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『モンスターストライク THE MOVIE ルシファー 絶望の夜明け』No.1 物語を彩るアニマのHoudiniエフェクト

『モンスターストライク THE MOVIE ルシファー 絶望の夜明け』No.1 物語を彩るアニマのHoudiniエフェクト

2020年6月13日、14日にスペシャル編集版のオンライン試写会を開催し、11月6日に完全版公開となった『モンスターストライク THE MOVIE ルシファー 絶望の夜明け』。総尺120分の本作は、YouTubeシリーズからさらに磨きをかけた「モンストルック」と、長尺のバトルシーン、それを彩る豪華なエフェクトが目を惹く作品に仕上がっている。本作のCG制作を担当したアニマダイナモピクチャーズの仕事を、エフェクトにフォーカスし、全2回に分けて紹介する。(No.2は20日(水)公開)

※本記事は月刊『CGWORLD + digital video』vol. 268(2020年12月号)掲載の「第2特集 『モンスターストライク THE MOVIE ルシファー 絶望の夜明け』/Stellaと共に進化するアニマのHoudiniエフェクト」を再編集したものです。

TEXT_神山大輝 / Daiki Kamiyama(NINE GATES STUDIO)
EDIT_尾形美幸 / Miyuki Ogata(CGWORLD)

『モンスターストライク THE MOVIE ルシファー 絶望の夜明け』
監督:静野孔文/脚本:本田雅也/CGディレクター:中村友紀(アニマ)、東郷宏樹(ダイナモピクチャーズ)/助監督:山口雄大/アートディレクター:ハヤシヒロミ/美術監督:徳田俊之/音響監督:明田川 仁/音楽:横山 克/CGスーパーバイザー:釜 幸介(アニマ)、住田永司(ダイナモピクチャーズ)/制作:アニマ、ダイナモピクチャーズ/配給:イオンエンターテイメント/協力:ローソンエンタテインメント/製作:XFLAG
※ 各社の会社名、サービスおよび製品の名称は、それぞれの所有する商標または登録商標です。
©XFLAG


▲左から、CGスーパーバイザー・釜 幸介氏、エフェクトスーパーバイザー・河村公治氏、エフェクトスーパーバイザー・中村祐輔氏(以上、アニマ)
※本記事の取材は、ビデオ会議システムを使って実施しました。

チェックフローを簡略化しクオリティアップと量産を実現

アニマはYouTubeシリーズ 第3期の企画段階から参加し、今に継承される「モンストルック」を開発した。本作でも初期から参加し、全体の2/3のCG制作を担当している。本作のエフェクト制作期間は約6ヶ月、本格的な作業が始まったのは2020年の年明けからの約4ヶ月半で、4月以降はCOVID-19の影響によるリモートワークを余儀なくされた。スーパーバイザー(以下、SV)は河村公治氏と中村祐輔氏の2人、アーティストは全11人で、その中の6〜7人が主力となり、286カットのエフェクトをHoudiniで制作。エフェクトコンポジットはNukeで行い、そこから出力したPre-comp Layerをショット班がAEにインポートして仕上げた。さらにStealthWorksも協力会社として参加し、難度の高い53カットを担当。比較的難度の低いカット(煙の置き込みなど)はショット班が担当。ほかに協力会社4社がエフェクト制作に参加した。また、本作では群衆制作にもHoudiniを用いており、エフェクトチームの中に2人の群衆担当が配属された。

限られたスケジュールと膨大な物量を前に、河村氏と中村氏はクオリティラインの設定に悩んだと語った。「本来であれば、われわれSVが丁寧に指示したいところですが、今回はスピードを重視し、演出打ち合わせのビデオをアーティストに見てもらい、各々の解釈で、一番早く制作できる手法やルックを選択してもらいました」(河村氏)。ある程度の品質に仕上がっていれば、中村友紀氏(CGディレクター)と釜氏(CGSV)にチェックしてもらい、細部を詰めていくフローにしたことで、ハイクオリティなエフェクトの量産が可能となった。「シニアクラスのアーティストの中には、1人でStealthWorksと同量のカット数を上げてくれた人もいました。しかもクオリティはYouTubeシリーズからさらに進化しています」(中村氏)。なお、リモートワークの開始後は制作スピードが8割程度に落ち込んだが、すでにクオリティラインが明確になっている時期だったので深刻な影響はなかったという。

大量の爆発をASSデータのインスタンスで表現

ルシファーのダブルエナジーサークルがレシアル国の結界を破壊するシーンでは、広域にわたる大量の爆発表現が求められた。その制作手順を解説する。

▲まずはシーンの原点で高解像度の爆発を作成


▲Wedge ROPを使用し、数種類の爆発のASSデータを作成


▲先のASSデータのレンダリング画像


▲爆発を発生させたい位置にSOPでポイントを配置。このポイント上に、爆発のASSデータのインスタンスを配置。Attribute Wrangleに、フレーム、スケール、回転といった、インスタンス用の情報を入力する


▲エフェクト制作中の作業画面。上部の半球状の文様が結界で、下部の2つの円がダブルエナジーサークル。その間にポイントが散らばっている

インスタンスを活用しシミュレーションコストを削減

  • ◀ポイントの配置とインスタンスの処理のノード。爆発のASSデータのインスタンスを大量に配置するしくみにしたことで、爆発のシミュレーションコストを大幅に削減できた


▲各所で発生した爆発が連鎖し、画面全体を埋め尽くしていく様子が描かれている。ルシファーらの侵攻によって崩壊していくレシアル国の悲運を暗示する、美しくも残酷なシーンに仕上がっている。完成映像は予告の0:38あたりから視聴できる

OpenColorIOによるカラーマネジメントを採用し繊細な色調整を実現

ダブルエナジーサークルが結界を突き破るカットでは、爆発、火花、稲妻などが多数入り乱れるのに加え、ダブルエナジーサークルと結界自体も発光するため、繊細なコンポジットが求められた。そこでOpenColorIO(OCIO/カラー空間の管理と変換を行う業界標準のオープンソースライブラリ)を採用し、広い色域を扱えるようにした。

▲Houdiniの設定


▲Nukeの設定。working spaceはACEScgを選択


▲【左上】コンポジット時にOCIOをOFFにした場合/【右上】ONにした場合/【下】完成映像。【左上】は爆発やダブルエナジーサークルの色が白飛びしているが、【右上】は白飛びしていない。OCIOの導入で繊細な色調整が容易になり、ディテールのクオリティアップが実現した。本作では一部のカットでの導入に留まったが、リニアワークフローの実践における有効性が確認できたという


©XFLAG

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