2018年4月から放送が開始され、話題を呼んだTVアニメ『銀河英雄伝説 Die Neue These 邂逅』。密度の濃い骨太なストーリー展開もさることながら、映像のもつ圧倒的な力は、視聴者を虜にした。そうして好評の内に幕を下ろしたファーストシーズン『邂逅』から1年以上のときを経て、ついにセカンドシーズン『星乱』が映画館でイベント上映する。その上映を記念して、『邂逅』の舞台裏を前後篇に分けて紹介する。『銀河英雄伝説 Die Neue These(以下、銀河英雄伝説DNT)』の臨場感ある映像はいかにして生まれたのか。その秘密に迫るべく、CG制作の中枢を担ったメンバーに話を聞いた。迫力の映像に隠されたクリエイターたちの苦闘の歴史から、思わずこぼれた話まで、現場のリアルをお伝えする。前篇となる今回のテーマは「作品を支えた3DCG」。戦艦などのモデリングやエフェクト制作を中心とした座談会の開幕だ。
TEXT_野澤 慧 / Satoshi Nozawa
EDIT_斉藤美絵 / Mie Saito(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota
『銀河英雄伝説 Die Neue These 星乱』
原作:田中芳樹(東京創元社刊)、監督:多田俊介、シリーズ構成:高木 登、助監督:森山悠二郎、3D:I.G3D、3D監督:森本シグマ、制作:Production I.G、監修:らいとすたっふ、企画協力:ROOFTOP、制作協力:徳間書店、製作協力:DMM pictures、製作:松竹・Production I.G
©田中芳樹/松竹・Production I.G
『銀河英雄伝説 Die Neue These』アニメ化の舞台裏
左から、モニターグラフィックス・大城丈宗氏(I.G3D)、CGIプロデューサー・田中宏侍氏(I.G3D)、モニターグラフィックス・青木 隆氏(Over Ray Studio)、ルックデヴ&VFXアーティスト・荒幡和也氏(I.G3D)、3D監督・森本シグマ氏(I.G3D)、3Dアーティスト・住野仁美氏(I.G3D)、リードモデラー・茂呂成人氏(I.G3D)、3Dアーティスト・角谷優佳氏(I.G3D)、3DゼネラリストTD・高賀茂 寛人氏(I.G3D)
www.production-ig.co.jp/over-ray.jp
田中宏侍氏(以下、田中):ファーストシーズンの制作に入ったのは、2016年の5月中ですね。最初の話数は模索する部分もあるので、少し長めに制作期間をとっていますが、平均すると1話あたり2〜3ヶ月でつくらないといけませんでした。1話はおおよそ300カットくらいで構成されているんですが、多いときだと、そのうちの240カットくらいでCGが用いられています。
森本シグマ氏(以下、森本):とはいっても、毎話数で大規模戦闘があるわけではないので、12話のうち戦闘などCGが多い話数は3話くらいで、それ以外の話数ではポイントとして使われています。後は、3Dレイアウトを使っているシーンもあるので、そういうものも含めるとCGが使われたのは各話平均160カットくらいですね。
高賀茂寛人氏(以下、高賀茂):メインツールは、3ds Max 2016で、レンダリングにはPencil+ 4を使用しています。そこへmental rayで各素材を追加して、エフェクトでFumeFX、FROSTも使用しました。また、自社内ではレンダリングまわりでマテリアルの質感設定を補助するツールを作成しています。
荒幡和也氏(以下、荒幡):3DCGの素材はだいぶ量がありまして、そこを手で差し替えるとかなり時間がかかってしまうので、自動化するツールを開発していただきました。
森本:CGスタッフの布陣としては、ディレクターが1名、テクニカルディレクターが1名、モデラーが1名、CGアーティストが2名、VFXコンポジターが2名、モニターグラフィックスが2 ですね。ほかに、外部委託もしています。
田中:CGチームから最初に参加したのが森本さんで、2015年4月後半からプリプロ作業に入ってもらいました。どういう戦艦にするかも含めて、モデリングしながら試行錯誤してもらいましたね。
森本:当時はまだ設定も完全にできていなくて、ラフデザインのみで......。3Dモデルをつくりながら設定も補完していたので、模索する時間は長かったです。最後まで設定も並行して作業していたので、3Dモデルの完成と同時に設定画ができる不思議な進行でした(笑)。
