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慣れ親しんだ2Dのアニメーション作品を違和感なく3DCG化! 映画『ルパン三世 THE FIRST』

慣れ親しんだ2Dのアニメーション作品を違和感なく3DCG化! 映画『ルパン三世 THE FIRST』

山崎 貴監督(白組)とトムス・エンタテインメント/マーザ・アニメーションプラネットによる、フル3DCGのルパン映画。カンファレンスではアニメーション中心に講演が行われたが、後日改めて取材を実施し、企画から3DCGに関わるフロー全体について詳しく聞いた。

※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 257(2020年1月号)からの転載となります。

TEXT_石井勇夫(ねぎぞうデザイン) / Isao Ishii(Negizo Design)
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota
EDIT_藤井紀明 / Noriaki Fujii(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada

  • 『ルパン三世 THE FIRST』
    12月6日(金)より全国ロードショー
    lupin-3rd-movie.com
    ©モンキー・パンチ/2019映画「ルパン三世」製作委員会

山崎監督とマーザのタッグでルパン三世のスタンダードを再定義

12月6日(金)より公開中の映画『ルパン三世 THE FIRST』は、シリーズ初のフル3DCGアニメーション作品だ。企画/制作はフル3DCGアニメーションに定評のあるマーザ・アニメーションプラネット(以下、マーザ)が担当し、監督にフル3DCGアニメーションや実写を問わず活躍するヒットメーカー山崎 貴氏を迎え、国民的ヒーローのルパン三世を3DCGで再定義する意欲作となっている。企画が起ち上がったのは5年ほど前。プロデューサーを務めた伊藤武志氏は「もともとは、グループIPの創出、および既存IP活性化施策の一環でした。認知度が非常に高いルパン三世ですが、作品によって様々なルパンがいます。今は"これがルパンだ"というど真ん中の王道を新たに生み出し、そしてつくり続けることに勝機があると思いました」と語る。まずは、トムスとマーザ内でストーリーを練り込んで4つのアイデアを出し、検討が重ねられた。その後、山崎監督の参加が決まり、そこからクリエイティブに拍車がかかったという。脚本は山崎監督によって全面的に書き直しがなされた。"ブレッソン・ダイアリー"という重要なエッセンスも新たに加えられ、最終的には12稿にも及んだ。

左から、レイアウトスーパーバイザー・木瀬孝晃氏、監督補/Co-Director・波田琢也氏、ストーリーアーティスト:木下宏幸氏、プロデューサー:伊藤武志氏、監督補/Co-Director・中嶌隆史氏、エディター・高橋友和氏(以上、マーザ・アニメーションプラネット)

どうしても予算が膨らんでしまうフル3DCG作品では、多くの人に受け容れられるメジャー志向の映画にすることが求められるが、山崎監督に依頼をしたのは、広い客層を視野に入れた映画(=ハイバジェット映画)を得意とし、3DCG制作プロセスに対して深い理解をもつ稀有な存在だったからだという。「どの監督にお願いするかのリストを作成したとき、一番上が山崎監督でした」と伊藤氏はふり返る。他社(白組)所属なので監督を引き受けてもらうまでには紆余曲折あったそうだが、結果はねらい通り、山崎監督でなければ本作は完成しなかったのではないかというくらい、マーザの制作スタイルやルパンという作品性とジャストフィット。スタジオの能力を十二分に発揮させてもらえたとのことだ。

ストーリーボードを軸にしたプリプロダクション

絵コンテを具体的にしていくストーリーボード

ストーリーボードは監督のラフな絵コンテを基に、マーザ社内で検討して描かれた。その際、キャラクターの心情やアイデアを盛り込み、プロダクションで出てくるだろう問題点が解決されている。ストーリーボードはストーリーテリング、ドローイング、構図などの多くの知識が必要とされる高度なスキルで、専門のチームがあるのは国内ではめずらしい。担当したのはストーリーアーティストの木下宏幸氏だ。「初回のストーリーボードづくりが楽しかったですね。監督の脚本と絵コンテだけなので制限がなくて。のびのびとやらせていただきました」と語ってくれた。監督補の中嶌隆史氏は「はじめは監督も任せるのが不安だったかと思いますが、木下のボードクオリティを見て信頼してくれたように思います。だから自由にやらせてくれたんじゃないでしょうか」と太鼓判を押す。しかし、後述のスクリーニングが重なるごとに大幅な描き直しを余儀なくされ、特に初回は6~7割も削除/変更を行うなど厳しい一面もあったようだ

ハリウッドスタイルのスクリーニング

日本では珍しいハリウッドスタイルのスクリーニング(試写)を採用しているのもマーザの特徴だが、本作においても3回行われた。スクリーニングは、ストーリーボードと並行し、声や音を入れたムービー(ストーリーリール)を作成して関係者や一般の方に見てもらい、感想や意見を制作に反映する機会として用いられる。大きくは、1~2回目がストーリー/演出のブラッシュアップ、そして2回目以降は予算やスケジュール調整の要素も加わってくる。本作の1回目のスクリーニング後の意見は辛辣なものが多く、まとめた書類は100ページにのぼり、監督やスタッフは心打ち砕かれるような悔しい思いをしたという。しかし多くの人が指摘するポイントは正しいことが多いというのが、マスへ向けて制作している山崎監督やマーザの基本姿勢で、取り入れた意見を慎重に精査しながら修正へ向けた取捨選択を行なった

マーザのスクリーニングルーム。監督チェックもこのルームを使い、大画面で確認するのが決まりだ

1回目のスクリーニング時のストーリーボード

同・3回目。キャラクター性の変更によって、演出も大きく変わっているのがわかる

アクションシーンは3Dのプリビズで

監督の要望でカーチェイスや飛行機のドッグファイトは3Dでプリビズが作成され、レイアウトSVの木瀬孝晃氏が担当した。「リズムやテンポも満足がいくものになりました。監督も、ここまで高精度なプリビズは初めてと喜んでくれました」と語る



  • プリビズ



  • ファイナル。ストーリーボードやプリビズをまとめてストーリーリール化したのが、マーザで唯一のエディターである高橋友和氏。いわゆるポストプロダクションのエディターとは異なり、監督と一番近くで各セクション全てのデータを集め、ハブとして映像をつくり上げていく大事なポジションだ。「コンテに尺が書かれたものではなく、エディターがボードを基にして決めていくのが、他のプロダクションとちがうところだと思います」と高橋氏

Media Composerでエディット中の画面。本作はプレスコであるため、映像だけでなくボイスを含めた音声込みで組まれているのがわかる

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