<2>イラストの再現が重視されたキャラクター
キャラクターの3Dモデルに対しては、最もプライオリティが高いイラストの再現を実現するために、シェーディングについては、ポリゴンの法線を整えた上でノーマルにベイクし、キャラクターだけに適用されるライトを用意して、常に一定方向に陰が出るようにしている。シェーディング階調は、対象部位に応じたカラーが与えられたグラデーションテクスチャを参照して、滑らかで柔らかい陰階調を持たせている。アウトラインは、データ持ちで、スケーリングしたポリゴンモデルを反転表示する背面法が描かれている。ただし、アウトラインカラーは、一律で黒一色ということはなく、近年のアニメ同様にカラー調整がなされている。
加えて、キャラクターのシルエットの強調には、キャラのキワを立たせるリム効果を持たせている。リム効果について特段の言及はなかったが、UEマテリアルのフレネルマテリアルを活用して実現していると思われる。さらに本作のキャラクターを、よりアニメ調イラストらしく装うだめに、作画アニメと同様に眉毛をヘアの手前に来るように描画している。常にZ軸の手前に描けば良いというわけにはいかないため、透過設定の眉毛部分を描くために、他の不透明オブジェクトとの前後関係を比較するようにしたり、髪の毛の外側に描画されないためにヘアにカスタム深度を設定して、適切に表示されるようしている。加えて、キャラクターがZ軸奥向きの場合に備えて、眉毛ポリゴンはバックフェイスカリングしている。
既存のセル調を超えたリッチなビジュアルという意味では、キャラクターが完全に浮いてしまって違和感が生じなないように、GIの間接光キャッシュから環境の色味を拾って、キャラクターに対してほのかに環境からの照り返りが乗るようにして背景と馴染ませていることを挙げていた。アニメにおける間接光の表現は、例えば、メカに対する爆発光の照り返りのように、主光源とは別に強い光源が一時的に発生して、その光源の影響を受けるといった表現が典型的だろう。こういった記号化された光源変化を強調するために、反射してやってくる間接光は平時には描かない(反射光の計算をしない)ことも多い。アニメ調のゲームにおいても、これは同様で、計算コストを低減するにも都合が良い。ここにさりげなくUE4が得意とするGIを効かせて、従来のシリーズ作品からの進化としている。
その一方で、キャラクターに対して、過度にランドスケープからの色の照り返りが乗ったり、背景環境ごとの差異が出ないように、背景モデルのテクスチャ輝度差を10%未満に抑えていたり、あらかじめ計算されたキャラクターに対する間接光源からの光源影響を格納するPLVに対して、適切なカラーや光量が格納されるように細心の注意を払っていることが明かされていた。
キャラクターについては、手塚氏より丁寧に解説が行われた。上記資料スライドでは少し見づらいが、間接光キャッシュを使用して、背景からキャラクターの脚部にほんのりと照り返りの光が乗っているのが確認できた
総じて目新しい技法はないが、UE4の描画エンジンが有する機能を変化させるパラメータをコントロールして、丁寧にキャラクターを表現している。アーティストの作業量的には、意図した画になるように法線そのものやポリゴンを綺麗に調整する作業は手間がかかり、必ずしも安くないと思われるが、タムソフトでは、UE4の基本機能を最大限活用して、プログラマの技能に頼ることなくアーティストだけで画づくりを実現するということを、予算と納期を守るために重視しているということだろう。