荒幡:何度も更新されていましたね。
森本:同じ戦艦でも何バージョンも設定がありました。
田中:デザイナーさんも試行錯誤されていて「設定画を描いたけど、3Dモデルを起こしてみると想像とちがうなという感じで都度変わっていくので......。
森本:モデリングでは、I.G3Dは主に自由惑星同盟側を担当しています。銀河帝国側はサブリメイションの塚本倫基さんにリードモデラーとして立ってもらい、指揮していただきました。
荒幡:両陣営共に、ブラッシュアップしていくうち、お互いに張り合いはじめて(笑)。
田中:自由惑星同盟のデザインを観て、銀河帝国のデザイナーもさらにやる気を出して、それに自由惑星同盟のデザイナーさんもさらに乗ってくださって。どんどん変わっていくので、戦々恐々としながらモデリングチェックをしていましたね。
森本:終わったかなと思ったら「まだ途中だよね?」とコメントをいただいて、ドキッとしたこともありました(笑)。
茂呂成人氏(以下、茂呂):最長で1艦あたり4ヶ月かかっているものもあります。
田中:それがブリュンヒルトです。銀河帝国側のモデリングは曲線が多くて大変というのはもちろん、メカデザイン・特技監督の竹内敦志さんのこだわりがすごくて、大変な時間と労力を割いています。森本さんからの提案で、どちらの陣営ももっとも多く登場する標準的な戦艦から作業を進めて、それをリファレンスとして派生をつくっていきました。
森本:標準戦艦からつくるのは、落としどころを探る意味もありました。主人公機からやると、どうしても力が入りすぎて、オーバークオリティになりがちですから。
田中:他の会社にCGを委託した場合、デザイナーさんが途中でデザインを変えたくても、なかなか変えられないと思います。『銀河英雄伝説DNT』は内部(I.G3D)でモデリングをしたことにより、デザインの変更にも付き合えるメリットがありました。サブリメイションさんにも付き合っていただいて、説得力のある3Dモデルをつくれたことは良かったですね。
<左>銀河帝国標準戦艦の3Dモデル/<右>自由惑星同盟標準戦艦の3Dモデル。こうした標準戦艦を最初につくることで、他の戦艦をつくる際のリファレンスとなる
茂呂:本作の3Dモデルの数はかなり多いです。メインとなる戦艦は銀河帝国19艦、自由惑星同盟24艦、合わせて43艦の3Dモデルを作成しました。車両系は銀河帝国3機、自由惑星同盟16機、さらにモブが8機、3Dレイアウトは銀河帝国で4つ、自由惑星同盟で6つ、さらにイゼルローン要塞関係で3つといった感じです。クオリティを落とさずにこれだけの作業をこなさなくてはならなかったので、デザインテストの戦艦をつくり込んで、共通パーツをつくって、各戦艦に合わせて調整しつつ、流用していく方法を採りました。基本的には銀河帝国側でも自由惑星同盟側でも、同じテクノロジー・エンジン・パーツを使うようにしていたので、デザイン以外で両陣営のモデリング的な差はほとんどなかったですね。
田中:自由惑星同盟も銀河帝国も同じ人類が分かれているわけですから、資金力の差はあれど、同じテクノロジーやエンジンを基にできたので。
森本:流用できる分、共通パーツはつくり込んでいます。実は見えないところにまで、部品がぎっしり詰め込まれているんですよ。
青木 隆氏(以下、青木):特に同盟側の密度はすごいですね。
森本:背面とかブリッジの上にまで、ぎっしりパーツが入っています。
茂呂:壊れたバージョンのバリエーションもつくっています。第2話に登場する自由惑星同盟の戦艦の壊れモデルをつくり込み、それを基に壊れテクスチャを作成して、各艦に貼り付けました。爆発の後の飛び散る部品は200個くらいあります。これをアセット化して、好きに飛ばしてもらいました。
森本:『銀河英雄伝説DNT』は暗部を強調しているルックなので、戦艦が壊れて穴が空いているだけだと、黒く潰れて汚れているように見えてしまいます。攻撃を受けて中から焼けた感じとか、壊れた箇所のキワが溶けたことで光っている表現をするように、ライトをいっぱい仕込みました。これが、質感を表現する際(次頁参照)にも活躍しています。
壊れパーツを用いた爆発シーン
求められた巨大感とエフェクトの試行錯誤
