「不動産の知見×デジタル技術」による工夫された制作
営業・制作・開発まで、社内で完結する制作体制
ROOVの制作・開発体制は、制作、制作効率化、開発に大きく分けられる。制作チームの編成は設計チームとモデリングチームに分かれ、設計チームが本プロジェクトのために新たに開発したADT(add detail tool)でCAD図面から基本モデルを作成し、モデリングチームが基本モデルに細かいパーツを追加したり、マテリアルを割り当てたりする。制作進行のスタッフも含めて15~16人の体制だ。作業効率化チームは外部のGUNCY'Sが協力し、効率化のためのツールを開発している。開発チームはStyler3D、ユーザーに見えるフロントエンド、社内の制作スタッフが触る部分のバックエンドを開発し、そのほか、R&Dで写真から自動にモデリングしていくシステムなどを開発中だという。グループマネージャーの中村幸弘氏は「営業や設計、モデリングに開発と、受注から納品まで全て一括で社内に抱えているのが強みです。デベロッパーから依頼されて3営業日程度で納品できます」と強みを語る。
2018年春頃にGUNCY'Sが参加し、体制は大きく変わったという。「私たちが関わったときに、まずやらなくてはいけないと思ったのは、役割分担の交通整理です」と野澤氏はふり返る。例えばCGモデラーが複雑な設計図面を見てモデリングをしていたため多くの時間がかかっていたが、図面を読むことが得意なCADオペレーターがADTでモデリングに必要な情報を入力することで、CGモデラーの負担が減り、作業時間が短くなったという。スタッフが適材適所で得意な作業をするように交通整理をした結果の一例だ。交通整理のコツは、DCCツールのように何でもできるものを使うのではなく、ADTのような適切なツールで作業範囲を限定することだという。
制作・開発体制
モデリングの作業風景
- 右の画面で設計図面を、左の画面でモデリングの簡易ビューアを開き、図面と3Dモデルを確認しながら作業している。キーボードの前にもメモ書きが入った図面が、さらに計算機が置かれているのは、不動産業界ならではだろう
効率化が進む制作フロー
従来と制作フローが大きく変わったのは、ADTを起点としたオートモデリングとマテリアルのオートアサインが加わった点で、これにより効率化が進んだ。これらは単純に自動化ツールを足しただけの効果ではなく、先述の通り、図面が読めるCADオペレーターとモデリングが早いCGモデラーの、それぞれ得意なところを活かす役割分担を見直した結果だという。従来はCADオペレーターが壁・床・天井・窓などの基本的な形状をつくり、CGモデラーへDCCソフトを通して渡していたが、CADで作図した三次元DXFデータはそのままDCCソフトでは使えないので、細かい修正が必要だった。その後、CGモデラーがシンクの位置や扉の枚数、ドアノブなどの細かいアセットを作成する。設計の図面はとても複雑で、専門のCADオペレーターではないと読みとるのが難しく、CGモデラーがアセットを仕上げるのに多くの時間がかかっていた。しかしADTを用いてCADオペレーターが簡易アセットのモデリングまでを担当することになり、複雑な設計図をCGモデラーが読みとることはなくなったという。また、1物件で100以上におよぶ複雑なマテリアルも、ADTでアセットのモデリング時に指定しておくことで、1,000種類以上の建築用マテリアルデータベースからマテリアルが自動的に割り当てられ、CGモデラーが慣れない仕上げ表を見てマテリアルの割り当てに悪戦苦闘することもなくなった。これらにより、従来は80㎡のマンションで60~80時間ほどかかっていた制作時間を、20~25時間まで短縮している。2019年中には10時間程度まで短縮し、さらにAIを使った自動モデリングも開発していく予定とのこと。
制作フロー