>   >  『SEKIRO : SHADOWS DIE TWICE』の世界観を支えるフロム・ソフトウェア流の背景制作環境〜GCC '19レポート(1)
『SEKIRO : SHADOWS DIE TWICE』の世界観を支えるフロム・ソフトウェア流の背景制作環境〜GCC '19レポート(1)

『SEKIRO : SHADOWS DIE TWICE』の世界観を支えるフロム・ソフトウェア流の背景制作環境〜GCC '19レポート(1)

<3>背景レイアウトの効率化

最後に、前田氏より背景レイアウトの効率化について語られた。背景レイアウトに関しては大きく分けて
・DCCツールでの手動配置
・ゲームエンジン上での手動配置
・自動配置による補助

という3点の取り組みがされたという。

前田耕蔵氏(株式会社フロム・ソフトウェア3Dグラフィックセクション サブリーダー)

フロム・ソフトウェアのレベルデザインには、非常に大きな高低差が存在、かつプレイヤーは複数のルートを選択可能という大きな特徴がある。つまり、状況や場所によって周囲の見え方やメモリの状況が大きく異なってくるというわけだ。

フロム・ソフトウェアにおけるレベルデザインの特徴

これらのレベルデザインを活かした背景制作は、単独のエリアを作成するだけでも非常に難易度が高いが、それらのレベルがさらに複雑につながりシームレスに行き来が可能なことで作成難度に拍車がかかっているという。

レベル同士が複雑に接続される様子

そこでフロム・ソフトウェアでは、まずDCCツール上での手動配置によって制作効率化を図った。専用のレイアウトエディタを開発するのではなく、アーティストと親和性の高い3ds Maxを利用することで、元々3ds Maxに存在する様々な機能をレイアウトに活かすことができる上に、スクリプトによる効率化や機能拡張も容易だ。また、強力な通信機能が実装されており、全ての編集内容はリアルタイムでゲームエンジンに反映され、3ds Maxの習得をするだけでアーティストはすぐにレイアウト作業を行うことができる。

3ds Maxをレイアウトエディタに利用する様子

また、3ds Maxによってベースのレイアウトが行われた後、ゲームエンジンでのイテレーションを加速するために、ゲームエンジン上での手動配置機能もサポートしている。これによって3ds Maxに慣れていないアーティスト以外の人もレイアウト作業を行うことが可能になり、宝箱の配置などゲームに関わる部分のトライ&エラーが効率化できたとのことだ。

ゲームエンジン上での配置機能の拡張

さらにこれまでの機能は主に手動配置が前提となっているが、手動で配置するほどではない重要性が低いものに関しては自動配置も行われている。自動配置は主に草や小石などで利用されており、3ds Max内でペイントされた頂点カラーに応じて配置が行われ、パラメータによって密度や角度などを調整することができる。これらは配置後のアセット差し替えなども可能になっており、ゲームのレベルデザインにおいて重要性の低いものの配置を自動化することによって、本来こだわるべき部分により大きな時間を割くことができるようになったという。

草や小石などの自動配置

自動配置システム上で塗り分けられている様子(左)、塗り分けによって自動配置される木々(右)

最後に、藤巻氏、前田氏の2人はこう締めくくった。「私たちは決して大きなチームではないが、それでもグラフィックスの量と質を安定して提供できるようにする必要があります。今回の講演が少しでも皆さまのお役に立てていたら幸いです」。本講演は2人の意図通り、AAAクラスの開発規模ではなくとも地道な効率化でクオリティを引き上げることができるという大きな道標となったのではないだろうか。

  • GAME CREATORS CONFERENCE '19
    日時:2019年3月30日(土)
    場所:大阪府立国際会議場(グランキューブ大阪)
    www.gc-conf.com

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