森本:戦艦の話をすると、ディレクター陣からは巨大感を求められました。設定的には1kmもあるので、いかに巨大感を演出するかが重要です。「巨大感」とひと口に言っても、モデリングのつくり込み、ルック、戦艦の配置、レイアウト、戦艦自体のモーションのスピード感とか、カット制作にいたるまで全ての要素を考慮しなくてはならないのですが、具体的な要望はあまりなかったですね。
田中:「こうしてほしい」というのではなく、「自分たちはこう思うんだけど、君らはどういう答えを出す?」と投げかけられて、僕たちがそれに答える、というやり方でした。具体的なイメージを伝えてもらって、カラースクリプトやイメージボードを出してもらえると効率的ではあるのですが、当時はディレクター陣も手探りで明確なイメージをもっていない状態だったので......。
森本:フォトリアルにするか、ノンフォトリアルでいくのか、どうしようかとなったときに『銀河英雄伝説』は何か? というところに立ち返りました。『銀河英雄伝説』は、ラインハルト・フォン・ローエングラムとジークフリード・キルヒアイスやヤン・ウェンリーを取り巻く人たちの群像劇で、それを補助するのが艦隊戦です。艦隊戦の後にはキャラクターが映るため、CGから作画に切り替わって違和感が出ないかどうかが一番重要だったので、スタートはセル調の質感にしました。一番下にセル調の素材を置いて、金属質感の反射素材を何パターンかと、影の強調としてのオクルージョン素材、そしてルックで一番肝となる間接照明を足しています。間接照明は、それだけ見たら「夜景」に見えるというコンセプトでした。先にお話した、3Dモデルのつくり込みが必要だったのは、そういうことに起因しています。3Dモデルをつくり込んだから表現できた光によって、多田俊介監督から言われた「巨大感」を出すのに貢献できました。
荒幡:どこを強調してどこを抑えるか、アニメ独特の表現も採用しています。予備情報なしで映像を観るとフォトリアル寄りの画だと思われますが、セル素材がもっている要素を組み込まないと、作画のキャラクターと乖離して見えてしまうんです。
田中:一度試行錯誤の中で「巨大感=リアリティ」ということになりまして、エフェクトも現実的な描写にしてみたのですが......。
森本:地味でした。
荒幡:はい、地味でしたね。実際のテストムービーを見た監督陣の反応も芳しくなかったです。
森本:なので、実写ですら画づくりでは嘘をついて盛っているし......と、リアリティに囚われすぎずにカッコ良いものを優先してつくってみたところ、監督陣が「これだ!」と。
田中:リアリティではなく、答えは絵面の「カッコ良さ」でしたね。バランスを取って今の感じにまとまりました。
青木:CGは宇宙工学とか、考証とかを反映しやすいという錯覚が起きやすいけど、僕たちがつくっているのはアニメなので、現実に即しすぎると地味になってしまうことがわかりましたね。
森本:そういった概念の説明をされた上で、どう落とし込むかがこちらの役割だと再認識しました。ちなみに、エフェクトとして一番多く登場するのはビームです。
高賀茂:それぞれ戦艦の正面の砲台に三角形を配置して、そこからビームが発射されるようなアセットを組みました。標準的な3ds MaxのParticle Flowを使っているので、プラグインはほぼ使っていません。自由惑星同盟側を例に話すと、縦に並んだ砲門にアセットを配置していますが、発射されるビームと、ビームが被弾した際の爆発が、自動で生成されるしくみになっています。
森本:ある程度近くにビームが来ると、当たったものと判定されます。
高賀茂:最初に全艦斉射をやってみたらすごいことになっちゃって、実際のシーン制作では間引いています(笑)。
森本:1カットで艦隊が壊滅しちゃう画になっちゃいましたからね(笑)。
高賀茂:ビームの量も調整できますし、銀河帝国と味方でコリジョンの判定もしています。
森本:どっちが優勢で、どっちが劣勢かで、ビームの量も変えています。
高賀茂:ミサイルも基本的にはビームと同じですね。爆発もアセットをつくっていて、寄りの爆発でFumeFXを使用しました
荒幡:舞台は宇宙空間ということで、爆発していくと全方位に広がっていくし、宇宙空間では炎がフッと消えていくはずですけど、そこは嘘を付いて、地上で見えるような爆発を少し混ぜています。中で燃えている火も全部消さずに残しているんですが、それは光が残ることで、手前の戦艦が際立ってほしいというねらいがあります。また、本当は煙の尾を引くこともありませんけど、重力がわかるように表現として加えました。
