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ドイツ&ベルギーVFXスタジオ事情~PIXOMOND, RISE & Walking The Dog

ドイツ&ベルギーVFXスタジオ事情~PIXOMOND, RISE & Walking The Dog

PIXOMONDO もうひとつの国内主要拠点、シュトゥットガルト

数日後、今度は同じドイツ国内にある PIXOMONDO のシュトゥットガルト・スタジオを訪問。こちらでコンポジット・スーパーバイザーとして働いているヨルン・グロスハンズ/Jorn Groshans 氏にも話を伺うことができた。そこで運よく見ることができたのが、現在進行形(※2010年11月上旬時点)で制作が進んでいたドイツ国内向け長編ドラマ 『Hindenburg』 の最終仕上げである。と言うのも、グロスハンズ氏とスクリーニングルームでデモリールを観ていた途中に、同プロジェクトにアサインされているコンポジット・アーティストが、彼にチェックをしてもらおうとやって来たのだ。

Jorn Groshans 氏

シュトゥットガルト・スタジオでインタビューに応じてくれた、ヨルン・グロスハンズ氏(コンポジット・スーパーバイザー)

それは、実写プレートがないフル CG のショットだったのだが、そのクオリティの高さに驚かされた。せっかくの機会だったので、そのアーティストにも話を聞いてみたところ、3DCG工程はモデリングのみ Maya で、その他のアニメーションやエフェクト、レンダリング作業は 3ds Max を使用。作成したデータは OpenEXR フォーマットで出力し、それらを NUKE でコンポジットしているとのことであった。OpenEXR は用いているものの、マルチレイヤーではなく、各レンダーパスをそれぞれ連番として出力しているそうだ。約50レイヤーで構成されているその NodeGraph はそれだけで、ある意味芸術的に複雑なものであったが、まったく混乱することなく、修正を加えたいノードオペレーターにアクセスできると話してくれたが、これはやはり複数のチャンネルを大量に扱うことに長けている NUKE の強みではないかと思う。

また、レンダーパスにはシャドーやスペキュラ、リフレクション等の各種要素や RGB のカラーマット等が見受けられたが、さらには UV チャンネルを出力して STMap (コンポジット上で後からテクスチャを操作するための NUKE のノードオペレータ)を用いて、巧みに調整を行なっているのが印象的であった。さらに、炎や飛沫などは撮影素材のアーカイブを用いて、NUKE 上で、上手く変形させて画のクオリティをグッと上げていた。これら、アーカイブも PIXOMONDO の各スタジオで共有され、どこのスタジオでも同じような条件で出来るようになっているという。


『Hindenburg』トレイラー。1937年に実際に起きた「ヒンデンブルグ号爆発事故」を題材にした特別ドラマである

ちなみに、著者が見たショットのエフェクトの9割が、これら実写素材のアーカイブを使っているとのことで、撮影前に緻密にプリビズ等を行うことで、最終ルックで必要な素材等をシッカリと押さえているのだという。こうした事前の計画こそが、スーパーバイザーとしての大きな役割のひとつと言えよう。余談だが、PIXOMONDO は中国にもスタジオがあり、この「緻密さ」という点においては「アジア人は、非常に素晴らしいよ」とも語っていた。
今回、ドイツ国内にある PIXOMONDO の主要スタジオ2施設を訪問し、そのグローバルな制作パイプラインを目の当たりにしたわけだが、彼らがハリウッドのみならず、世界中の長編映画の制作にドンドン食い込んできている理由が何となくわかった気がした。

PIXOMONDO Stuttgart オフィス

PIXOMONDO シュツットガルト・スタジオにて

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