<2>TVアニメ『キャプテン翼』を例としたCACANi実演
次に、デイヴィッドプロダクションのデジタル作画室長・宇治部正人氏、アニメーターの玉栄 翔氏が登壇し、実演を交えながらCACANiの制作現場での活用状況を紹介した。デイヴィッドプロダクションのCACANi導入は早く、2015年5月に初めて使用して以来、ノウハウを蓄積してきている。現在、CACANiチームとして10名のスタッフを置き、月産4~5,000枚を制作しているという。まずは、デイヴィッドプロダクションで制作しているTVアニメ『キャプテン翼』のCACANiでの制作風景の動画が上映された。
まずは原画のトレスから入る。作業には1枚あたり30分弱を要し、これは、入社1~2年目の動画スタッフと同じトレススピードだが、この段階では速さよりも後の作業を踏まえた仕込みの充実が優先される。仕込みの1つとして、サンライズのスタッフも触れていた、画面の外にある線の処理がある。ただ、枠外の見えない部分のトレスは、あまり正確にしっかり描き込む必要はなく、あくまで中割りに不都合が出ないようにするためのものだという。トレスは補助パネルに表示される矢印・番号を目安に、描き順に注意しながら行われる。ここで追加される線情報を基に自動中割りが生成されるのだ。
フラフラ歩くロベルト。見え隠れする部分が多い厄介なシーン ©高橋陽一/集英社・2018キャプテン翼製作委員会
キャラクターが振り向くシーンでは、原画に顔や身体の正面は描かれていないため、新たに補填しなければならない。CACANiはこの追加した線を見えない線として設定できる。この必要な線の追加は動画マンが担当するが、あくまで中割りのための補助線であり、極端な精度は求められず、問題はないとのこと。
また、CACANiの特徴として、線がベクターで描画される点があり、左目しか描かれていないキャラクターの原画からその左目をグループ化してコピー、反転させ、微調整しながら右目を作ってしまうことも可能だ。
原画では描かれていない隠れている右目をその場で作り出す ©高橋陽一/集英社・2018キャプテン翼製作委員会
最初のトレスの段階で必要と思われる線を用意しておくことで、中割りの生成が可能になるだけでなく、後々の補正作業も減らすことができる。ただ、シーンによっては、あえて大まかな中割りを作成して補正作業に重点を置いた方が良い場合もあるという。
続いて、例として四角い箱を描き、回転させるアニメーションの動画が提示された。これはCACANiの特徴である"描き順"を使ったもので、1枚目とまったく同じものを2枚目に描くいわゆる「同トレス」をつくる際、1枚目と2枚目で描き順をずらすことでCACANiが線を自動中割りして箱が回転して見えるというもの。手描き作業だとパースが崩れたり、形が歪んだりしてなかなか上手くいかず、ある程度の修練を要する。しかし、CACANiの作業要領を教えると、新人でもぱっと処理してしまうという。また、CACANiは中割りの動きに軌道線を設定し、動きにカーブを付けるといったことも可能とのこと。