HIKEグループで3DCGアニメーション制作を手がけるしいたけデジタルが、「Infinity1(インフィニティワン)」に社名変更。アニメ事業拡大を見据え、現況と展望を語る
1998年に設立されてから、3DCG特化型で数多くのアニメタイトルに関わってきたCGプロダクション・しいたけデジタル。2024年1月にアニメスタジオの100studioを擁するHIKEの子会社となった同スタジオは、2026年3月に「Infinity1(インフィニティワン)」へと社名変更を果たし、リブランディングを行なった。
今回の社名変更の背景やリブランディングのねらいについて、HIKEおよびInfinity1のメンバーに尋ねた。
Infinity1と100studioの歩み
堀口広太郎氏
株式会社HIKE 執行役員
アニメ制作本部 本部長 100studio代表
株式会社Infinity1 代表取締役
――まずは、2024年にInfinity1(当時はしいたけデジタル)がHIKEグループに加わった経緯から伺えますか?
堀口広太郎氏(以下、堀口):宮武さん(Infinity1取締役・宮武徹夫氏)をはじめとした旧しいたけデジタルの皆さんが、四半世紀に渡って培われてきた3DCG制作の知見をHIKEグループおよび100studioに取り入れたいと思ったのが、一番大きなきっかけです。
――子会社化から2年が経ちますが、その間に手掛けられた作品や制作はいかがでしたか?
堀口:子会社化以前から『この世界は不完全すぎる』(2024)や『数分間のエールを』(2024)でご一緒していたのですが、Infinity1がグループ内のスタジオとして本格的に制作に加わったのは『中禅寺先生物怪講義録 先生が謎を解いてしまうから。』(2025)からだったと思います。他に手がけていたタイトルと並行しつつ、徐々にアニメーション、モデリング、レイアウトと協業部分を拡大していきました。最もしっかりとした体制で組んだのが、今年の7月に放送を開始する『BLACK TORCH』(2026)になります。
――近年の作品になるほど、Infinity1の手がけるウェイトが上がっているということですね。
堀口:はい、『数分間のエールを』ではモデラー3名と制作進行1名の4名で参加してもらったのですが、『BLACK TORCH』ではモデラー4名、アニメーター2名、3Dレイアウトアーティスト2名、制作進行3名の延べ11名での参加になっています。
――そんな2年間の協働を経て、しいたけデジタルはInfinity1へと社名を変更することになりましたが、きっかけは何だったのでしょうか?
堀口:最大の目的は、各スタジオの役割の明確化です。これまで旧しいたけデジタルは様々な形でアニメの3DCG制作を請け負ってきましたが、これからの作品の元請けの制作を担当する100studioとの機能や役割の分担を明確に打ち出したかった。そのためのリブランディングです。また未発表ですが100studioとの共同制作タイトルも予定しています。
――スタジオ同士でのスタッフの皆さんの異動や、部署の統合なども行われていくのでしょうか?
堀口:いまのところ、それぞれのスタッフの所属自体を変えることまでは考えていないです。あくまでもそれぞれのチームがあり、それぞれが異なる専門性を持っていて、プロジェクトに合わせて連携していくということになるかと思います。
――「しいたけデジタル」から「Infinity1」へとかなり劇的な社名変更をされました。新社名の由来は何だったのでしょう?
堀口:新社名は主に取締役の宮武さんにリードしてもらい決定しました。「100」studioと対になるイメージで、その逆の001に見える「∞1」。00の部分をもじって、「∞1(インフィニティワン)」ですね。0と1から成るデジタルの世界を創るスタジオであることや、25年以上やってきた会社の新しい1を始めるための社名であることなど、様々な意味が込められています。ブランドロゴやホームページのデザインなどはHIKEで手がけたのですが、Infinity1のメンバーにも気に入ってもらえているそうで、よかったです。
――今後のInfinity1とHIKEグループの展望についてお聞かせください。
堀口:Infinity1と制作している『BLACK TORCH』『朱色の仮面』が今年放送予定に控え、さらに未発表作品の制作も進めています。HIKEではグループの拡張を進めるとともに、より一層コンテンツ制作へ注力し、世界に向けて作品をお届けしていきたいと考えています。
Infinity1の現在地、強みを育てるスタジオづくり
宮武徹夫氏
株式会社Infinity1 取締役
菅野高明氏
株式会社Infinity1 スーパーバイザー
こうけつかずこ氏
株式会社Infinity1 スーパーバイザー
――Infinity1の強みや得意分野について教えてください。
菅野高明氏(以下、菅野):今まで手掛けてきた作品は、先ほど挙がった『この世界は不完全すぎる』『数分間のエールを』、さらには『ブラッククローバー 魔法帝の剣』など、2DアニメとのハイブリッドもしくはセルルックCG作品が多かったので、そうしたタイプの作品やキャラクターアニメーション制作には強みを持っています。
こうけつかずこ氏(以下、こうけつ):可愛らしい女の子が出てくる作品や日常を描くような作品も得意ですね。
――そうしたアニメ作品でCGを手がける際のこだわりなどはありますか?