森本:爆発はアニメ的なケレン味を求めてやっています。小さい爆発をいっぱいさせる表現も試しましたが地味でしたね......。エフェクトもいろいろ試行錯誤しています。
荒幡:試行錯誤したと言えば、流体金属でしょうか。
『星乱』より、ブリュンヒルトの場面カット
田中:銀河帝国側の戦艦を覆っていて防御として使われるけど、あまり見せる機会がなかったです......。デザイナーさん的にも見せたいのでは? と思ってつくったんですけど「ブリュンヒルトは白じゃないの?」という話になり、流体金属は見えなくなりました。
森本:質感を入れるときに、流体金属は見えなくていいと言われてしまったんですよね。
荒幡:それでもテストのたびに「見せませんか?」と提案していました。
森本:「これだけつくったのに見えなくていいんですか?」と話して、ギリギリ採用してもらいましたね。
荒幡:流体内からビームを打つこともわかっていたので、内部にある砲台が見えた方が演出的にも美味しいだろうと、カメラの角度が浅いと見えなくて、高くなると透明になるようにしています。
森本:この流体金属をはじめ、ほかにも細かくこだわってつくった部分がたくさんあるんですが、TVではわかりづらいんですよね......。大きいスクリーンで栄える画を目指してつくったので、ぜひ劇場で観ていただきたいですね!
ライター後記
本作は田中芳樹によるSF小説を原作にもち、初のアニメ化から30年のときを経て、改めてProduction I.Gが新作アニメーションとして制作した作品だ。現代アニメファンを満足させることはもちろん、原作や石黒 昇監督版アニメの熱狂的なファンまで、多くの人に受け容れられるものでなくてはならなかった。この状況の中、『銀河英雄伝説』史上初の3DCGの要素を入れることは不安も大きかったことだろう。しかし、こうしたクリエイターたちの苦悩の積み重ねが、新たな『銀河英雄伝説』のかたちをつくり上げた。9月27日(金)から始まる『銀河英雄伝説 Die Neue These 星乱』のイベント上映は必見である。なお『銀河英雄伝説DNT』の詳しいCGメイキングは書籍『アニメCGの現場2019』に収録しているので、こちらもチェックいただきたい。
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『アニメCGの現場 2019』
編者:CGWORLD編集部
定価:本体3,600円+税
発行・発売:株式会社ボーンデジタル
総ページ数:448ページ
ボーンデジタル
CGWORLD SHOP
ワークス オンラインブックストア
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ブリュンヒルト(銀河帝国)&ヒューベリオン(自由惑星同盟)
■ブリュンヒルト(銀河帝国)&ヒューベリオン(自由惑星同盟)
戦艦は、陣営ごとに別のデザイナーが立ち、それぞれの特徴が生まれるように意識されている。最終的に、銀河帝国側の戦艦は流線的、自由惑星同盟側は直線的という、対象的なデザインとなった。ワープドライブの機構は、銀河帝国側では上向き、自由惑星同盟側では下向きに、設置位置を統一している。こうして、両陣営の雰囲気をよく表す戦艦が完成した
▲銀河帝国艦「ブリュンヒルト」のデザイン画
▲自由惑星同盟艦「第一三艦隊 ヒューベリオン」のデザイン画。モデリングにあたっては、こうしたデザイン画だけが指標となった
▲ヒューベリオンの3Dモデル
■設定を活かして作成された壊れモデル
ダメージを受けた戦艦を表現するために、壊れモデルが作成された。もともと「何層にも重ねられた装甲」という設定(下の【外壁の設定】より)があり、ダメージ表現ではそこを活かすことに。モデリングで最大5層の装甲を作成し、ライティングで少し熱をもっているかのような効果を足して完成となる
▲外壁の設定画
▲壊れた装甲の3Dモデル。何層にも重ねられていることがわかる
▲壊れた戦艦の3Dモデル。これを基にダメージテクスチャが作成され、それを各戦艦に貼って対応している
▲アンビエントオクルージョン、ライン、ダメージライティングのみ載せた状態
▲壊れた戦艦を使用した実際のカット
▲CGによる戦艦のアニメーション
■重力ドライブの設定を活かしたワープ表現
▲橋本敬史氏が提案したワープ表現のアイデア
