<2>バリエーションとクオリティの両立
Substance Painterを使った作画アニメライクなモデリング
モデリングでは3ds Maxをベースに、Substance Painterを使用して独特なディテールのあるタッチを描いている。撮影工程でも複雑なコンポジットワークは行わないことになっていたため、ハイライトや影、タッチ表現に関してはUV展開してベイクしたテクスチャとして描いている部分が多い。Substance Painterで描き込んでレンダリングしたテスト画像に対して、キャラクターデザインを手がけた岸 友洋氏に修正を入れてもらい、そのまま3DCG上にフィードバックする方法だ。「今回初めてSubstance Painterをテクスチャ作成のメインツールにしました。本作はキャラクターの衣装替えが多く、カイマンだけで26種程度。さらにダメージ変化のパターンも用意する必要がありました。3Dモデルに直接描き込むことで作業効率は向上し、作品の独特で魅力的な描写を再現する助けになりました。使い勝手も良かったです」。そう話すのは、モデリングを担当した池田 昴氏。数ショットしか登場しない衣装でも、その都度スキニングの調整やセットアップが必要だったという。基本構造としては、Bipedに補助ボーンとスキニング用のメッシュを間に噛ませてコントローラを追加したセットアップだが、モデルやマテリアルの差し替えに関しては独自にツールを開発し、アニメーションごとに移植できるようワークフローを組んでいる。同社にとって、3DCGを使ったキャラクターアニメーションの制作は初挑戦ということもあり、比較的安全に運用できる仕様が採用されている。また、3DCGキャラクターが使用するプロップは当然3DCGで作成することとなるわけだが、その際はレンダリングした素材に特殊効果を吹いてディテールアップを図り、そのデータを基にモデリングにフィードバックしてテクスチャとして再利用した。そのほか、マスクは3DCGだが顔の部分は作画に切り替えるなど、これまでアニメーションの現場で培ってきたノウハウを活かしつつ、バランスをみてフローに取り込むことでクオリティアップを図っている。さらに、アニメーション作業を他社と共同で行なっているため、とりわけ口パクに関してはその構造が変わると印象がバラけてしまうという問題があった。この問題に対処するために「口パクルール」を策定し、以後のショットでは話数ごとに良かったショットの参考となる「キャラクターの作画監督設定集」のようなお手本を作成。各チームに共有することで、さらなるクオリティの安定を図った。
キャラクターモデリング
キャラクター「心」の全身3Dモデル
マスク装着時のバストアップレンダリング画像
モデリングのビューポート
Substance Painterを活用したタッチ表現
キャラクター「煙」の破壊マスク完成画
数カット単位で突発的に発生するものについてはモデリング後にカットバイで画づくりが行われた。ディテールを3Dペイントでモデルに直接描き込んで仕上げている
特殊効果を吹いてディテールアップを図る
3DCGキャラクターが使用するプロップは全て3DCGで作成。レンダリングした素材に特殊効果を吹いてディテールアップを図る。特殊効果で吹いたデータはモデリングにフィードバックし、テクスチャとして再利用する