<2>ライブアニメーションの調整
アニメーションはバーチャルライブのデータを使用したことで、リップシンクもされており、揺れものを含めた全要素が入っていたため、膨大なポイントキャッシュされたAlembicデータとマテリアルがアサインされた本番モデルがかなり重くなる問題が出てきた。試行錯誤の結果、転送速度がネックになっていると判明し、極力レイアウト時に必要のない要素を排除したレイアウト用モデルで作業して、カメラワークなどを付けながら精度を上げていき、レンダリング時に本番モデルと差し替えることで対応したという。また、基のデータは60フレームだったため、アニメ用に24フレームに変換している。
一方で、ウエイトを当てたボーンのアニメーションをもってくるわけではないので、表情や目線を変えるちょっとした修正も困難となった。そこで、演出とデジタル作画室室長の宇治部正人氏が二値化したのっぺらぼうのCG素材にデジタル作画で顔を描いて対応するフェイシャルカットを選定。CGの質感はグラデーションが入っているが、影響が少ない顔だけ作画し、作画の線にCGのラインを合わせるなどの工夫もされている。デジタル作画で使用したCACANiは自動中割機能があり、フルコマ作業も容易なため、作画もフルコマ対応することができた。素材はCGも作画も同じつくりにし、最終的に撮影処理で馴染ませていく。
ライブシーンをつくるながれ
ライブシーンのカット制作のながれは次の通り。まず、バーチャルライブの収録モーションを参考に絵コンテを描く→ビデオコンテでカメラワークを付け、CGと作画の振り分けを行う→その後、カメラワークを決定。アニメーションデータはいじれないため、演出でいかに上手く魅せるかがコツとなる→最後にエフェクトなども加えてコンポジットし、撮影処理を加えて完成だ。画像はカット制作時のフローで発生する作業の一部
収録モーション。この映像を見ながら絵コンテを描く
ビデオコンテ。手前に収録モーションも合わせて、実際の動きも確認する
レイアウト。カメラやキャラクターの位置を調整して決める
完成映像
キャラクターの配置調整とカメラワーク
バーチャルライブ用のデータは、会場である正面から捉えたカメラを想定しているため、見えない部分の揺れものがついていないことがある。そのような場合、その部分が映らないようにカメラワークが工夫された。Alembicを使用しているため、動きや表情は変えられないが、キャラクターの位置は移動することができるのだ。また、アイドル作品として、キャラクターを魅力的にみせることは必須である。顔が良く見える角度のカメラワークなども考慮された。このカットでは、通常時は正面で収録されているキャラクターのROOT_ALLを移動させてフォーメーションを組み、カメラワークを付けて変化をもたせている
絵コンテ+収録モーションのビデオコンテ
レイアウト
アニメーション完成
完成映像
キャラクターの配置を調整した3ds Maxの作業画面
デジタル作画(CACANi)を用いたフェイシャルカット①
キャラクターがアップのカットなど、二値化したCG素材に、CACANiで描いた作画素材を合成するフェイシャルカットの例を紹介する
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作画素材の上に被せるためのCG素材。顔の上になる合成素材を別出力したものだ
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デジタル作画で顔のみ描いた場合、輪郭がCG素材と合わなくなることがある。【CACANiで描いた作画素材】では、耳の後ろ等を髪色で塗りつぶすことでCG素材との輪郭のずれを作画側で解消した。このカットでは、首下の落ち影も当初は作画で描いていたが、朔間 零は髪の毛が首にかかる髪型のため、首下の肌色と首に落ちている影の隙間はAfter Effectsのマスクワークで馴染ませている
デジタル作画(CACANi)を用いたフェイシャルカット②
CG素材が作画素材の外にはみ出してしまった場合の輪郭の処理例。基本的に、CG素材がはみ出してしまう部分は作画で描き、仕上げまで行なっているが、マスクまで描いてAEで合成することもある
PICK UP モニタワーク
ライブ中のモニタワークは、デザイン会社WWWが作成したモニタ用素材(版元チェックが通っているもの)を、CGアーティストの渥美直紀氏が楽曲の曲調に合わせてアレンジし、ディスプレイに表示する等している
イメージボードをベースとした作例
第二話『Melody in the Dark』では、イメージボードをベースに渥美氏がモニタワークをイチから作成した。WWWによる素材は使用していない。楽曲によっては演出から指示がある場合もあり、適宜対応しているとのこと
第四話『Rebellion Star』では、WWWが作成した3つの素材を曲調に合わせて編集し、おおまかにイントロ、Aメロ、Bメロ、サビの順で素材を活かした構成にしてモニタワークを演出した。
WWW作成のモニタ素材
渥美氏が制作したモニタワーク
完成画
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