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MegascansとUnreal Engine 4による非エンタメ向けリアルタイム技術デモ『Cutting-Edge Test Drive』

MegascansとUnreal Engine 4による非エンタメ向けリアルタイム技術デモ『Cutting-Edge Test Drive』

<2>Megascansの有用性を訴求する

Megascansを使ったアセット制作で効率とクオリティをアップ

本作では、デモを構成するためのアセットにMegascansのアセットライブラリが活用されている。MegascansはUE内で使用する場合に限り、無料で使用できるアセットライブラリだ。現実の物体を3Dスキャンして作成されているため、非常にリアルでクオリティの高いアセットがライブラリとして用意されている。本作の多くの部分をMegascansのアセットで構築しているが、ほとんどのアセットはルックを合わせるためにマテリアルなどの修正を施した上で利用されている。「これだけのクオリティをゼロから作成していたら間に合わなかったですね」と佐々木氏。「このようなアセットを無料で利用できるのは、アーティストとしてもありがたいです」と天見氏も話す。利用しているアセットはMegascansだけではなく、UEのマーケットプレイスで購入した3Dアセットやマテリアル、Substanceで作成したマテリアルなども利用されているという。登場するクルマは、別にモデルを購入し、UE4で利用できるようにリグなどの変更が加えられている。「先日公開されたUE5のデモムービーもほとんどがMegascansのアセットが使われていますし、今後、Megascansのアセットと自身で作成したアセットを組み合わせて利用するという使い方が促進すると思っています。コンシューマのゲームでも、どこを既存のアセットで用意してコスト削減を図るかというのがゲームをプランニングする上でのポイントになったりしています。これからはライブラリにあるアセットを熟知して効率良く作成するテクニックが必要な時代がくると思います」と佐々木氏は語る。

Megascansのアセットの積極的な利用

本作で使用されているMegascansによるアセットの例だ。Megascansに用意されているアセットは、3Dスキャンによって制作されたものが多く、非常にリッチなルックのアセットが豊富にリリースされている。アセットはUE4内から直接アクセスしてダウンロードできるようになっており、簡単にステージにレイアウトが可能だ

上の4つの画像はMegascansのアセットをUE4で制作中のステージにレイアウトした状態

【左】は荒野パートのステージを上から見たもの。輪郭がハイライトしている部分に【右】のアセットがレイアウトされている

【左】も同じく荒野パートのステージの一部だ。輪郭がハイライトしている部分に【右】のアセットがレイアウトされている

オリジナルアセットを使用したバーチャル展示場の内観

バーチャル展示場の内観のように汎用のアセットが使用できない部分は、Mayaなどを使用してオリジナルのアセットが作成されている。図はイチからモデリングされたバーチャル展示場の内観のアセットだ

<3>クルマを美しく見せることに注力したバーチャル展示場

クルマを魅力的に見せるライティング

デモの冒頭に登場するバーチャル展示場では、スポーツカーの色をカスタマイズして、様々な角度から確認することが可能だ。展示場の内装は高級外車のディーラーの展示場のようなルックになっており、放送局で使用するようなバーチャルセットでの応用も提案できるデザインとなっている。本シーンをリードしたのは天見氏。ライティングなどの調整を真茅氏が担当している。「最初は展示場の空間を見せながらクルマも見せたいという方向で進んでいたのですが、クルマのコンテンツなのだからクルマがもっとカッコ良く見えるような感じにしようということで、ライティングを何度か調整しています。技術デモなのでリアルさを追求するというよりは、少し派手に見えるようハイライトが綺麗に入るようにしています」と真茅氏。「クルマの表面は非常に周囲の環境を映し込むので、クルマにライティングを施すというよりは、クルマに綺麗に映り込むような環境になるように空間を作成することがポイントになってきます。画面には映りませんが、天井の構造を複雑にして上手くクルマに映り込むように工夫しています」と天見氏は語る。

展示場の内観と外観

バーチャル展示場全体の構造だ。かなり広い空間で展示場が制作されている。多くのライトが配置され、空間の様々な陰影やディテールがクルマに映り込むように計算されている

展示場内全景

展示場の外側。緑が多く、風に揺れる植栽が展示場内から見えるようになっている

映えるカーペイントを表現する

主役のクルマをより際立たせるために、クルマのマテリアルにも注力されている。技術デモであるため、リアルなクルマの質感というよりは、ハイライトや映り込みが派手に入るような質感設定になっている

クルマのボディのマテリアルノードの構成

プレビューで表示したもの。カーペイント特有のワックス感やフレーク感が強調されたマテリアルになっている

カーコンフィギュレータとして、バーチャル展示場ではクルマのカラーを切り替えることができる。どの色でも映えるようなマテリアルになっているのがわかる

クルマが映えるライティング

本作はクルマが主役であるため、展示場内に配置されたクルマのハイライトや映り込みが最も綺麗に見えるように、効果的なライティングが施されている

UE4でオーサリング中のバーチャル展示場のステージに配置されているライトを全て表示したもの。内装にある照明器具の位置にライトが配置されているほか、クルマの周囲に点光源を複数配置して、綺麗なハイライトが生成されるように調整されている



  • クルマの真上にはスポットライトが配置され、ターンテーブル上に明るさの濃淡ができるように配置されている



  • クルマ周辺のアンビエントオクルージョンの状態

内装のモデルにはライティングが決まったら、ライトやシャドウをベイクしている

美しい映り込みやハイライトを生成するために工夫された天井の構造。暗い部分と明るいライン状の発光部分を作成し調整している

LUTを使ったルック調整

高級感のある魅力的なカーディーラーを表現するため、最終的にPhotoshopで作成したLUTを使用してカラーグレーディングが施されている

カラーグレーディング前の状態をキャプチャしてPhotoshopに読み込み、トーンカーブなどを調整しながら見映えのするルックを探っていく。調整された色調整の状態をLUTファイルとして出力し、UE4に読み込んでカラーグレーディングに使用している



  • LUTによる補正をする前の状態



  • LUTによる補正を行なった状態

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<4>映像演出的なアニメーションデモを提案する荒野パート

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