リギング&アニメーション/キャラクターシミュレーション
本作では監督の強い意向で手付けのフルアニメーションが採用された。アニメーションSVの坂本知万氏は、動きのコンセプトを「基本は過去のTVの2Dアニメーションを踏襲しながら、以前はやりたくてもできなかったであろう表現をフルアニメーションで実現しています」と語ってくれた。本作はアニメーション・ファーストとも言える体制になっていて、中でもアニメーション全体の底上げを意識してスーパーバイズしたという。リグを担当したのは、プリプロに入る前からプロジェクトに参加しているリギングSVの赤木達也氏。「本作の肝はやはりキャラクターをどう表現するか。技術的なことよりも、どう動かしたらルパンに見えるかがずっと課題でした」ということだ。
左から、シミュレーションスーパーバイザー・貫薗健剛氏、リギングスーパーバイザー・赤木達也氏、アニメーションスーパーバイザー・坂本知万氏(以上、マーザ・アニメーションプラネット)
求められたのはリッチな手付けアニメーション
はじめはトゥーズ(2コマ打ち)やモーションキャプチャも検討されたそうだが、あまりアーティスティックに尖りすぎず、リッチさで一般層に届くようなフルアニメーションが選択された
ルパンの歩行シークエンス。このシークエンスのように、ちょっとガニ股気味に前かがみで歩く姿は、これだけでルパンというキャラクターを表している
もうひとりのアニメーションSV、ステファン・マンジン氏による8ページにおよぶキャラクター制作ガイド。どうしたらそのキャラクターらしく見えるのかが、画像主体で細かく書かれている。NGの例を見てみると、目と眉の関係だけでキャラクター性がまるで変わってしまうのがわかる
ルパンらしさがポーズや表情でしっかり表現された例。ニヤリと笑うルパンは監督にも好評だったという
豊かな表情を生み出したフェイシャルリグ
ルパンのフェイシャルリグ。ツールは長編映像制作での運用経験を得るためにmGearが採用された。リグの中でもアニメーターに好評だったのがMaya標準のSoftModデフォーマを自社カスタムした機能で、デフォーマの基点をメッシュの変形させたいところに置いて、そこから自由に変形させていくことができるツールだ。もともと輪郭のシルエットを調整するものだったそうだが、便利なため、頬に手をついたときの顔の肉の変形やのど仏を動かすときなど、様々な使いどころで多用されている
素の状態から、ルパンらしいニヤリとした口に変形させた状態
球の向きや眉の位置など、目元を調整した状態
顔のアウトラインを調整した完成形
限られた人数でのシミュレーション制作
本作ではアニメーションに重点が置かれたためシミュレーションは少人数で担当しているが、効率良く作業を行うことで上手く対応できたという。シミュレーションSVの貫園健剛氏はテストシークエンスからプロジェクトに参加し、「テストシークエンスができたおかげで、エラーを拾ってなくしつつ重要なショットに力を入れるというスタンスが構築できました」とふり返る。事前の準備が功を奏してキャラクターシミュレーションの大きなリテイクはなく、予算内で制作できたとのことだ
ヘアはnHairとYetiを使用。ショットワークの前に乱流で乱した髪のシミュレーションを用意して監督にチェックしてもらい、OKが出たものをアニメーション付けされたショットにながすフローを採っている
nHairによる五ェ門のヘアシミュレーション
Qualothによる五ェ門のクロスシミュレーション。QualothはnClothより処理が速く衝突判定に優れており、それが採用の決め手となった
同ショットのファイナル