ザコとボスも可能な範囲でボーン構造を共通化
エネミーはザコとボスがセットになっており、可能な範囲でボーン構造を共通にすることで、セットアップやモーション作業の効率化を図っている。なお本作のエネミー(ラスボスや一部のボスは除く)は、小寺駿介氏をはじめとするジェムドロップのアーティストがデザインしている。「モデリングもできるアーティストがデザインすることで、3Dの利点を活かしたデザインを提案できます。そういうチーム編成も効率化につながっていると思います」(増田氏)。
▲【左】画像内の左はザコ、右はボスのボーン構造。メッシュ構造はちがうが、ボーン構造は似ている/【右】ワイヤーフレームとカラーを表示した【左】のザコ
▲画像内の左は別のザコ、右は別のボスのボーン構造
開発初期に全通路をつくり、企画とアーティストが肉付け
企画によるゲームデザインとアーティストによるステージ制作を無理なく並行できるようになったことは、Unityがもたらした大きなメリットだと北尾雄一郎氏は解説する。「先行して制作された通路アセットで最初から最後までの全通路をつくり、コリジョンを自動生成します。その通路を企画とアーティストが並行して肉付けしていくことで、双方の待機時間をなくしています」(北尾氏)。
さらにステージのデザインと3D化を同じアーティストが担当することで、効率化を図っているとステージモデリングリードの渡邉佳代子氏は補足する。「世界観の指針となる最初のコンセプトアートは増田が描きましたが、それ以降は、自然物が多いステージは私、人工物が多いステージは本田美慈が、なるべく一貫して担当しています。『ここは共通アセットを使おう』『ここは別ステージのアセットを再利用しよう』というように、デザイン段階から3D化するときの工数や表示負荷を計算しています」(渡邉氏)。
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渡邉佳代子
ステージモデリングリード。『CRYSTAR -クライスタ-』では、ステージや零の部屋のデザインとモデリングを担当。パッケージや広告のグラフィックデザイナーを経て、2015年にジェムドロップへ入社。
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本田美慈
アーティスト。『CRYSTAR -クライスタ-』ではステージ用のパーツ設計、ステージのデザインとモデリングを担当。女子美術大学を卒業後、ほかでのアルバイト期間を経て2016年にジェムドロップへ入社。
そうやって表示負荷を考慮してつくったはずのステージでも、開発が進む中で表示されるエネミーやエフェクトの数が増えると60fpsのレンダリングができず、何度もデータを見直したと増田氏はふり返る。
▲増田氏が開発初期に描いた辺獄のコンセプトアート。辺獄は死者たちの魂が行き着く世界で、最深部へ向かう過程で徐々に記憶が消去される。「巨大な剣は記憶を消去するシステム、モザイク状の通路や建物は劣化した記憶の象徴としてデザインしました」(増田氏)。モザイクは本作を代表するモチーフとなり、エフェクトにもモザイク状のパーティクルが取り入れられた
▲前述のコンセプトアートを基に本田氏がパーツ設計、ステージアーティスト全員でモデリング、増田氏がレイアウトして制作した辺獄
▲辺獄の共通アセット
▲プレイヤーキャラクターが歩くモザイク状の通路。辺獄は8ステージあり、それぞれが異なる世界観をもっているが、通路・空中に浮かぶ剣・通路脇の柵などは前述の共通アセットが使われている。「ステージごとに用意すると制作時間もデータ量も膨らむので、どれだけのアセットがあれば共通化できるか、開発初期に検討しました。モデルは共通ですが、マテリアルを変えることで変化をつけています」(本田氏)
©FURYU Corporation.