■エフェクト表現の試行錯誤
制作当初、リアルさを追求して空気や重力のないことを考慮したエフェクトが開発された
▲エフェクト「バリア処理」の初期コンセプト
▲エフェクト「沈む艦船」の初期コンセプト
▲エフェクト「徹甲弾による破壊」の初期コンセプト。宇宙空間で大きな爆発は起きないのではないか、という想定からつくられた。内側から穴が開き、空気が外に放出されることで火を吹く。煙も発生しない。しかし、実際のカットではこうしたコンセプトから修正されたエフェクトが使用された。「リアルを追い求めた結果、映像として地味になってしまいました。"リアリティは関係なく、カッコ良いもの"を目指したところ、監督陣も「これだ!」となりました」と田中氏。アニメっぽくなりすぎないようにバランスを取り、完成となった
■ビームの表現
本作で最も多く登場するエフェクトが「ビーム」は、効率的に制作されている
▲艦砲射撃のビームテスト
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ビーム発射用のアセット。戦艦ごとにアセットを用意し、Particle Flowでビームが発射されるようになっている -
そのベースのアセットをコピー&ペーストし、戦艦に割り当てることで、自動的にビームが発射される
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ビームは一括で生成されるため、戦艦に対して大量に配置することもできる -
爆発エフェクト。ビームが当たった際に起こる爆発等の反応は、自動生成されるしくみだ。中景は直撃した箇所を中心に爆発+誘爆、遠景は至近弾でビルボード爆発が発生する。ちなみに味方のビームには当たり判定が作用しないよう設定されているとのこと
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レイアウトや演出に合わせて、カットごとに戦艦の配置や修正を行う。全ての戦艦がビームを放つと、画面全体が覆い尽くされてしまうため、ビームを撃つ戦艦も選択する。このカットでは、艦首付近にビームが着弾するように調整された -
完成画
▲ビームの制作過程を動画にしたもの。映像で見るとよりわかりやすい
■流体金属の表現
防御機構として銀河帝国側の各戦艦に配備されている「流体金属」部。『銀河英雄伝説』に登場する戦艦の魅力的な設定のひとつだが、この表現もCGならではのものだ
▲各戦艦の流体金属表現の比較。ブリュンヒルトは白、戦艦・駆逐艦は青系、トリスタンやベイオウルフは青を起点に黒に寄せた色味になっている
▲流体金属の角度による見え方のちがい。流体金属は澄んだ水面がイメージされた。入射角が深くなれば透き通って見え、浅くなるにつれて流体自体の色味の反射で内部が見えなくなっていく
▼イゼルローン要塞も同じ流体金属を纏っている。特技監督を務めた竹内氏の作画参考を基に、流体金属にビームが当たった際に発生するエフェクトまでこだわって制作された
▲流体金属越しにビームを発射した際のエフェクト参考。竹内氏の作画参考から、CGへの移行テストとしてつくられた
▲流体金属越しのビーム発射エフェクトの完成画。主砲ビームの発射機構が流体金属の内部にあるタイプの戦艦については、ビームが流体金属の内部を通る際に、流体が蒸発して気泡が発生する。現状はCG処理ではないそうだが、今後寄りのカットが登場した場合、CGで作業する予定だという。どんな表現になるのか楽しみだ。なお、引きでの画では、外部に煙を発生させる処理を施している