>   >  原作への深い愛の下、初の3DCG&VR化に挑む『ゆるキャン△ VIRTUAL CAMP ~本栖湖編 & 麓キャンプ場編~』
原作への深い愛の下、初の3DCG&VR化に挑む『ゆるキャン△ VIRTUAL CAMP ~本栖湖編 & 麓キャンプ場編~』

原作への深い愛の下、初の3DCG&VR化に挑む『ゆるキャン△ VIRTUAL CAMP ~本栖湖編 & 麓キャンプ場編~』

<3>キャラクターに命を吹き込むモーションとエフェクト

アニメ版で培われたノウハウを取り入れる

プレイヤーの目の前にいるリンやなでしことの会話などが楽しめるのがVRゲーム化の大きな魅力。生きたキャラクターとして仕上げるためには、特に『麓キャンプ場編』のなでしこは、300以上のモーションパターン(FBXファイル数で換算)が実装された。なお、『本栖湖編』のリンは約210だが、両キャラクターの性格のちがいに加えて『麓キャンプ場編』のなでしこは犬とのやり取りもあるのに対して、リンは座った状態の演技が中心なことに起因する。膨大なモーションを限られた容量でどう実装したのか? Unityのタイムライン機能を使い、モーションやフェイシャル、音などを制御できるようにプログラム拡張したと、福田氏は説明してくれた。さらにボイスに合わせたモーションの調整も行われている。『ゆるキャン△ VR』では、プレイヤーと登場キャラクターが会話を交わすプレイも特徴であり、一緒にキャンプを楽しんでいる気持ちを高めるしかけとして機能している。プレイヤーの選択した会話に対する受け答えのモーションが丁寧に付けられているわけだ。

エフェクト表現にも『ゆるキャン△』らしさが込められている。例えば食事のイベントでは、キャラクターが美味しそうな料理を見た(口にした)とき、顔の周りにキラキラエフェクトと呼ばれる表現が加えられた。

このように開発終盤に入ってもキャラクターの表情やアニメーション、ソフトシャドウの調整等のビジュアルの完成度が着実に高められていった。ブラッシュアップの最終的な目的は、プレイヤーが自然に没入できるようにすることだ。そこをゴールにスタッフは全神経を注いだ。黒瀬氏は出来上がった作品に対し、「プレイした人に可愛いなと和んでいただけたら嬉しいです」と語る。「大変でしたけど、マルチプラットフォーム開発を完遂できて良かったです」と、増田氏も続ける。スマホ版がベースゆえの、スペックの制限を工夫して乗りこえながら、様々なハードにて展開。広いプレイヤーに『ゆるキャン△ VR』を届けることに成功したのである。

VR表示でも破綻しないモーション

キャラクターモーションの作業例

▲キャラクターと小物や犬が同時再生したり接触するモーションが多かったため、Mayaの1シーン内にUnity上の配置関係に近い状態を再現した上でモーション付けを行い、個別にモーションデータを書き出した

▲Mayaによるモーション作業の一部抜粋(上段が本栖湖編、下段が麓キャンプ場編)。「なでしこが犬に追われる場面は、Mayaでパスアニメーションさせたものを出力しています。リンが犬を撫でる場面は、VR的にも腕が 視界を妨げすぎない位置を撫でさせて もらっています」(黒瀬氏)

▲ボディリグ(左側が本栖湖編、右側が麓キャンプ場編)。同じキャラクター間でのモーションの流用が少なく、素体数も少なかったことから、比較的シンプルなものになっている


フェイシャルアニメーション作業の例

▲フェイシャルの大半はUnityで付けられている。「顔の部位ごとのパターンをClipで用意し、Timelineに配置してタイミングやブレンドを細かく調整することでアニメーションさせています」(黒瀬氏)

▲食事中など、ボイス・モーション・フェイシャルを細かく合わせる必要のある演技についてはMaya内でフェイシャルも一緒に作成してUnityに出力された

開発終盤までブラッシュアップを重ねる

▲黒瀬氏が描いた表情等のブラッシュアップ案のスケッチ。「残り約3ヶ月という、開発の後期に参加しました。タイミング的に、方向性を整えつつ仕上げていく必要があったので"場面やセリフに合う表情の把握強化""リップシンクの方向性の検討""原作により似せるための相談"、などの判断材料にとアニメ版から印象に残った表情を描き出したものになります」。このスケッチを基に、Unity内で再現テストを実施。スタッフ間で方向性をすり合わせたり、ブレンドシェイプ調整の相談が行われた。スケッチとして具体化することで、作業中にイメージがブレた際のリセットにも役立ったそうだ

▲【スケッチ】を基にUnityで再現テストを行なったもの。「リンについてはキャラクターに合う見た目のパターンは出揃っており、フェイシャル作業も進められていましたが、デフォルメの表情がなかったため和んでゆるめな雰囲気の目の追加をお願いしたり、少し愛想が良すぎる印象になっていたので、ボイスに合わせつつ"なでしこ相手にデレすぎず、でも向き合ってみて冷たく感じない"という印象に整えていきました」(黒瀬氏)。一方のなでしこは、リンに比べると形状の変化幅が極端で表情パターンも多く、見た目を破綻させずに印象も散らからないよう方向性の収拾をつける必要があったという。そこでテストした中からキャラクター性を強く感じる表情に絞って全体を安定させつつ、ところどころアクセントになる表情を加えるという要領でバランスが整えられた

アニメ版のエッセンスが込められたエフェクト



  • ▲麓キャンプ場編の焚き火エフェクト。アニメ版の焚き火表現の特徴がしっかりと込められている



  • ▲【画像左】の作業UI。Unityのパーティクルシステムを使用


スタッフ間で「キラキラエフェクト」と呼ばれたアニメ版に見られる表情エフェクトを再現したもの

▲本栖湖編のリンに出るキラキラエフェクト

▲麓キャンプ場編のなでしこに出るキラキラエフェクト。ビルボードであることがわかるようにカメラビューをアオリにしている

▲キラキラエフェクト作業UI。「キラキラエフェクトにもShurikenのパーティクルを使用しています。VR空間では様々な角度から見られるためビルボード設定をONにしつつ、ParticleSystemのRenderタブにあるAllow Rollのチェックを外してプレイヤーカメラと一緒にエフェクトがロール回転してしまわないように設定することで、アニメ版のキラキラを再現しています」(山田氏)


ポストエフェクトの例

▲ポストエフェクトOFF

▲ポストエフェクトON。「本作ではSteam版のみポストプロセスを適用しています。UnityのPost-Process VolumeのBloomとColorGradingを主に使用しました」(増田氏)。図は、麓キャンプ場編のラストシーンである朝日が昇るシーンから日の出後のもの。ポストエフェクトによって、空気感が効果的に高められた



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