STUDIO4℃ 流<3>
クオリティと物量の両立
冒頭の攻城戦のシーンでは無数の兵士が登場するが、群集シミュレーションを使わずに、After Effects によるコンポジットワークによって、数万人の兵士を思わせる物量を描き出しているという。
「見せたいところはしっかりと作り込み、それ以外は臨機応変に作成するという作り方を行なっているので、実は手前の 30 体だけは丁寧にアニメーション付けを行い、残りは AE 上でレイヤーを増殖するなどして群集を表現しています。遠景などは 3D モデルではなく、走る兵士のテクスチャを板に貼って数を増やしたりもしています。さらに血飛沫のようなエフェクトは実写素材を使用することでパーティクルなどシミュレーションに掛かる時間を極力削減しています」と草木氏。
STUDIO4℃ では実写を素材の一部に使うこともあるが、本作でも雨で跳ねる水滴を撮影したり、タバコの煙を撮影して合成するなどしているという。大量の CG カットをクオリティを維持したまま少人数で仕上げるためには、あらゆる素材を活用することが重要なのだ。
3D レイアウトとしてのカットプラン(美術発注のベースとなる)
CG アニメーション作成中のデータ
完成カット
3D でレイアウトを作成し、美術班へ素材の描き分け指示やアニメーションの指示を記入している。このシーンではモブを 20 階層くらいにレイヤー(シーン)を分けて作業をしている。最終的な合成素材は影やテクスチャ等も含め 50 種類以上に達したという
STUDIO4℃ 流<4>
CGI 監督による"画面設計"
通常アニメ制作の現場では、コンポジットワークを統括する撮影監督を立てているが、STUDIO4℃ では CGI ディレクターが兼任している。
「このスタジオでは"画面設計"と呼ばれているのですが、各カットごとに Photoshop 上でキャラや背景、煙やフレアなどのエフェクト素材を合成し、カラーフィルタなどで作品の全体的な色味を決める作業を CGI 監督が行なっています」(草木氏)。
画面設計を行うことでセルと背景が馴染み画面に統一感が生まれ、全てのカットを CGI ディレクターが設計することでカットごとのバラツキも抑えている。この設計データを AE で読み込み、セルや CG 素材を連番素材に差し替えるだけで、ほぼ撮影作業は完了するという。
「アニメ現場は全ての工程が分業制となっているので、最終的な画を把握している人が少ないですし、各部署に修正指示を出すのも大変なのですが、CGI 監督がそれらを吸収してくれるので助かりますね」(窪岡監督)。
効率的に良質な画づくりを実践できるのは STUDIO4℃ 独自の"画面設計"の賜物だ。
元素材(フル CG)
画面設計(草木 CGI ディレクター作成)
完成カット
このカットでは光の方向(床と壁からの2点)や遠近感などに注意して設計し、CG キャラと背景を馴染ませるためにフィルタ処理などを施している。明るい屋外(前のカット)から暗い室内にいきなり切り替わるため、目(レンズ)が対応できずに露出アンダー気味になっているといったイメージで画面設計が行われた
TEXT_村上 浩(夢幻 PICTURES)
短期連載スタート!
2012 年2月4日(土)全国ロードショーとなる映画『ベルセルク 黄金時代篇Ⅰ 覇王の卵』。
3DCG をフル活用して制作に挑む STUDIO4℃ に密着した、短期連載が月刊誌 CGWORLD 161 号〜掲載!
連載第一回を掲載の 161 号は 12 月 10 日(土)発売、左の表紙が目印です。
続く 162 号は新年1月 10 日(火)発売!
『ベルセルク』から目が離せません。
ご期待ください!!
続きは、月刊誌で!
CGWORLD 161 号に関する詳細は下記リンクへ
CGWORLD 2012 年1月号 vol.161