>   >  オンラインDJ配信と視聴型VRを組み合わせた新しいかたちのバーチャル・クラブイベント、オンラインVRパーティ『SWITCH』
オンラインDJ配信と視聴型VRを組み合わせた新しいかたちのバーチャル・クラブイベント、オンラインVRパーティ『SWITCH』

オンラインDJ配信と視聴型VRを組み合わせた新しいかたちのバーチャル・クラブイベント、オンラインVRパーティ『SWITCH』

<2>ジャングルと未来都市 ~映像演出~

VJの醍醐味をVR空間で拡張させる

本イベントのステージとなる「ジャングル」と「未来都市」のアセットは中市氏が3ds Maxでベースモデルを作成し、UE4のDatasmithを介してインポートしUE4内に配置している。「Datasmithでインポートすればテクスチャの設定もBlueprintに変換できるので作業も簡単に行えました。植物の3DモデルはQuixel MegascansからQuixel Bridgeを介してインポートし、フォリッジ機能で量産してステージを構築しました」(坂本氏)。アセット作成を担当した中市氏と坂本氏は今回初めてUE4に触れたそうだが、普段3ds Maxを使用していることもあり短時間でUE4の機能を習得できたという。

視聴型VRの場合はカメラに映り込む範囲のみつくり込めば良いため、細部までつくり込む必要のある体験型VRに比べてアセット制作のコストを大幅に抑えることができるという利点もある。UE4上につくり上げたステージそのままではフラットな印象になってしまうため、ポストプロセスを駆使し奥行きを感じられるステージを作成。実写素材とCGの馴染みも意識しながら調整が重ねられた。「オンライン配信では視聴者を飽きさせない照明の演出や、没入感を増幅させるようなカメラワークも重要となります。四方に配置された大型モニタにはDJの顔や手元の映像、VJ映像をリアルタイムで映し出しステージを盛り上げました。未来都市はシーンが広いため、DJのプレイを見せるフェスシーンとカメラワークを駆使し世界観を見せるストーリーシーンの2つで構成しました」(中市氏)。

DJブース内の素材は平面のポリゴンに貼られているだけなのでカメラアングルによっては不自然に見えてしまうこともあり、平面に見えないよう注意しながらカメラワークを作成する必要があったという。「DJの選曲やリズムに合わせてリアルタイムでVJ映像や複数のカメラを切り替えることが可能です。本イベントのために5~600本程度のVJ映像を準備しましたが、遅延することなくUE4上に表示できたときはとても驚きました。スイッチング時に音楽と映像がシンクロしないと視聴者に違和感を与えてしまうので、VJで培った感覚や技術が役立ちました」(坂本氏)。

オンライン配信では観客のリアクションがつかみづらくDJもモチベーションを維持するのが難しいため、ステージを盛り上げる歓声の効果音なども欠かせない要素だという。「DJ配信は映像が単調になりやすく盛り上がりに欠けるという欠点もあるのですが、VRを導入すれば現実にはありえないようなステージをつくることもできるので視聴者を飽きさせない演出も可能です。さらにアバターやチャットを組み合わせることで視聴者同士にも一体感が生まれます。VRを導入したイベントはまだ始まったばかりなので、今後もVRの可能性を提案していきたいです」(中市氏)。

バーチャル空間上にLEDスクリーンを配置する

▲坂本氏が画づくりをリードした"ジャングル"シーンのベースとなる3DCGアセット。「VJ映像用のバーチャルLEDスクリーンの配置は、両方とも僕が3ds Maxで作成しました。テクスチャの設定なども使い慣れたツールで行い、なるべくUE4のBlueprintを使わずに組めるように配慮しました」(中市氏)

▲UE4上のDatasmithでインポート。Datasmithを使えばテクスチャの設定もBlueprintに変換して読み込んでくれる。センターLEDはVJ映像をキャプチャして投影し、左右の円形スクリーンはサービス映像の扱いでグリーンバックが干渉しない下手の位置にカメラを投影


▲"ジャングル"シーンに設定された全てのカメラアングル(10パターン)。UE4上でカメラワークを事前に設定することで、あたかもバーチャルカメラで撮影したようなビジュアルが実現された

植物表現にはMegascansを活用

▲Megascansの植物アセットをQuixel Bridgeを介してUE4にインポートし、フォリッジ機能で植物の量産が行われた。「Megascansは種類も豊富で今回使用したアセットは全て無料でダウンロードできるものです。テクスチャ解像度は最大8Kまで選択できますが、今回はリアルタイム配信を考慮して4Kサイズのものを使用しました」(坂本氏)

UE4による画づくり

ポストプロセスエフェクト「Post Process Volume」を使用し、Color Gradingのホワイトバランスやシャドウで全体の質感を調整。さらに、Chromatic AberrationやFilmのエフェクトを用いることで実写とCGの馴染み具合が高められた

▲ポストプロセスエフェクトON

▲同OFF


▲VJプレイにはResolume Arena7を使用

▲VJ用PC(MacBook Pro)からBMD DeckLink DUO 2を介してUE4にプレイ内容がリアルタイムで読み込まれる(解像度は1080p/60fps)。当日は約500ものVJ素材が用意された

バーチャルの利点を活かした大スケールの"未来都市"



  • ▲"未来都市"の画づくりは中市氏が担当。"ジャングル"と同じく、3ds MaxでVJ映像用のバーチャルLEDスクリーンを作成



  • ▲【画像左】をDatasmithでUE4に読み込み、3Dシーンが作成された

▲"未来都市"のシーンは、DJを見せるフェスシーン【左】と演出的に世界観を見せるストーリーシーン【右】という、2パートで構成されている

UE4による画づくり

▲Post Process VolumeやExponential Height Fogを使い、Color GradingやLight Volumeなどの調整が行われた



  • ▲ResolumeによるVJプレイ



  • ▲【画像左】の情報がリアルタイムでUE4上にも反映される


▲"未来都市"シーンに設定された全てのカメラアングル(12パターン)

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<3>DMXとUE4をシームレスにつなげる~今後の展望~

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