>   >  近未来のバーチャル世界が舞台の陣取りアクションわいわい陣取りアクションゲーム『リンクスリングス』
近未来のバーチャル世界が舞台の陣取りアクション<br />わいわい陣取りアクションゲーム『リンクスリングス』

近未来のバーチャル世界が舞台の陣取りアクション
わいわい陣取りアクションゲーム『リンクスリングス』

<3>陣取りゲームの興奮を左右するバトルフィールドのビジュアル表現

ゲームロジックと連動したバトルフィールドの視覚変化

本作独自の表現であり、隠れた見せ場とも言うべきものが、フィールド上の陣取り表現だ。本作のフィールドはグリッド状に分割してタイリングした状態のものを、1ライン置きに1セルの半分の長さだけシフトさせた状態のアトリビュートマップで管理している。画面解像度が低いコンソール機用のウォーシミュレーションゲームでヘックスの代わりに活用されていた表現をイメージするとわかりやすいだろう。

このグリッド管理単位はダイナミクス、スタティックを問わず、フィールド上のオブジェクトの状態管理の単位であると共に、本作のユニークな要素である「陣取り」の支配状態の管理単位でもあり、さらにフィールドに従属する様々な事象の判定にも使用されている。これは独自のUnityエディタ拡張のマップエディタで視覚的に表現されており、本作のフィールド管理を参考にするのに役立てられている。

陣地の支配状態管理では遮蔽状態を意味するステンシル値を、この管理単位のそれぞれのセルごとに保持しておき、キャラクターが通過するとステンシル値を書き換えると共に、その値に従ってフィールドプレーンをスイッチして表示表現を変化させている。また、二次元空間が閉じているかどうかの判定も、座標系を用いたものよりはるかに単純化されているため、「コネクトリンク」の成功判定と、その結果としての陣地の塗り替えにも同様に活用されている。

合理的な工程を経て制作されるバトルフィールド

本作のバトルフィールド【画像】はレベルデザイン先行だ。まずレベルデザイナーが、ゲームプレイがより白熱したものになるよう、テスト用のフィールドを制作して実際にテストプレイし、妥当性を検証する。形状が固まった段階でアートディレクターがビジュアルの方向性を決定するラフを描き、それに基づいてイラストチームで詳細なイメージボードを制作する

最後に背景モデラーがテレイン部分をフィールドごとにモデリングして、コリジョンに影響を与えないアセットを配置すると共に【上】、Unityエディタを拡張した独自のマップエディタを使って存在と高低、衝突といったアトリビュートを管理しているオブジェクトを配置している【下】

ホログラム世界の空気感を演出するフォグとパーティクル

本作ではパフォーマンスを優先しているため、動的ライティングだけでなく、プリコンピュートしたライトマップを活用したライティングも施されていない。テクスチャリソース上限の制約から同一テクスチャを複数箇所で使用しているため、アーティスティックに描き込むことも難しい状況だ。そこで、どうしても弱くなってしまう立体感を強調するために、フォグとシェーダエフェクトによって、大気による光線の拡散、屈折をアーティスティックに摸した色彩遠近技法が表現されている。下の画像群はフィールド遠近感の強化の例



  • エフェクトが全て無効の状態



  • シェーダエフェクトのみ



  • フォグのみ



  • シェーダ、フォグともに有効

このほか、パーティクルエフェクトの配置やそのアトリビュート設定はUnityエディタ上で行われている

パーティクルエフェクトが効果的に使われているカリフラ森林のフィールド

試行錯誤がくり返された本作独自の陣取り表現

プレイヤーが獲得したエリアの塗りつぶし表現はプログラム側で動的に制御されている。幾度も試行錯誤がくり返された「陣取り」表現は、自チーム、相手チーム、未踏破それぞれのプレーンをもつフィールド平面を管理するステンシル値を参照して、視覚的な表現を切り替えている。ただ、それだけではエッジ部分のスパイクしたトライアングルが美しくないため、曲面的な美しさをもたせるように、エッジ部分のさらに外側に割りの細かいポリゴンを生成、配置して、最終的なエッジ部分に丸みをもたせている

また、動的に生成したエッジ部分にはエリアの塗り分けを強調するエフェクトを追加し【左】、さらにエッジに沿って鉛直方向にもポリゴンを生成して、エッジウォールにもエフェクトを流している【右】。両者ともにアーティスティックな表現ではなく、専用のシェーダによる表現だ



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