キャラクターモデルのリダクションをHDAで実現
山部氏からは群衆シミュレーションに活用するためのキャラクターモデルを、HDAで作成する手順について解説が行われた。ベースとなるのは高解像度のキャラクターモデルで、質感設定、スキニング、アニメーションまで付けられた状態のものだ。これを他の情報はそのままに、メッシュだけリダクションすることが目的で、一般的なワークフローは下記となる。
1.各種FBXデータの読み込み/ジオメトリ統合(カスタムスクリプト)
2.ルックデヴ(ビルトインノード)
3.UVパック/不要なUVセットの削除(ビルトインノード)
4.テクスチャベイク(Game Development ToolSet)
5.ジオメトリのリダクション(ビルトインノード)
6.キャプチャ情報(ウェイト情報)の転送(カスタムノード+ビルトインノード)
7.データの微調整と再ベイク(ビルトインノード)
ここでビルトインノードと記されているのは、Houdiniに最初から備わっているノードのこと。UVパックではUV Layout SOP、リダクションではPolyReduce SOP、キャプチャ情報の転送ではAttribute Transfer SOPが、それぞれ使用されている。Game Development ToolSetはSideFXから提供されている追加のツールキットで、ここではその中からGame Baker ROPが使用された。つまりノードやスクリプトを一部生成するだけで、これだけの作業がHoudini上で自動化できるというわけだ。
実際、PolyReduce SOPはモデルのシルエットや印象を保ったままメッシュをリダクションしてくれる優れもので、こうしたノードが標準で使用できる恩恵は大きいという。またプロシージャルならではの強みとして、どのような状態からでも手順を巻き戻して、完成度を高められる点を挙げた。「一度ベイクした後でもリダクションの効き具合などを自由に調整可能です。Houdiniでは、パラメータ操作をするたびに全行程を自動的に再実行できます。他のDCCツールで同じことをする場合、スクリプトの実行とアンドゥを何度も求められるのではないでしょうか? このように作業効率の高いツールを作成できることもHoudini習得の大きな魅力のひとつです」(山部氏)。
結論:プログラマーはHoudiniを触るべき!
このように三者三様で語られたHoudiniのメリット。ここで司会の長舩氏は議論を巻き取り、「プログラム知識はHoudini習得をブーストする」とまとめた。これまで議論されてきたように、Houdiniで求められる論理的思考や、ノードベースでの機能拡張はプログラマーと相性が良い。特にHDAの活用はプログラムそのものだ。機械学習・深層学習の実装効率性も高く、プログラマーとアーティストの関係性強化にもつながる。
一方で長舩氏は学習コストがかかる点にも触れた。他のDCCツールと比べてロジカルなだけに、導入時につまずくと余計な工数や管理コストが発生してしまう。そのためにはHoudiniを使いこなし、初心者を導けるTDやTAの存在が重要になる。また学習時には1人ではなく、仲間を募って共に教え合いながら学ぶと良いという。
ただし、こうした問題もプログラマーが触ると一変する。鈴木氏は「Houdiniで学習コストがかかるとは思っていない」と補足。アーキテクチャの一貫性が高く、動作が堅牢で、ロジカルな点がプログラマー向きだとした。「Houdiniにおけるメッシュの加工とは、極論すればジオメトリの中でアトリビュートを操作しているだけ。それに対していろんな表現をするためのモジュールがあるだけで、それを覚えていくのは、本を読みながら語彙を増やしていくようなもの」(鈴木氏)。いわば、プログラマーが新しい言語を学習していくプロセスに近いというわけだ。
そのためHoudiniの学習時には無理をせず、「できる範囲からはじめて、徐々に広げていく」、「様々な既存の処理をHoudiniで置き換えていく発想で学習を進める」などのTipsを紹介。それでも困ったら、Houdiniコミュニティで質問すると良いとした。また、現行機で無理なことでも、次世代機では可能になるとして、Houdiniを学ぶことのメリットについて強調。これに対して岸川氏、山部氏も「今後ますます情報量が増加していくことは明らかで、人力での対応は困難」だと同意。Houdiniのプログラム的な力を大いに活用するべきだとした。
長舩氏が運営するHoudiniコミュニティ「Tokyo Houdini Meetup」の紹介
最後に長舩氏は「学習コストが高いとされるHoudiniだが、そうではないという意見があることがわかった」と整理。改めてプログラマーとHoudiniは相性が良いと結論づけた。その上でHoudiniコミュニティにプログラマーが加われば、より活性化していくことはまちがいない」と指摘。一緒にHoudiniを盛り上げていきましょうと会場に呼びかけ、セッションを締めくくった。