>   >  映画『電人ザボーガー』〜 CG と造形の絶妙な融合により、昭和のロボットヒーローが現代にリブート 〜
映画『電人ザボーガー』〜 CG と造形の絶妙な融合により、昭和のロボットヒーローが現代にリブート 〜

映画『電人ザボーガー』〜 CG と造形の絶妙な融合により、昭和のロボットヒーローが現代にリブート 〜

TOPIC 3:造形を引き立てるコンポジットワーク

ブルダンガーの腕
本作における CG と造形のコラボレーションが効果的に作用している代表的なシーンは、トラックロボのブルガンダーが登場するシーンだろう。オリジナル作品でも抜群の存在感を示したブルガンダーだが、実は予算の関係で今回はカットとなる予定だった。しかし、オリジナルファンの熱望により、一転して登場させることになったという。

コンポジットには After Effects 6.5、トラッキングには boujou が使用されたのだが、ブルガンダーは顔の部分は造形で 2 本の腕が 3DCG になっているため、トラッキングにはとても苦労したようだ。また、前述したように第 1 部はプリビズがないため、最終的な画で腕が全てフレームに収まるようなカメラアングルを鹿角氏が現場に張り付いて監修したという。

『電人ザボーガー』 『電人ザボーガー』 『電人ザボーガー』 『電人ザボーガー』

<1> 元の実写素材、<2> CGで作成した腕、<3> 頭部のマスク、<4> 最終コンポジット。質感は顔の造形部分に合わせて調整された。第 1 部はアナログ造形を大事にして、そこに CG を寄り添わせる方法を追求したそうだ

『電人ザボーガー』

boujou を使用して頭部に合わせてトラッキングを取り、それに腕モデルを Maya 上で配置して作成。配置用ガイドには別シーン用に作成されたミニブルガンダーの頭部モデルを使用

バイクチェイスシーンのコンポジット
巨大化した大門の娘、AKIKO(佐津川愛美)を遠景に繰り広げられる、大門と秋月の激しいバイクチェイスシーンにおいても、トラッキングが上手く取れず何度もリテイクが入ったという。コンポジットでは AE 上でバイクチェイス撮影素材のマスクを切り、CG で作成したビルを遠景に配置。そこに FIX で撮影した実写の AKIKO と炎を追加している。途中で大門のバイクに向かって飛んでくる破片やミサイルなどを合わせる作業では、かなりの手間と時間を要したとのこと。

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AKIKOは頭部の変形用に造形のありなしで撮影して、頭部変形時に素材入れ替えている<1>、<2>。1 番手前にバイクのグリーンバック素材 <3>、次に CG ビルを配置 <4>。さらに上部にはビームを <5>奥の AKIKO の足下には火災の素材を配置して <6>、合成された最終画像 <7>

スタジオ・バックホーンのように、常に大量のカットを制作している現場では、撮影時のちょっとした判断がその後の作業効率とクオリティを大きく左右することも多々ある。そのため、監督との掛け合いなども 1 つの重要なワークフローと言えよう。
「井口監督はこちらからダメ出しすると、それに対しての切り返しアイデアを考えるのがすごく上手いんですよ。だから現場で何かトラブルが発生しても、直ぐに面白い代案を考えてくれる。結局、お金と時間を有効に使うために必要なことは、現場での素早い判断だと思いますね。プラン通りに撮影が進まなかったとしても、その代わりになるアイデアを撮ってあるだけで、作品の完成度は変わってきますから」(鹿角氏)。

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