<4>映像演出的なアニメーションデモを提案する荒野パート
Megascansを活用して広大な地形を作成
バーチャル展示場からクルマが走り出すと、自分がカスタマイズしたクルマが荒野を走るデモに切り替わる。荒野パートは、映像パートとしてとにかく画を盛るということにポイントを絞って作成しているとのこと。その盛った画づくりのためにMegascansのアセットが利用された。「荒野パートは、走っているクルマを見せるということもありますが、Megascansを使ってこのような映像を簡単につくれるようになったということをアピールするための技術デモでもあります。海外のデモではこういうMegascansを多用したデモも多いのですが、日本ではあまりない。われわれもMegascansを使ってどこまでやれるか試してみたかったということもあります。ここまで活用したのは初めてでした」と佐々木氏。岩などのアセットも通常であればZBrushなどを使って作成するが、今回はMegascansのアセットだけで構成されているという。「Megascansを使ったコンテンツ制作は、工数の少なさが魅力です。マテリアルの割り当て作業など、時間がかかる作業を大幅に短縮することができます。荒野パートのステージは3~4日でほぼできてしまいました。山脈も最初はLandscape Editorで作成したなだらかな地形だったのですが、30種類程度のアセットを組み合わせて複雑な地形に調整することができました。とてもバリエーションをつくりやすいです」と天見氏。
Megascansを駆使して作成された荒野パート
荒野パートはMegascansのアセットを駆使して作成されている。おおまかな地形の起伏は当初Landscape Editorを使用して作成していたが、山脈のディテールや複雑な起伏を生成するために、アセットを組み合わせて荒野のステージが構成されている
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Megascansのアセットを組み込んだ荒野パートのステージ例。様々なアセットが組み合わされている
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同一のアセットもほかの場所でくり返し使用されている。図で選択されているアセットは【左画像】で選択されているアセットと同様のアセットだ
Sequence Editorを使って演出する
荒野パートはUE4を使った映像制作の技術提案でもあるので、凝ったカメラワークによる映像編集が施されている。カットごとのカメラをステージに配置し、Sequence Editorでカット割りを編集していく
<5>UE4のドライビングシミュレータとしての利用を提案した都市パート
天候変化にも対応したシミュレータ
都市パートはドライビングシミュレータを想定した技術デモとなっている。晴天と雨天での状態変化に対応したドライビングや、AIによる状況解析のイメージデモなど、自動車産業におけるUE4の活用提案がなされている。都市パートのデモでは、特にこの晴天と雨天の天候変化の表現が非常にリアルに作成されていて目を見張る。「アセット全部のマテリアルの親階層にマテリアルの切り替え機能を仕込んでいて、雨モードにすると全体のマテリアルが切り替わるようになっています。雨の質感に関してはカスタムでつくらないといけないので手間がかかります。アセット制作には時間をかけず、このようなしくみの仕込みに時間をかけたいので、Megascansなどのアセットは非常に役に立ちました。3日くらいで完成版に近い見た目まで出来上がっていました。残りの時間で細かい部分を地道につくっていくという感じでしたね」と制作を担当した真茅氏は話す。クルマの挙動は、信号の状態によってスピード変化が起きるようにトリガーが仕込んであったり、一見映像的なつくり方に見えるが、内部的にはゲーム的なつくり方になっているという。演出的なクルマの動きが必要な部分は、クルマの挙動をゲームコントローラでコントロールし、Sequence Recorderで記録して利用しているという。クルマが段差を越えるときのサスペンションの挙動など、非常に細かい動きまでリアルに再現されている。
雨をリアルタイムで表現する
都市パートでは、晴天と雨天の両方のドライビングを体験することができる。雨の表現は基本的にマテリアルの操作とパーティクルで表現されている
車内から見た雨天の都市。フロントガラスに落ちる水滴などの表現が非常にリアルだ
フロントガラスに落ちる雨粒を表現するためのマテリアルノード例
降り注ぐ雨は図のようにパーティクルで表現されている
雨粒用のマテリアルノード例
晴天と雨天を切り替える
晴天と雨天のルックの切り替えは、晴天用と雨天用のマテリアルをノードのルート部分で切り替えるような構造になっている。ルート部分を切り替えるだけで、下の階層のマテリアルは全て自動的に差し変えることができる
切り替え用マテリアル関数
雨天状態のマテリルノード
コンシューマを意識したユーザーインターフェイス
UIのデザインは専任のスタッフが作成している。ぱっと見ですぐに操作できるようなデザインであることと、業務用ではないコンシューマを意識したデザインを目指したという
ゲームコントローラを使用したモーション制作
クルマの挙動は物理計算で動かしているほか、ゲーム用コントローラを使用してモーションを生成するなど、ゲーム的な手法を用いている。何回か操作のテイクを図のSequence Recorderを使って記録し、記録した中から一番良いテイクを選んで使用している。「クルマを実際に動かしながら挙動を作成しているので、二度と同じ動きは作れません」と真茅氏