こうけつ:まずは「作画の方がよかった」と言われないようにすることですね。3Dは物量を簡単に増やせる一方で、そこにランダム性やばらつきがないと単調に見えてしまいがちなので、形や動きをたくさん用意したり、作画に負けないような画づくりをするようにしています。あとはとにかく、作品に興味を持つこと。
菅野:こうけつさんは、Infinity1のスタッフ向けに「3分でわかる〇〇」といった講演を開いて、これから手がける作品を解説してくれますからね。そのおかげで、スタッフの間で作品に対する共通認識が形成できます。
こうけつ:やっぱり、愛があるのが一番いいと思うんですよ。飛行機のCGを作るなら物理法則の上で翼が空気に乗ることを考えた方がいいし、アリのCGを作るなら道端でアリをじっくり観察した方がいい。もちろん、集団制作だからこそリテイクで一定のクオリティに収めていくことはできるんですけど、愛のないミスマッチは起きない方がいいです。これは、キャラクターモノを作るなら尚更ですよね。3Dのキャラクターモデルはアオリや俯瞰に弱いので、ただ置くだけだと可愛くなくなってしまうこともある。正しく違和感を覚えて、どうすれば可愛くなるか画面がよくなるか気を配るべきだと思います。
――先の堀口さんのお話にもあったように、Infinity1はHIKEグループの中で3DCG特化型スタジオという位置づけになっていくと思いますが、スタジオ間の連携についてはどうなっていくのでしょうか?
菅野:2年前にグループにジョインしてからこれまで、従来のウチのやり方を尊重してもらってきました。ある程度能動的に作品制作に向き合っていく社風をこの先も維持出来たら、と考えていますね。ただ、グループ内での人材の交流はまだまだこれからなので、顔を合わせる機会を増やしながら団結力を強めていきたいです。
こうけつ:他の組織との交わりがないと、皆が似たり寄ったりになっていく部分があるので、そこにながれや広がりをつくっていきたいですね。みんなで同じような案件を同じようなスキルやツールでこなしてきて、良くも悪くも変わり映えしてこなかった部分があるのですが、100studioとご一緒することで劇的に変わった感覚があるんです。例えば、弊社にはBlenderを扱える人間がほぼいなかったのですが、100studioの方に教えてもらう機会が生まれたり、逆にInfinity1のメンバーが100studioのMayaユーザーの方向けに3ds Maxの講習会を行ったりすることがありました。こうした技術的な交流は、より深まっていくのかなと期待しています。
菅野:100studioは作品の立ち上げなども行なっているので、Infinity1のクリエイターにも好きな作品に関わるチャンスが増えるといいなと思いますね。
こうけつ:この作品のアニメ化とってきてください、とか言えるといいですよね!
――Infinity1としての目標や今後の展望などはありますか?
宮武徹夫氏(以下、宮武):今は3DCGの元請をやっていますが、いずれは作品全体を回せるスタジオを目指したいですね。僕の目算だと作品全体を回すのには50人は必要なので、もっと人を増やさないといけないな、と思っています。ただ、人を増やすためにはいい仕事をしていかないといけないので、そこは頑張っていきたいところです。
――いまInfinity1で求められている人物像について教えてください。
宮武:ツールでいうとBlenderとUnreal Engineが使える人、AIに造詣の深い人に来てほしいです。あと、これからはエフェクトにも力を入れていきたいので、3ds MaxのプラグインであるtyFlowが使える人が来てくれるとすごくありがたいです。
こうけつ:多様なスキルと経験を持った人に来てほしいですね。私はこれまで長らく社内で教える側をやってきたので、そろそろ教わる側に回りたいので(笑)。
菅野:個人的には、業界経験のあるシニアの方やプロジェクトリーダーをやりたい野心的な方は特に大歓迎って感じですね。
宮武:正直にいうと、両輪必要ですよね。若くてフレッシュな力も欲しいし、他社でしっかり技術を身に着けた中途の方も欲しい。職種としてはモデラー、アニメーター、制作管理のマネージャーあたりになってくるんですが、その職種のなかで幅広い層に来てもらえたら嬉しいです。
求人情報
<積極採用中!>
・3DCGモデラー
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TEXT__草野淳
EDIT_Mana Okubo(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充/Mitsuru Hirota