>   >  「映像化不可能」と言われた原作を3DCGと作画の融合でアニメ化、TVアニメ『ドロヘドロ』
「映像化不可能」と言われた原作を3DCGと作画の融合でアニメ化、TVアニメ『ドロヘドロ』

「映像化不可能」と言われた原作を3DCGと作画の融合でアニメ化、TVアニメ『ドロヘドロ』

<3>プレスコで行うハイブリッドアニメの作成術

作画の作法に従ったアニメーションメソッド

本作は3DCGベースで制作しているため、アフレコではなくプレスコが採用されている。また、一部のキャラクターの口パクには事前にルールを決めておき、キャラクターの「寄り」と「引き」で動きを変えているという。特に、主人公カイマンは早口でセリフも多く、上顎と下顎とで別々の動きをする上に、シリアスからコミカルなショットまで声の演技にも振れ幅があるため「カイマンの口パクアニメーションプラン」を策定。他のキャラクターに関しても、マスクをかぶっていたりいなかったりと、作画に寄せた映像づくりをする上で情報量を省略しつつ表現しなければならず、非常に労力を要する作業となることもあった。3DCGアニメーションの工程では、静止画でレイアウトを確認して演出チェックを経てシルエットや表情を固め、セカンダリの作業で影の見え方やめり込み修正を行なっている。そのほか、演出面では3DCGならではのカメラワークである「回り込み」を各話につき数カット程度に抑えた。あまりに3Dらしいシーンを唐突に挟んでしまうと、画的にはリッチに見映えがするという利点がある反面、作画との馴染みが悪く違和感を与えてしまい、さらにレイアウトをとる際も時間を要してしまうからだ。よって、適材適所で背景素材を貼り込み、全体の作業量を調整しつつ3Dワークを抑えていった。また、監督から「日常芝居とアクションではコマ打ちの差をつけたい」とのオーダーがあり、スタッフの得手不得手を考慮して割りふりを変えて作品全体の雰囲気を統一した。アニメーションの付け方に関してはあまり制約はなく、基本的には全フレームを書き出してエクスプレッションやタイムリマップで使用するフレームを調整。3DCG特有の違和感を抑えつつ前後の作画素材に合うように「止めるべき部分はしっかり止める」と、あくまでも作画の作法に則ってアニメーションを付けている。また、シートの打ち方や表現の仕方など、社内に豊富にある作画素材をリファレンスとして細かい指示を出した。「演出と監督陣から作画寄りの指示も多くありましたが、制作が始まる前に社内で行われた作画アニメーターさんの講義にCGアニメーターの多くが参加していたため、スムーズに対応することができました」とアニメーションを担当した奥納 基氏。アニメーション以後の撮影工程では、After Effectsの収集データと同時にCG素材の連番データも用意し、ショットごとに適した手法で撮影が行えるよう仕様を統一。データ提出の前に撮影前の素材のチェックとして「撮出し」工程を入れることで選り分けを行なっている。

カイマンの口パクを「寄り」と「引き」でルール化

カイマンは、通常の人間の顔とは構造が異なるため、普通の人間のように「下顎のみを動かすパターン」と、見映えを重視して「上顎も少し合わせて動かすパターン」を作成。結果的に、「上顎も少し動かすパターン」を基本形として、ロングショットや呟きのような小声のセリフの際は「下顎のみを動かすパターン」を採用。あくまでも叩き台となるルールであり、監督や演出の方針でその都度ベストなかたちを追求した

初期段階で、ある程度口パクの方向性を定めるためのテスト動画を作成

背景美術とカメラマップ化

カメラマップの原図

キャラクターを配置して、ワイヤフレームを表示

完成画

セットアップ

全てのヒト型キャラクター(カイマン以外)に使用したリグのベース。このリグに対してスキニングしBipedにリンク。Bipedの子として制御させることで、アニメーションが付けづらい動きにも対応できるように調整した

ニカイドウのデフォルトのフェイシャル(表情なし)。各パーツに制御用のポイントが付いている



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