>   >  UE4の大規模カスタマイズが支えた"懐かしくも新しい『FFVII』"~『FINAL FANTASY VII REMAKE』(1)開発体制&キャラクター制作
UE4の大規模カスタマイズが支えた"懐かしくも新しい『FFVII』"~『FINAL FANTASY VII REMAKE』(1)開発体制&キャラクター制作

UE4の大規模カスタマイズが支えた"懐かしくも新しい『FFVII』"~『FINAL FANTASY VII REMAKE』(1)開発体制&キャラクター制作

原作の特徴的なデザインをPBRでリアルに再現したキャラクター制作

キャラクターは"懐かしさを感じさせながら、新鮮に魅力的に"というコンセプトの下で制作されている。「オリジナルを知っている人には当時を思い出してもらえるような、初めての人には現世代機のタイトルとして納得してもらえるようなハイエンドなグラフィックを目指しています。魅力的で格好良いのはもちろん、原作の特徴的なデザインをPBRでリアルに再現していくことを目指しました」と語るのはキャラクター・モデリング・ディレクターを務める風野正昭氏。

  • 風野正昭/Masaaki Kazeno
    キャラクターモデリングディレクター

参考のひとつとして挙げられたのが、2005年発売のフルCG映像作品『FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN(以下、FFVIIAC)』をリアルタイムで動かすというもの。当時、リアル頭身のFFVIIキャラクターが活躍するフルCG映像に興奮したファンも多い。ただし、注意しなければならないのは、『FFVIIAC』をリアルタイムに動かすということを念頭に本作が開発されたわけではないという点だ。15年前の作品であり、技術的継承など開発上直接の関わりがあったわけではない。「『FFVIIAC』をはじめ、流通している膨大な書籍・フィギュアなどから、ファンにとって『FFVII』のキャラクターがどんな存在であるかを見つめ直し、キャラクター制作に落とし込んでいきました」(リードキャラクターアーティスト・鈴木 大氏)。

  • 鈴木 大/Dai Suzuki
    メインキャラクターモデラー&リードキャラクターアーティスト

制作フローは各担当アーティストに委ねられており、テクスチャベイクなどの一部ルール化された工程を除き、DCCツールなどは各人の自由となっている。特にオクルージョンのベイクはSubstance Painter上で行い、数値はENV班と一致させて環境内にアセットを配置したときの一体感を担保している。使用ツールは、メインツールであるMayaのバージョンは2017に統一、スカルプトはZBrush、テクスチャ作成はSubstance Painter(ごく一部にPhotoshop)、LOD作成にSimplygon7、など。その他の補助ツールとして、UE4に組み込む前にデータにエラーがないか、骨構造、トポロジー、不正アトリビュート値などを検出するチェッカーが用意された。カットシーンとインゲームでキャラクターアセットは同じものが描画されているが、前者ではLOD0(一番ハイメッシュのもの)のみ描画されるようになっている。

  • 中村博之/Hiroyuki Nakamura
    モンスターアーティスト

キャラクターを"再現"するための参考資料

▲キャラクター制作はまず主人公・クラウドから着手し、本作のキャラクターの在り方を模索するところから始まった。【左】原作『FFVII』のクラウドのキャラクターデザイン画/【右】『FFVIIAC』のクラウド

▲本作のクラウド。原作資料からリアル頭身のキャラクターとして"再現"するにあたり、注意深く特徴を抽出。クラウドであれば「大剣をふり回す力がありながらスマートでしなやかな筋肉」に着目し、現実のバレエダンサーの写真資料なども参考にしたという

キャラクターモデル構成

▲キャラクターごとのモデルとテクスチャの一部。左からクラウドなどのメインキャラクター、NPC、エネミーの警備兵、モブキャラクター。テクスチャは概ね1段ごとに1マテリアルで、それぞれアルベドをはじめとする基本的なテクスチャ構成となっているが、オクルージョンは衣装替えを意識して独立した1枚となっている。赤いマップはタイリングなどに用いるマスク制御マップ。ホログラムで登場するキャラクターはアルベドが不要、などの変動がある

▲キャラクターごとの衣装バリエーション。コルネオの館イベントに割かれたリソースの多さが窺える。一部Marvelous Designerも使用されている

▲【上】クラウドに使用されているマテリアル(衣装バリエーション含まず)。12あり、目・まつ毛・眉毛・唇・髪など半数が頭部となっている/【下】マテリアル一覧の一部。マスターマテリアルは厳重に管理されており、その数点を除きマテリアルインスタンスとなっている

2Dペイントによる敵キャラクターのディテール

▲超大型ボスも含め、敵キャラクターは同じフロー、同じ寸法で制作している。「サイズが大きくなるほど、ディテールをZBrushで細かく入れるとベイクが大変になってしまいます。そこで、スカルプトではなくSubstance Painterでの2Dペイントで細かくディテールを入れています」(モンスターアーティスト・中村博之氏)。画像はジェノバBeatのハイモデル【上段左】、テクスチャ表示【上段右】、ハンドレットガンナーのハイモデル【下段左】、テクスチャ表示【下段右】。ベイクのソースとなるハイモデルは1千万~1億ポリゴンと幅があるが、前者のようにスカルプトではほとんどディテールを入れていないケースもあり、テクスチャ(カラーとハイトマップ)でディテール感を付与している。「例えば5cmくらいのビスであれば造形しますが、それより細かいディテールは造形せずテクスチャで描くといった処理でベイク時間を効率化しています」(中村氏)

特徴的な髪型の表現

▲髪は板ポリに透過用アルファマップやノーマルマップをベイクして表現している。手順は以下の通り。【左】ヘアカーブで髪型を作成/【右】インゲーム用に板ポリゴンでモデリング

▲【左】その板ポリゴンとUVを合わせたベイクターゲットとなるメッシュを用意し、ベイクのソースとなるヘアカーブを配置。この際、髪型は【右】のように立体的に配置することが重要

▲ベイクしたアルファマップ【左】と法線マップ【右】

髪の板ポリ感を軽減



  • 【A】



  • 【B】



  • 【C】



  • 【D】

▲板ポリゴンで表現している髪の毛を滑らかにするために、ベント法線マップのテクニックを応用。インゲーム用頭部モデル【A】をボクセル化し【B】、その法線を【A】のUVに対してベイクすると【C】のようなマップが得られる。これを【A】に適用すると【D】のようになる

▲【左】ベント法線マップを適用していない描画結果/【右】ベント法線マップ適用後の描画結果。法線が締まり、板ポリ感が軽減されている

▲【左】後方からの適用前、【右】適用後。毛先に光が回り込むなど、より自然な印象に

▲【左】適用前、【右】適用後それぞれの法線情報をRGBで可視化したもの

フローマップを使用した召喚獣の発光表現

▲「召喚獣はこの世界ではない別の世界から来ている印象を強めるため、発光部にフローマップを多用しています。水などによく用いられている表現で、色やながれる速度などのパラメータはエディタ上で調整できるよう管理されています」(中村氏)。【左】召喚獣の発光部に用いられているテクスチャ。上段左からながれの向きを決めるマップ、発光部指定用のアルファ、下段左からながれるスピード(R)、ゆらぎ(B)を指定するマップ、発光部のエミッシブHDRテクスチャ/【右】発光部に関する資料「召喚獣 エミッシブフローマップ設定」

▲同レベルに各召喚獣を配置した様子。流動する発光部が別世界を印象づける。なお、召喚獣の制作フローはエネミー・ボスらと基本的に同様


『FINAL FANTASY VII REMAKE』(2)
アニメーション&エンバイロンメントに続く>



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