シーンデータの自動変換とモーションブラーにおける課題
RPRには、Arnold、V-Ray、Redshiftといったほかのレンダラ用のシーンデータを、RPR用のデータに自動変換する機能が備わっている。しかしこの機能を使っても、まったく同じレンダリング結果が得られるわけではない。例えばRedshiftでライティングしたシーンデータをRPRに自動変換した場合、光源の位置や方向は正しく変換されるが、強度(Intensity)などの値はリセットされ、光源は近しいものに変換されるため、シーンが暗くなってしまう。
また本プロジェクトではファーのモーションブラーが不可欠だったが、RPRのモーションブラー機能は不完全だったため、LiNDA ZOOから機能追加の要望が出された。
- 「本プロジェクトの納期には間に合いませんでしたが、将来的に対応予定で、AMD Santa Claraの原田(隆宏氏、RPR開発チームを統括している)らと連携しながら改良を続けています」とソフトウェアディベロップメントエンジニアの吉村 篤氏は語った。
RPRとRedshiftのライティング用パラメータの比較
▲左はRPR、右はRedshiftのライト設定用ウインドウ。例えばIntensityの対応しているパラメータの値を揃えても、得られる明るさは異なる。また、RPRのArea Lightには減衰(Decay)のパラメータが用意されていない、RPRにはRedshiftのデフォルトライトモデルがないといった不一致がある
▲【上】Redshiftでライティングとレンダリングを行なった結果/【中】【上】のシーンデータをRPR用のデータに自動変換すると暗くなってしまう。この点は今後の改良を期待したい/【下】【上】を指標に、RPRのIntensityの値を調整した結果。「デジまる」の画質が粗いのはIPRを用いているため
モーションブラー、ファー、SSSにおける課題と、その解決策
▲緑色の枠内がRPRのモーションブラー用パラメータ
▲同じく、Redshiftのモーションブラー用パラメータ
▲同じく、V-Rayのモーションブラー用パラメータ。RPRのモーションブラー用パラメータはDeformationブラーやカメラのモーションブラーに対応していないため、LiNDA ZOOから機能追加の要望が出された
▲ファーが原点から離れると、ブロックノイズのようなものがレンダリングされるエラーが発生した。このエラーはメッシュをTransformした場合には発生せず、Deformした場合にのみ発生するため、アニメーション作業の後で発覚したという。RPRの開発チームはこの課題にすぐさま対応し、解決策を提案した。なお、2020年4月上旬時点のリリース版ではこの修正が反映されていないが、次のリリース版では反映されるとのこと
▲RPR UberシェーダのSSSを使用する場合には、Refraction、あるいはBackScatterをONにする必要がある。ただし【左】のような眼球をもつ動物の場合には、RefractionをONにすると表面のラフネスとSSSの設定次第では【中】のように光が通り抜けてしまうため注意が必要である。【右】今回は、DiffuseのBackScatterをONにすることで光の通り抜けを防いでいる
© Shibainu maru