器用貧乏なゼネラリストにならないよう『自分の柱』を決めてもらう
渡邉氏や本田氏に限らず、同社のアーティストは、複数工程に対応できるゼネラリスト寄りの人が多い。例えば須田正広氏は、本作の守護者や人型エネミーなどをモデリングする一方で、UIデザインも担当した。
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須田正広
アーティスト。『CRYSTAR -クライスタ-』では777の異形のエピクロスや、そのほかの守護者、犬のセレマ、人型エネミーなどのモデリングに加え、UIデザインも担当。日本工学院八王子専門学校のキャラクターデザインコースを卒業後、2016年にジェムドロップへ入社。
「ゼネラリストで編成されたチームの方が、少人数での開発には適しています。加えて、デザインをする人がモデリングやモーションのことも知っていれば、理に適ったデザインができます。逆もまた然りです。ただし器用貧乏にならないよう、必ず『自分の柱となる職種』を決めてもらうようにしています」(北尾氏)。スタジオ運営に対する明確な哲学をもち、本作の開発でもそれを実践した同社。次にどんなゲームを披露するのか、今から楽しみだ。
専用ツールや共通アセットを活用し、作業を効率化
▲アセットの配置・整列、親子関係の編集、マテリアルカラーの変更などの作業を補助するツールを増田氏が制作し、単純作業の効率化も図られた。例えば上図の建物の配置では、上図右のツールの赤枠内のボタンを押すと、1階建・2階建・3階建の置換や、別の形状の建物への置換が即時に行われる。「Unityの標準機能を使うと、アセットリストからひとつずつ選択する必要があるので、ツールによって作業を効率化しました」(増田氏)
▲【左】のステージに浮かぶ大量の動く歯車は、12種類の歯車グループ【右】のインスタンスをUnityのプレハブを用いて生成し、それらを組み合わせることで表現している。さらに、大きな歯車はゆっくり、小さな歯車は速く動かすことで変化をつけている。「歯車を1個1個配置すると手間がかかるし、膨大なオブジェクト数になり表示負荷も高くなるため、効率良く軽いデータをつくれる方法を考えました」(渡邉氏)
▲左上画像のステージの壁と柱、右上画像のステージの壁と柱は、マテリアルカラーを変更し、下画像のステージでも再利用されている
「絵になる窓辺」の検証と制作
▲渡邉氏が描いた零の部屋のデザイン画。開発初期から「窓辺で泣く少女」というビジュアルコンセプトが提示されていたため、10パターン近くの3Dの間取り案が つくられ、「絵になる窓辺」が検証された
▲同じくデザイン画。「本好き」「シンボルはユニコーン」という零の設定を踏まえ、数多くの本や、ユニコーンのぬいぐるみ、時計などがデザインされている
▲前述のデザイン画を基に渡邉氏が制作した零の部屋。先の綿密な検証が功を奏し、モデリング後の修正はほとんど必要なかったという
▲ビジュアルコンセプトに沿って表現された窓辺で泣く零
「ゴシック」「涙」などのコンセプトを反映したUI
▲【左】「ゴシック」「闇の中で輝く光」といった本作のコンセプトを踏まえ、黒を基調としたUIがデザインされた。フォントは、フォントワークスのマティスが使われている/【右】「泣いて強くなる」というコンセプトを反映し、画面左下には涙を溜める「涙ゲージ」がデザインされている
▲【左】エネミーを倒したときに現れる断末魔(文字)には、変形させたマティスが使われている。変形具合、表示時間などをアーティストが直感的に調整できるパラメータ【右】も本作用に制作された
©FURYU Corporation.
info.
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『CRYSTAR -クライスタ-』
発売:フリュー
開発:ジェムドロップ
発売日:2018年10月18日
価格:7,980円(税抜)
プラットフォーム:PS4
ジャンル:アクションRPG
www.cs.furyu.jp/crystar/