実写撮影への対応
初期にルック比較検証用にスタジオ・バックホーンのスタッフたちの協力を得て村上氏が作成したテスト画像
「フォトリアル調」と「セル調」の折衷案(2.5D)
村上氏は、撮影時のカメラ等の情報を記録するシート(通称データシート)を自作している
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第2話に登場する「プロペラスカート」シーン(屋内)
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「プロペラスカート」シーン(屋外、屋根開放後)。「現場の慌ただしさの中で書いているため殴り書きに近く、お見せするのはちょっと恥ずかしいですね(苦笑)。こだわりとしては、多少雨等で濡れてもクシャクシャにならない中厚紙に印刷しています」
撮影時の様子
「プロペラスカート」シーン(映像研部室内)。「英総監督は空気感を最優先としたプランニングを行います。この空気感とは、自然な芝居のかけ合いと、合成的な仕上がりの両面からです」と、村上氏。その象徴となったのが本シーンだ。こうした表現の場合、飛んでいる浅草氏をグリーンバックで撮影し、合成するのが一般的だが、今回は現場で演者を吊った状態で撮影。「吊りに耐えられる建物の構造ではなかったので、屋根の隙間から大型クレーンで吊元を確保するなど、かなり大がかりな撮影となりました。そうした苦労の甲斐もあって、良いビジュアルに仕上がったと思います」(村上氏)
屋外へと飛び上がった後のシーンは、グリーンバックで撮影された
第3話の宇宙遊泳シーン
『そのマチェット~』シーンに登場する「自走三脚式重カメラ」の撮影。走行する部分はCGで合成される
データフロー&進行管理
Premiere Proによるデイリーデータの管理。本作では、全てのデイリーデータをポストプロダクションを担当したIMAGICA Lab.から受け取り、VFX関連ショットのカット整理、管理が行われた。具体的な手順としては、撮影データ(カメラデータ、素材撮影)の現場メモと実際の撮影フッテージを照らし合わせて、データベース(Excel)へ正確に登録している。VFXが介在しないシーンも含めて全てのフッテージを提供してもらうように決めておくことで抜けを回避。これにより、仮合成等をいつでも速やかに行えるようになったほか、立ち会えなかった合成カットの撮影条件、内容を的確に把握できたという。「仕上げ担当者が撮影された素材等の把握ができるので、フッテージの使いどころやテイクを変更した上でより良い仕上がりにするなど、効率良く画づくりを進めることができました。また、バレ消しでは、別テイクに良好な空舞台が存在することが往々にしてあるので、より適した素材を選択することが可能ですし、追加素材を発注する際も明確なクリップ名が把握できているのでコミュニケーションを円滑に行うことができました」(村上氏)
IMAGICA Lab.が作成した、TVドラマ用データフロー図。完パケの解像度が、ドラマ版は「W1,920×H1,080」、劇場版は「W1,998×1,080」のため、当初の計画では途中フロー(VFX、コンフォーム)においても、解像度&縦横比が異なっていた。しかし、劇場版にもドラマ版のカットがダイジェストとして用いられるため、解像度が混在するこによるワークフローの混乱を避けるべく、VFX、コンフォーム時の解像度を1,920×1,080に統一してもらったという。劇場版の制作では、IMAGICA Lab.にて上下にマスクを施し、劇場版解像度(1,998×1,080)へのブローアップ処理が行われている