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『モンスターストライク THE MOVIE ルシファー 絶望の夜明け』No.2 全社の力を最大化するダイナモピクチャーズ

『モンスターストライク THE MOVIE ルシファー 絶望の夜明け』No.2 全社の力を最大化するダイナモピクチャーズ

Time Warp機能で破壊時のタメツメを表現

▲アーサーの拠点であるキャメロット城が死の炎によって破壊されるシーンでは、HoudiniのRBD Material Fractureノードを使うことで、崩れていく塔のギザギザの断面を作成した


▲単純な物理シミュレーションによる破壊では、本作のようなアニメ作品で重視されるタイミングやレイアウトを実現できない。そこで意図した破壊表現にするため、RBD Bullet Solverのガイド機能を活用した


▲死の炎によって破壊されるキャメロット城


▲キャメロット場内のオーブ保管庫が破壊されるシーンでは、Time Warp機能を使い、タメツメの調整を行なった。破片が勢いよく飛び散った直後、その動きをややスローにすることでスケール感を表現している。RBD SOPを活用することで、より短期間で望む結果にたどり着けたという。「演出に合わせた微調整を容易に行える点が、Houdiniを使うメリットのひとつだと思います」(山口氏)


▲死の炎によって破壊されるキャメロット城内のオーブ保管庫。完成映像は本予告の1:04あたりから視聴できる

板ポリとテクスチャで方舟のバリアを量産

シーンを横断して登場するノアの方舟のバリアは、協力会社と共に安定的に量産できることを重視し、シンプルで扱いやすいデータとなっている。そのしくみは単純で、ポリゴンにテクスチャを貼り付けただけなので、レンダリングに要する時間も短い。テクスチャ作成時に元素材をKrakatoaで用意しているため、シミュレーションを実行したようなルックに仕上がっている。以降ではその制作手順を解説する。

▲最初にベースとなるオーラ素材をつくる。ポリゴン平面をMayaのTexture Deformerでウネウネさせ、nParticleを放出する。nParticleのInherit Factorの値を1とし、ポリゴンの速度を継承させてバラつきを生み出す。TurbulenceとDragを設定し、ゆっくり浮遊させる。Turbulenceだけだとノイズパターンがあからさまになるので、Volume Axis Field(Cylinder Type)によってゆっくりかき混ぜることで、分布に粗密が生まれる


▲【左】Krakatoaで周回キャッシュを取り、パーティクルの量を増やしてレンダリングしたもの。300フレームくらいの尺でつくっておくと、ループ素材にしたり、別の表現に転用したりできる/【右】After Effects上で縦に2つ並べ、オフセットで縦スクロールさせる


▲【左】極座標(長方形から極線)を適用し、【中上】ディスプレイスメントで放射状の歪みを与え、【中下】追加のフラクタル素材を加算してバランスを整える。【右】極座標(極線から長方形)を適用する


▲先の素材をMaya上でシンプルな板ポリゴンに貼り付ける。多層構造にすると立体感が出る。各カットで想定されるレイアウト(カメラ設定)でチェックをくり返し、連番テクスチャの密度感を見直す。なお、連番素材は一貫してOpenEXR形式で作成しているため、32bpc floatingでコンポジットする際に、加算部分が潰れすぎないように色調整できる


▲【上】方舟のバリアを引きで映した場合/【中】寄りで映した場合/【下】もっと寄り(方舟の甲板やコックピットからの視点)で映した場合


▲「もっと寄り」で使用する場合は、Mayaの定点カメラから8K画素の360度マップを連番画像でレンダリングしておく


▲先の連番画像をAfter Effectsにインポートし、標準エフェクトのCC Environmentを適用すると、各カットのカメラ設定に即したバリアをコンポジットで表現できる。視野角の微調整も容易なので、量産コストを抑えることが可能となる

方舟のスラスターも板ポリで表現

方舟のスラスターも板ポリゴンで制作している。

▲【左上】板ポリゴンを格子状に組む/【右上】【下】標準のrampとfractalをLayered Textureで重ねた後、GammaやMultiply Divideなどの色調整用ノードで着色する


▲Non Linear DeformerやLatticeで形状を整える。板ポリゴンに見えないよう、想定されるカメラ設定でくり返しチェックする。透過するマテリアルを積層させているため、Arnoldでレンダリングする際には、Ray Depth内のTransparency Depthの設定を高くしておく必要がある


©XFLAG

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