▲ワープドライブの位置設定。座談会の話の通り、ワープドライブの位置は両陣営で異なるが、どちらも3点を結んだ空間に地場を発生させてワープする
▼ワープの段階。絵コンテやラフ原画等はなく、担当した荒幡氏がワープの機構や演出、アングルまで考えていった
⑦空間には重力振が残るが、リングの方向へ向かって消滅していく
▲ワープシークエンスのコンセプトテスト
▲ワープシークエンスの力場テスト。「中心点に力場のようなブラックホールを発生させています。ただ、オブジェクト化して戦艦に追従させたところ、3Dモデルのシルエットを壊しすぎてしまったので、ボツ案となりました」(荒幡氏)
▲ワープシークエンスの完成画。実際の概念自体は採り入れつつ、エフェクト寄りに処理を施して仕上げた
[[SplitPage]]■エフェクト表現の試行錯誤
制作当初、リアルさを追求して空気や重力のないことを考慮したエフェクトが開発された
▲エフェクト「バリア処理」の初期コンセプト
▲エフェクト「沈む艦船」の初期コンセプト
▲エフェクト「徹甲弾による破壊」の初期コンセプト。宇宙空間で大きな爆発は起きないのではないか、という想定からつくられた。内側から穴が開き、空気が外に放出されることで火を吹く。煙も発生しない。しかし、実際のカットではこうしたコンセプトから修正されたエフェクトが使用された。「リアルを追い求めた結果、映像として地味になってしまいました。"リアリティは関係なく、カッコ良いもの"を目指したところ、監督陣も「これだ!」となりました」と田中氏。アニメっぽくなりすぎないようにバランスを取り、完成となった
■ビームの表現
本作で最も多く登場するエフェクトが「ビーム」は、効率的に制作されている
▲艦砲射撃のビームテスト
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ビーム発射用のアセット。戦艦ごとにアセットを用意し、Particle Flowでビームが発射されるようになっている -
そのベースのアセットをコピー&ペーストし、戦艦に割り当てることで、自動的にビームが発射される
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ビームは一括で生成されるため、戦艦に対して大量に配置することもできる -
爆発エフェクト。ビームが当たった際に起こる爆発等の反応は、自動生成されるしくみだ。中景は直撃した箇所を中心に爆発+誘爆、遠景は至近弾でビルボード爆発が発生する。ちなみに味方のビームには当たり判定が作用しないよう設定されているとのこと
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レイアウトや演出に合わせて、カットごとに戦艦の配置や修正を行う。全ての戦艦がビームを放つと、画面全体が覆い尽くされてしまうため、ビームを撃つ戦艦も選択する。このカットでは、艦首付近にビームが着弾するように調整された -
完成画
▲ビームの制作過程を動画にしたもの。映像で見るとよりわかりやすい
■流体金属の表現
防御機構として銀河帝国側の各戦艦に配備されている「流体金属」部。『銀河英雄伝説』に登場する戦艦の魅力的な設定のひとつだが、この表現もCGならではのものだ
▲各戦艦の流体金属表現の比較。ブリュンヒルトは白、戦艦・駆逐艦は青系、トリスタンやベイオウルフは青を起点に黒に寄せた色味になっている
▲流体金属の角度による見え方のちがい。流体金属は澄んだ水面がイメージされた。入射角が深くなれば透き通って見え、浅くなるにつれて流体自体の色味の反射で内部が見えなくなっていく
▼イゼルローン要塞も同じ流体金属を纏っている。特技監督を務めた竹内氏の作画参考を基に、流体金属にビームが当たった際に発生するエフェクトまでこだわって制作された
▲流体金属越しにビームを発射した際のエフェクト参考。竹内氏の作画参考から、CGへの移行テストとしてつくられた
▲流体金属越しのビーム発射エフェクトの完成画。主砲ビームの発射機構が流体金属の内部にあるタイプの戦艦については、ビームが流体金属の内部を通る際に、流体が蒸発して気泡が発生する。現状はCG処理ではないそうだが、今後寄りのカットが登場した場合、CGで作業する予定だという。どんな表現になるのか楽しみだ。なお、引きでの画では、外部に煙を発生させる処理を施している