>   >  映画『電人ザボーガー』〜 CG と造形の絶妙な融合により、昭和のロボットヒーローが現代にリブート 〜
映画『電人ザボーガー』〜 CG と造形の絶妙な融合により、昭和のロボットヒーローが現代にリブート 〜

映画『電人ザボーガー』〜 CG と造形の絶妙な融合により、昭和のロボットヒーローが現代にリブート 〜

TOPIC 4:Autodesk Stitcher で効率的に実現〜大胆なカメラワーク

劇後半では、"いかにしてキャラクターの大きさを表現するのか" が大きなテーマだった。最後にご紹介するのは本作で最も苦労したという、巨大化した AKIKO の胸部から地上を見下ろす一連のショットだ。撮影や照明のセッティング上、カメラを上げ下げするとその日の予定カット数を撮りきれなくなってしまうため、ここでは 1 日だけクレーンとリモートヘッドシステムを導入して大がかりな撮影が行われた。このシーケンスでは、元々ダイナミックなショットを撮るプランはプリビズ段階ではなかったという。

「プリビスを作りながら地上や上空からの画はあるけれど、全体を見渡せるような高さを感じさせるショットがないなとずっと思っていました。そして現場に行ってみたら、撮影部がかなりしっかりしたクレーンとリモートヘッドを借りてきていたので、これを使用してワンショットで撮れば高さが出せるのではと思い、その場で提案して撮影したわけです」(鹿角氏)。


トラッキングでは、ぶら下がっている役者をワイヤーで吊っているので、ワイヤーがどうしてもキャラクターにかぶってしまう。また、ダイナミックではあるが、スピードはじっくり移動するためそれらが余計に際立つことから、本シーンのバレ消しには特に気を使ったそうだ

また、真下に広がる街の背景は現場で撮影されたものではなく、VFX スタッフが東京タワーなどに登って撮影した写真を使用しているとのこと。ただしパースが破綻しないように次のようなユニークな手法が採られている。
「まず Autodesk Stitcher という画像の貼り合わせが行える(=スティッチ)ソフトを使い、大きめに球体マッピング用素材を作成します。それを Maya 上で球体に貼り付けることで、ハイディテールと大胆なカメラワークを両立させました。カメラも基本的に 3D 上で付けていますがカメラワークがそれほど激しくないところであれば、2D 上で追っかけています」という水石氏の解説通り、Maya の球体マップを活用することで、カメラを上かた下へと大きく振っても破綻のないパースペクティブを生み出すことに成功した。

『電人ザボーガー』 『電人ザボーガー』 『電人ザボーガー』

街の背景画像には VFX チームが独自に撮影したスチールを用意。ほぼ真俯瞰まで入るカットだったため、地平線からできるだけ俯瞰に入れるように Stitcher を使用して大パノラマの素材を作成する

『電人ザボーガー』 『電人ザボーガー』

Maya 上でトラッキングデータをベースに CG の AKIKO を配置。画像がマッピングされた球体の位置を、見た目が良くなるまで調整しながらカメラの動きに対応させた


CG の AKIKO と球体マップの背景が合成された圧巻の完成動画。「カメラが180度回っているため、リモートヘッドを操作するカメラマンも最後の場面はモニタのぞけないので、感覚でやっています」(鹿角氏)

このようにワンショットで撮られた実写素材と、Stitcher と Maya で作成された背景を合成した本 VFX 。巨大 AKIKO のサイズや、高い場所でアクションが展開していたことが視聴者にもよく分かる仕上がりとなっている。

「結局、外連味(けれんみ)をどう出していくのかが重要なわけです。僕らはエンターテインメントの仕事をやっているわけであり、正確なシミュレーションが目的ではありません。外連味というものは、やはり人間の感覚からしか生まれないので、それを効果的に生み出すためには色々と "嘘" をつかないといけない。データ的に正確なだけではフォトリアルかもしれませんが、外連味は出せないのです」(鹿角氏)。

オリジナル版ザボーガーの面白さは、「荒唐無稽だけど、何かインパクトがあるところ」と感じているファンも多いのではないだろうか。本作ではこうしたオジリナルのエッセンスを適確に捉えつつ、現代の VFX を上手く融合させることで新たなビジュアルへと昇華させることに成功した。さらに言えば、ハリウッドに比べて桁数がいくつか少ない予算だとしても、井口組が実践する "しっかりとしたコンセプトと創意工夫" によって、大規模予算の映画を凌駕するエンターテインメントを生み出すすることができるのだ。
新たに蘇った『電人ザボーガー』は、ぜひご覧頂きたい昨今のリメイク作品に食傷気味の方やオリジナル版を愛する方をはじめ、全ての人に自信を持ってお薦めする傑作である。ちなみに、本作のエンドロールでは " オリジナル版 電人ザボーガー " のシーンが流れるので、ぜひ本編と比べてみて、その再現度をチェックしてもらいたい。

TEXT_倉下貴弘( studio RG
PHOTO_弘田 充

『電人ザボーガー』VFX中核スタッフ

メインスタッフ

左から、
鹿角剛司氏(VFX スーパーバイザー)
水石 徹氏(CG ディレクター)
以上、スタジオ・バックホーン

※鹿角氏が手にするカップは、テキサスの映画祭「ファンタスティック・フェスト」で井口監督が監督賞を受賞したときに頂いたものだという(※クリックで拡大)。ファンタスティック・フェストは、スポンサーが地元のビール会社とデルなので、受賞者はステージに上がってカップにビールを注いで、一気飲みするという慣行があるそうだ。よってトロフィーではなくビールジョッキになっている

『電人ザボーガー』

2012.3.28 Blu-ray & DVD 発売!

あきらめるな、立ち上がれ! 板尾創路主演で贈る、壮大な特撮オペラ! 空前のヒット映画『電人ザボーガー』Blu-ray & DVDシリーズがいよいよ登場!

Blu-ray『電人ザボーガー』スペシャルエディション(※デジパック仕様、豪華外箱付き)

【収録内容】<DISC 1>『電人ザボーガー』本編/映像特典:予告編3type/オーディオコメンタリー付き『電人ザボーガー』メイキング映像/スピンオフショートムービー「がんばれ!ザボーガー」全13話 【封入特典】『電人ザボーガー』オリジナル・サウンドトラック/『電人ザボーガー』劇場パンフレット縮小版/サントラCDライナーノーツ付ブックレット

収録時間:本編114分+特典映像100分(予定)
品番:KIXF-90067
価格:7,140円

『電人ザボーガー』公式サイト

特集