同業他社への納入実績を背景とする、富士通の的を射た提案
萩原氏がリプレイスを検討していた当時、同社のCGセクションは20台のレンダリングサーバを所有していた。そのうちの半数は導入から5年が経過したもので、案件によってはレンダリングサーバをレンタルする必要があり、レンタル代金・セットアップの手間・故障時の対応など、不安要素が多々あったという。
「これまでは高さ1Uのシャーシに1ノードを搭載するタイプのサーバでした。2月のスタジオ移転でラックスペースに余裕はできたものの、今後も定期的にサーバを増強する可能性を考慮すると、なるべく省スペースのものを選んだ方が得策だろうと思いました。また、新スタジオは100V電源にしか対応しておらず、この点も考慮する必要がありました」。
そこで萩原氏は、選択肢を"2U4ノードタイプ"と"100V電源対応"に絞り、サーバの選定を行なった。富士通からの導入提案を受けたのは、ちょうどこのタイミングだったという。
いわゆる"飛び込み営業"での提案だったが、富士通のスタッフによるサポート体制や他メーカーとの相違点などの説明は的を射ており、好印象だったと萩原氏はふり返る。
「聞けば同業他社への納入実績があるそうで、確かにCG・映像業界の事情をよく理解していると感じました」。
このとき、富士通からはワークステーションタイプ、サーバタイプの両方を含む、様々なプランが提案された。そのなかから萩原氏が選んだのが、「FUJITSU Server PRIMERGY CX400 M1」だった。本機は高さ2Uのシャーシに最大4台のサーバノードを格納できる2U4ノードタイプの高密度サーバで、100V電源にも対応している。当初から萩原氏が掲げていた条件をすべて満たす製品だった。
「加えて、サーバラックへの着脱・配線が簡単で、メンテナンスしやすい点も魅力的でした。とはいえ、試験導入時はもちろん、その後の本格導入でも、富士通のエンジニアがしっかりとサポートしてくださったので、自分の手でセットアップする必要のないまま現在に至っています」。
リプレイス後は、これまで諦めていた表現や、急な修正対応も可能に
約1.5ヶ月におよんだ試験導入では、既存サーバの使い勝手との比較検証が行われた。
「当社の使用OSはWindows系、アプリケーションはMaya・3ds Max・CINEMA 4D・Houdini・After Effects・NUKEなどです。これらが安定動作するかどうかの確認が、検証の主な目的でした」。
途中、OSが起動しないという不具合が発生したものの、富士通のエンジニアが何度も来訪し、親身になって原因を究明、解決策を提示してくれたと萩原氏はふり返る。
「不具合の原因は、試験導入とほぼ同時期にリリースされたWindowsの新しいパッチでした。それを突き止めたうえ、パッチを当てた状態でも問題なく稼働するように、サーバ側の不具合を修正した状態で再出荷してくださったのです」。
このように富士通の事業部をあげたサポート体制は万全を期しており、導入に対する不安は完全に払拭されたと萩原氏は語る。本格導入から半年以上が経過した現在に至るまで、約15人のアーティストが日々使用しているが、評判は非常に良いという。
「5年前に導入した10台の既存サーバは、今回の富士通のサーバ導入を機に手放しました。一方で、2年前に導入した残る10台の既存サーバは、現在も使用しています。とはいえ"できれば富士通の新しいサーバでレンダリングしたい"というのがアーティストの本音のようです」。
とりわけ、メモリを大量消費するシミュレーションのトライ&エラーや、高精細映像の再レンダリングを安心して実行できるようになったメリットは大きいと萩原氏は強調する。
「これまで諦めていた表現や、急な修正対応が可能になったことで、アーティストはもちろん、お客様の満足度も向上しています」。
木材をふんだんに使用した+Ringのスタジオ。ケーブル類は全て床下に収納されており、すっきりとした印象の空間になっている
攻めの企画提案やプレゼンも可能になり、プロデュース力も強化
加えて、サーバ増強は同社のプロデューサーたちにとっても追い風になっているという。
「高速なレンダリングサーバを社内で保有していることは、他社にはない強みです。プラネタリウムのような360°全天周映像・高精細な大型映像・インタラクティブコンテンツなど、レンダリング負荷が大きい案件であっても、これまで以上に攻めの企画提案やプレゼンテーションができるようになりました」。
最近は4Kか、それ以上の高精細映像を常時手がけているのに加え、KinectやOculus Riftを使った案件にも意欲的に取り組んでいるそうだ。
サーバの本格導入以降、富士通にはオンサイト保証を依頼しており、これも大きな安心材料になっていると萩原氏は補足する。
「導入から1ヶ月が経過した頃、CSSランプが点滅しエラーを警告したことがありました。再起動したら正常に稼働したものの、気になったので富士通のサポートに連絡したら、即日駆けつけてくださったのです」。
入念にサーバをチェックした富士通のエンジニアは、念のためにメモリを交換、さらに予備のCPUも即日取り寄せてくれたという。
「結果的にCPUは交換しなかったのですが、本当に手厚いサポート体制でした」。
CMをはじめ、短納期の案件が多い同社では、たった1日のロスが深刻な事態へと発展する危険性がある。だからこそ、富士通による即日対応のサポートの価値は大きいという。
レンダリング負荷の大きい案件は、今後も堅調に増加していくだろうと萩原氏は語る。
「近い将来、さらにレンダリングサーバを増強したいと考えています。それに追随して、ストレージサーバやネットワークも増強する必要があります。当社では、常にその時代の最新映像を制作してきました。今後もその姿勢を維持するため、あらゆる面から体制の強化を図っていきたいです」。
TEXT_尾形美幸(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充
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