「Motion Plus Design」を主催している。
塩田氏に関しては、もはやCGWORLDの読者に説明は不要だろうが、ポリゴン・ピクチュアズの代表である同氏がエグゼクティブプロデューサーを務めた『トランスフォーマー プライム』『Lost in Oz: Extended Adventure』では、それぞれデイタイム・エミー賞を受賞するなど、3DCCアニメをグローバルに牽引している。


塩田周三氏


クック・イウォ氏

さて、モーションデザイン(モーショングラフィックス)という言葉をどれくらいの人が知っているだろうか? クック氏はモーションデザインとはグラフィックデザインに命を吹き込むことだと述べる。
「シンプルにいうと、"動いているグラフィックス" なのですが、モーションデザインを定義付けるには "グラフィックデザインとは何か?" を考える必要があります。モーションデザインを言葉で説明するのはとても難しいですね」と話した。

塩田氏は、「私にとってグラフィックとはとても静的なものです。クック氏の作品は連続的な写真のようで、瞬間的に美しさを捉えつつ非常に多くの情報と質量を得ることができます。しかしいわゆるアニメのようになめらかなものではないので、アニメーションではないんですよね」と述べる。
では、モーションデザインは何を物語っているのだろうか。「グラフィックデザインはより抽象的な表現です。モーションデザインはグラフィックが動いているわけですが(アニメのように)キャラクターが動いているというわけではありません」と、クック氏。

モーションデザインにおいてアニメーションという言葉は、非常に曖昧なラインにある表現手法なのだという。また、出版業界出身の若林氏にとっては、モーションデザインや映像表現における文字の扱いに関心があるようだ。
「はたしてデザインという観点はあるのだろうか?私は元々出版の人間なので、文字を扱ったデザインに対してかなり厳しい世界で生きてきました。その立場から "文字がもつ情報をどれほど扱えるのか?" という点に興味があるし、私にとっては重要な部分です」(若林氏)。
モーションデザインの説明が複雑なのは、グラフィックデザイン・写真・アニメーション・映像・タイポグラフィといった、様々な視覚表現の手法を巧みに編み込んだ複雑な模様のタペストリーのようなものだからだ。




先述したとおり「Motion Plus Design」は、領域の垣根を超えたアーティストたちに出会いを提供する場である。では、アーティストたちは何を求めてそこに集まるのだろうか。
「生きるということは常に変わり続けるいうことです。人間は人とはちがうことにフォーカスしがちですが、肝心なのはお互いの共通点を見出し共通の言語で語り合えるか否かです」と塩田氏。
さらに若林氏は、「アニメやCG、ゲームと領域を越えると使われる言語もちがうはずです。Motion Plus Designは新たな言語を共有する場なのではないでしょうか?」とクック氏に投げかけた。

年齢にかかわらず様々なアーティストが集うMotion Plus Designには、神格化されたアーティストによるトークイベントも行われる。クック氏によると、イベントの参加者はこれら偉大なアーティストたちの経験や生き方、情熱など、彼らの口から紡ぎ出される言葉の中から "生きる上でのインスピレーション" を得ているという。
塩田氏は、「テクニックやハウツーはネットで調べればいくらでも見つかりますが、実際に会って話を聞くという経験には変えることができません。彼らは自らの人生で大事なものを選び出しそれを表現している。良い選択ができるアーティストが飛び抜けて出てくるし、それは自らの経験によるものなんです」と語り、人々の感情に真に訴えかける作品を作るために、人生を理解し世界の誰よりもエネルギーかけて伝えていかなければ、作品は偽物になってしまうと述べた。

そして最後に、「モーションデザインに関しても、エネルギーを与えるものをつくらなければなりません。人々が求めているのはポジティブなエネルギーなのでしょう」というクック氏の言葉によってセッションは締めくくられた。
本セッションは「What's inside "Motion"? 新しいモーションと未知なるエモーション」と題したように、表現者として、また、ひとりの人間として次なるモーション(動き=行動)と新たなエモーション(感情)に働きかけるセッションとなった。

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