HoudiniのVDBキャッシュを流用し、カエサルの火球をMayaで量産
作中でカエサルがくり返し投げる火球は、大きさや飛行速度が各カットでバラバラだった。カットごとにシミュレーションを行うのではなく、定点でシミュレーションした方が望ましい形になると考え、直進する火球はHoudiniでシミュレーションしたVDBキャッシュを流用することにした。また、ダイナモはHoudiniのライセンスが少ない一方で、Mayaのレンダーライセンスは豊富に所有しているため、Houdiniでしか出せないないものがボトルネックにならないようにする必要があり、VDBをMayaにインポートしてレンダリングするフローが選択された。
▲Houdini側で火球のシミュレーションを行なった後、Make Loop SOP(SideFX Labs)で100フレームループのVDB連番を作成。MayaのaiVolumeにVDBをインポートし、aiStandard Volumeシェーダを適用してレンダリングしている。なお、aiVolumeはバウンディングボックスしか表示されないため、火球のサイズを把握できるように、ガイド用のダミージオメトリもHoudiniから出力している。VDBの含有チャンネルが多いとMayaでのレンダリングに時間がかかるため、HoudiniからはDensityとHeatチャンネルだけを出力。aiVolume Sample Floatノードを使ってHeat値を読みとり、Color Rampで着色している(Mayaではオレンジ色でレンダリングし、コンポジット時に紫色に変更)。また、aiVolumeをMaya内で拡大・縮小するとVDBの値もスケールされるため、シェーダ側での補正が必要となった
▲このような火球が直進するカットは、同一のVDBキャッシュを流用し、Mayaで量産することができた。完成映像は本予告の0:09あたりから視聴できる。ただし、カエサルが火球を発生させたり投げたりする瞬間は、カットごとに異なる手の動きに合わせる必要があり、エフェクト担当者がカット単位で調整している
遠景用の死の炎は書き割りにして量産
アニマがVDBにノイズを組み合わせて表現した死の炎は、ダイナモの担当カットにも数多く登場したため、そのアセットはダイナモにも提供された。しかしダイナモでは、Houdiniのライセンスも作業者も不足していたため、エフェクトを専門としないスタッフでも手分けして量産できるように、書き割りが活用された。
▲遠景用の死の炎は、MayaのNull座標とカメラデータをAfter Effectsにインポートし、レンダリング済みの連番画像を3Dレイヤーとして配置することで表現している。近景に配置するもの、極端なパースがついたもの、前後を瓦礫の破片に挟み込まれるものなどは、3D的な整合性が必要とされるため、VDBキャッシュやASSデータを使ってMayaでレンダリングされた
▲遠景用の死の炎を配置した完成映像
▲近景用の死の炎を配置した完成映像
No.2は以上です。 No.1は以下よりご覧いただけます。
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