<2>細部まで丁寧に演出されたアクションがバトルフィールドで全開
アニメーションがカギを握るアクションゲームとしての気持ち良さ
通信対戦を主眼に置いたマルチプレイヤーゲームということで、『リンクスリングス』のわりきりはかなり大胆だ。特にアニメーションやエフェクトといった要素には、その様が見て取れる。選択と集中を合理的に行なった結果として、アートのクオリティとパフォーマンスのバランス、人的リソースといった各種リソースの適切な配分の実現につながった。
このあたりの施策は一見、ごく普通の取り組みに見えるかもしれないが、他の評価の高いゲーム同様、当たり前のことを当たり前のレベルで実現させるのは意外と難しい。定められた制約の範囲内で、より良いものを目指すには、ゴールに対する理解と作品に対する愛情が不可欠だ。キャラクターアニメーションのキーポーズや、UnityのShuriken環境でのエフェクト表現の工夫からは、"良作の条件"が満たされていることがわかる。
開発チームの運営面ではマネジメント、ディレクション、ゲームデザイナー、プログラマー、アーティストの全てが協調路線で風通しも良く、終始円滑なコミュニケーションと意思決定の伝達が行われていたという。取材時の和やかな雰囲気からもそれは感じ取ることができた。バランスの取れたチーム状況は、作品の出来映えに影響する。プログラマー側から提示されたレギュレーションを遵守しながらも、アーティストの発案で導入されたキャラクターの身長差や、アクションの機微といった部分が、本作トータルの印象を好感のもてるものに昇華させている。
共通のスケルトンでアニメーション作業を効率化
インターミッションにおけるディテールアップの一環として、前述のフェイシャルアニメーションに加えて、キャラクターごとの身長差【画像】が設けられている。バトルフィールドでの疾走状態では歩幅や脚繰りスピードが全てのキャラクターで共通であるため、体格が異なるとモーションの見え方に違和感が出てしまうが、インターミッションではその影響はほとんどない
戦場での有利不利は排除する一方、あくまで個性の演出として導入された。身長差はあるものの、スケルトンの基本構造【画像】は全てのキャラクター共通で、アニメーションを共有したり、基本となるアニメーションから差を付けていくことで、モーション制作の作業量を低減している
また、実際のモーション制作では作業を容易にするために、リグの作成にとどまらず、オリジナルのプラグイン【画像】を開発して、IK/FKの切り替え、コントローラの表示ON/OFF、コントローラのピッカーといったMayaのUI拡張や、よく使用する基本ポーズの保存と呼び出し、本作用に拡張されたFBXの入出力といった便利機能を追加している
小気味良い爽快感を演出する攻撃アニメーション
バトル中の一連の攻撃アニメーションの一例。デフォルメキャラクターのアニメーションといっても決して単純なものではなく、かなり長尺に多くの要素を詰め込んでいるのがわかる。キャラクターの愛らしさを確保しながらも、プレイヤーに爽快感を感じさせるアクションに仕上げられた
対戦の緊迫感をおおいに盛り上げる戦闘エフェクト
バトル中のスキルエフェクトはごく限られたテクスチャアートリソースで制作されている。これはリソースの節約という意味もあるが、どちらかというとテイストの統一感を重視しているという。エフェクトの基本は共通のテクスチャをマップしたビルボードによるパーティクルアニメーションで、Unity標準のエフェクトシステムとその制作環境Shurikenを駆使して制作されている
完成した戦闘スキル「ガイアインパクト」エフェクト発動画面
エフェクト制作中のUnityエディタ画面
エフェクト用テクスチャ素材
ほかにもスペシャルスキルではモデル素材【画像】も組み合わせて、エフェクトをさらに豪華に見せている