地元テレビ局でニュース放映される
なお、本ベントの模様は地元テレビ局のKSB瀬戸内海放送で取材され、9月8日に地域ニュースとして放映された。18歳未満を対象に、ゲームの利用時間を1日60分、休日は90分までとする「ネット・ゲーム依存症対策条例」の制定で、全国的に注目された香川県。KSBは本条例の制定過程について検証番組「報・動・力『検証 ゲーム条例』」を制作・放送するなど、独自の報道姿勢で知られている。
渡辺氏は「今回、テレビで取り上げられたことで、職場の同僚から声をかけられるなど、少なからぬ影響があった」とふり返った。それまでは本業のかたわらコミュニティ活動に力を割くことに対して、職場で冷ややかな目を感じることもあった。しかし、今回の放送によって周囲から活動内容を理解され、ポジティブに受け止められるようになったという。
このように本ゲームジャムは、2つの意味を地域にもたらした。1つはコロナ禍にもかかわらず、オフラインでのイベントが開催されたこと。そしてもう1つは、4月1日から施行された「ゲーム規制条例」とのかねあいだ。
これに対して渡辺氏は、「『e-とぴあ・かがわ』という県の施設で開催できて、良いアピールになった」と語った。適切な感染症対策を実施すれば、ゲームジャムが開催できることを、広く証明できたからだ。「子どもたちにとって、オンラインで見知らぬ大人たちと交流することは、想像以上にストレスになる。そのためオフラインで開催できて良かった。こうした施設がある香川県は、全国でも恵まれていると思う」。
またゲーム規制条例についても「県のイメージが落ち込んだからこそ、あとは上がっていくだけ」とポジティブな姿勢を隠さない。「今後もプログラミング・ラボや讃岐GameNの活動などと組み合わせながら、毎年開催していきたい」と抱負を述べた。
条例の制定を受けて香川県は7月、県内の小中学生に「ゲーム依存対策学習シート」を配布した。家庭でできる自己チェックシートだが、内容の妥当性に対して賛否両論が寄せられている。もっとも、条例に対する考え方は県民の間で、様々なちがいがある。今回は普段から「プログラミング・ラボ」に通うなど、ゲーム・リテラシーの高い家庭からの参加が多く、開催に際して特に問題はなかったという。
その上で次回は「チームビルディングをより丁寧に行う」、「モデリングだけでなく、プログラミングの楽しさを子どもたちに体験させる」など、様々な改善を行なっていきたいと述べた。「Scratchを学んで、より高度なゲームプログラミングを期待していた子どもたちにとっては、少し物足りなかったかもしれません。今後の課題にしていきたいですね」。
同様のふり返りはxeen滝下氏からも聞かれた。
「ゲームジャム自体が初参加で、子どもたちがほとんどというチーム構成の中、はたして2日でゲームが出来上がるのかという不安と、参加した子どもたちが満足してくれるのか。この後、もっとゲームづくりしてみたいと思ってもらえるか心配でした。結果的にメンターさんが大いに手助けしてくださったので、何とかなった印象です。全てのチームがなんとかゲームの形を残せたのは良かったと思います」。
「ただ、せっかく子どもたちがつくってくれたのに、未実装に終わったモデルデータもありますので、そのあたりは申し訳ないと思っています。また、分業に徹してしまったので、モデリング以外の体験をあまりさせてあげられなかったことは残念です。プログラミングや、開発中のゲームをプレイしつつ、改善アイデアを出し合うような会議の実施などができればよかったかなと思います」。
「可能であれば、施設側でUnity講座やBlenderモデリング講座などを開いていただき、その集大成として年1回のゲームジャムができると良いかもしれませんね。他にゲームジャムという形だと、どうしても成果物に目がいきがちなので、ゲーム開発体験会のような緩いスタイルにした方が、子どもたちがもっとゲームをつくってみたいという気持ちにつながるかな、とも考えています。今後も相談していきたいですね」。
長くゲーム産業の空白地帯とされてきた瀬戸内地域。高松市に限れば「xeen以外のゲーム会社は存在しない」といっても過言ではない状況だ。もっとも讃岐GameNをはじめ、ゲーム開発者コミュニティは徐々に育ちつつある。e-とぴあ・かがわによる支援がみられるのも、香川県ならではだ。こうした中、本ゲームジャムの開催にたどり着いた意義は大きい。今後の展開を注目していきたい。