>   >  映画『電人ザボーガー』〜 CG と造形の絶妙な融合により、昭和のロボットヒーローが現代にリブート 〜
映画『電人ザボーガー』〜 CG と造形の絶妙な融合により、昭和のロボットヒーローが現代にリブート 〜

映画『電人ザボーガー』〜 CG と造形の絶妙な融合により、昭和のロボットヒーローが現代にリブート 〜

TOPIC 1:3DCG と造形の絶妙なコラボレーション

本作に登場するザボーガーを始めとしたキャラクターには、スタジオ・バックホーンが Autodesk Maya 2010 で作成したフル 3D モデルと、特殊造形を担当した西村映造が作成した着ぐるみをそれぞれ用意。撮影前に VFX、造形、アクションチームで段取りを決めて、劇中で適宜切り替える方法で制作が進められた。

「変形ショットのような実写で撮れない部分は当然 CG で作成しますが、変形の前後は着ぐるみで演技されています。それをトレースして変形のところをデジタルダブルで切り替えられるように、アクションでもその分、わざと間を開けている んです。予算上モーションキャプチャは使えないため、モーション付けは着ぐるみアクションのロトスコープで対応しました」(鹿角氏)。

ザボーガーのデザインに関しては、ガレージキットメーカー J-FACTORY の田中 淳氏にザボーガーのリファインも含めて発注された。そして送られてきた完成ミニチュアモデルを参考に、西村映造でまず着ぐるみとバイクを制作。その後、実物の造形物から 3D へのモデリングが行われている。こうしたワークフローが採られた理由として、造形物はスーツアクターが実際に合わせてみて、造形的に無理のあるところがあれば変更しなければならないからだ。変更後の最終的な造形物合わせでモデリングを行えば、CG と造形の誤差を未然に防ぐことができる。

ザボーガーモデル(ロボット形態)

電人ザボーガー

(左)ロボット型の造形ザボーガー、(右)造形ストロングザボーガー。ミニチュアモデルを参考にして西村映造が制作した造形物をベースに、ザボーガーをモデリングしたという

電人ザボーガー

Maya で作成した CG ザボーガーとワイヤーフレーム

電人ザボーガー

Maya でレンダリングされた CG ザボーガー

ザボーガーモデル(バイク形態)

電人ザボーガー

西村映造が制作したバイク型の造形ザボーガー(左)とバイク型の造形ストロングザボーガー(右)

電人ザボーガー

Maya で作成したバイク型 CG ザボーガーとワイヤーフレーム

電人ザボーガー

Maya でレンダリングされたバイク型 CG ザボーガー

ただし、劇中の後半部に登場するパラリンザボーガーに関しては造形物がないため、ミニチュアモデルから直接 3DCG モデルを起こしていった。
「非常に精巧にできたモデルでパーツも取り外せることができたので、モデリングはやりやすかったですね。もちろん、CG 上で都合良く改変している部分もあるわけですが」と、CGディレクターを務めた水石 徹氏が語るように、細かなパーツや背面のディティールなど立体物として確認できるため柔軟にモデルを制作できたそうだ。

電人ザボーガー 電人ザボーガー

J-FACTORY によって作成された後半に登場するとパラリンザボーガーのミニチュアモデル。完成品と着色前のパーツをそれぞれもらってリファレンスにしながら、3D モデルを作成

ザボーガーのセットアップ

ザボーガーの最初のテーマでもあった "ワンカット変形" について水石氏は次のように説明する。「時間的制約のため作りながらの試行錯誤でした。まずきちんとした変形はできないという前提があったので、実写と CG の切り替えをどこで入れるか考えました。例えば、ロボットは必ずT字のポーズからタイヤが出てくるという定番の動きがあったので、ある程度まではロボット形態で変形が始まったら 3D 上でパーツを入れ替えています。開くだけのパーツを制作して、開いて閉じたらバイクのパーツになっているだとか。完全にバイクとロボットのパーツは別個にして、あとは動かしながら似たような形になるように変形やスケールを掛けます。動きがおかしくならないように気をつけていく感じですね」。

電人ザボーガー 電人ザボーガー 電人ザボーガー 電人ザボーガー

CG 制作は Maya 2010 で行われた。バイクとロボットのオブジェクトを分け、それぞれに " 変形 " を考慮したリグを作成。変形時にオブジェクトを入れ替えている

Trax エディタによるザボーガーの変形

劇中ではザボーガーがロボットからバイク、バイクからロボットへとテンポよく変形していくシーンが随所に見られるが、これらの調整は Maya の Trax エディタ でクリップ化することで対応された。
「2 種類の変形はクリップを逆さにして、個別にタイミングを調整しています。変形途中は全て Trax エディタで同じものを使い回して、ロボット形態になったときのアクションやポーズからそれぞれのアニメーションを付けています」(水石氏)。

電人ザボーガー 電人ザボーガー

Maya の Trax エディタでパーツごとに変形のアニメーションをクリップ化し、タイミング調整できるようにしている。パーツごとに切り替えながら、変形アニメーションは制作された




鹿角氏が前述した無駄に変形するアニメーション。"なんかスゴイ" と思わせる仕掛けが巧みに施されている。「どうやって面白くインパクトのあるものにするかが最大のテーマであり重要でした。整合性が取れてないけど、面白くてインパクトがあるからいいじゃないかっていうのはマンガやアニメの感覚に近いですね」(鹿角氏)

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