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2013年夏、株式会社エヌ・デザインはレンダリング用ワークステーションの交換を実施し、富士通株式会社のサーバ「FUJITSU Server PRIMERGY CX」シリーズを導入。さらに続く2014年春、同じシリーズのサーバを株式会社白組 調布スタジオが導入した。
これら一連の導入の背景には、両社のシステム管理者の探究心と、それに端を発する" 情報共有" があったという。そこで富士通とCGWORLD.jpでは、両社のシステム管理者による対談を企画。映像制作にはげむアーティストを支えるシステム管理者の仕事と、その根底に流れる思いを存分に語ってもらった。

なお、両社が導入したサーバや、導入時の検討内容の詳細は富士通サイト内の記事で紹介しているので、ぜひご覧いただきたい。

エヌ・デザイン 導入事例
~ワークステーションをサーバに交換。省スペース化・高性能化に加え、管理性向上も実現~

白組 導入事例
~限られたスペースでレンダリングサーバを増強。従来比最大8 倍のレンダリング処理能力を獲得~

アーティストの「映像表現の追求」や「より速いレンダリングマシンが欲しい」に応えるために

渡邉氏:CGプロダクションのレンダリングサーバは平日・休日を問わず毎日稼働しているうえ、1回導入すれば3~4年は使い続ける。だからこそ、できるだけ費用対効果が高く、アーティストの苦労を軽減できるシステムを構築することが我々システム管理者の役割だと思っています。

鈴木氏:レンダリングサーバの場合、5年目くらいから費用対効果が極端に下がりますから、当社も3~4年を目安に交換していますね。レンダリングサーバ、ストレージ、ネットワーク、ワークステーションをローテーションで見直すので、毎年のように何かを交換していますね。

早川氏:「もっと速く」あるいは「落ちないレンダリングマシンが欲しい」というのが多くのアーティストの要望ですよね。ただしレンダリングサーバだけが速くなっても実は意味がない。例えば、データを受け渡しするネットワークが脆弱だと、サーバは効果を発揮してくれません。システム全体を俯瞰して、バランスよく投資していく必要がある。費用対効果を見極めるためには、多くの要素に目を向けることが必須ですね。

渡邉氏:建物自体の問題もありますよね。当社の建物は100V 電源にしか対応していないので、電力の確保にも工夫が必要です。更にサーバルームをつくる際には、空調や床の耐荷重にも気を配る必要がある。

鈴木氏:新しくビルを借りる際には、システム用の電源と空調を最優先で確保しますね。でも普段は目に入らない設備なので、経営者に直感的に必要性を理解してもらうのは難しい。4、5 年先を見越して空調機の数を多めに提案すると「こんなに必要なの?」と聞かれる場合もありますね。確かに今は必要ないけど、先々では必要になる。そういった背景事情を、きちんと説明することも大切なのだと思います。

渡邉氏:目に入るのは電気代の請求額だけですからね(笑)。普通のオフィスならあり得ない額なので、事情を知らない方はびっくりされますね。とはいえ実際には4年先までの使い勝手を完璧に予想することは不可能ですから、後日のカスタマイズがやりやすいシステムを選ぶようにしています。

早川氏:そうやって渡邉さんが吟味したシステムの情報を共有してもらえたお陰で、今回のレンダリングサーバ交換の立案は非常に順調でした。エヌ・デザインさんでの導入実績があったのに加え、我々のニーズを満たす仕様でもあったので、試験導入までの意志決定は速かったですね。
多くのCGプロダクションが似たような仕様のコンピュータやソフトウェアを選んでいるので、抱えている課題も実は似ている。ある程度までは情報を公開し合う方が、お互いの課題解決のスピードが速まるのだなと実感しました。

 高速なレンダリングのためには、レンダリングサーバだけでなく、ネットワーク、ワークステーション、ストレージなどのシステム全体のバランスが取れていることが必要。  システムを動かすための電源設備/電力費用など、考慮すべき点は多い。

最適なシステムはアーティストとの意見交換から導き出される

鈴木氏:アーティストにとって最適なシステムを見極めるためには、日頃からアーティストと言葉を交わすことも大切ですね。我々のようなシステム管理者が、どの様にコンピュータとアーティストをつないでいけるか...それこそがポイントだと思うのです。だから早川のようにアーティストの仕事を知っていて、システムも理解している人の比率をもっと増やしていく必要があると感じています。

早川氏:どのタイミングで何に投資すれば、皆の仕事を最も効率化できるのか。我々が一方的に決定するのではなく、アーティストにも現状や未来の予測を伝え、試験導入にも参加してもらい、より多くの希望をかなえる方法を話し合う。そういう関係性を構築することも、システムの土台づくりの一貫なのだと感じます。土台がしっかりしていれば、導入後の運用もうまくいきますね。
よく、他社の方から「白組さんには特別なシステムがあるのでしょう?」と聞かれるのですが、全然そんなことはない。ベンダーさんのメニューのなかにある商品を選んで、ほぼそのまま導入するだけで、特別なカスタマイズはやらない場合が多いのです。ただし我々は、アーティストの声に注意深く耳を傾けるようにしています。それが、当社のシステムが特別なものに見える要因なのだと思います。

鈴木氏:アーティストのなかには、自分が使っているシステムに関する不具合や不満を伝えることが苦手な人もいますし、慣れた人でも断片的な情報しかもっていないことがありますからね。1 人1 人から話を聞き出し、情報をつなぎ合わせることで、ようやく問題の全体像が見えてくる...といった場合も多いです。

渡邉氏:確かにそういうケースはよく目にしますね。システム管理者というのは、患者の症状を聞いて病気の原因を突き止める、医者のような存在なのだと思います。
私がCG 業界に入ったのは2012 年からで、それ以前は別の複数の業界を渡り歩いてきました。それらの業界と比較すると、CG 業界は良いものを効率的につくるための基盤づくりが遅れているなと感じましたね。デザイナーの根性で何とかしてきた部分が大きい。でもそれだけでは限界があるので、より効率的な制作環境を目指し、まずはストレージとレンダリングサーバの交換を行いました。
現在は、先々での投資の判断基準をつくるため、現状のシステムの数値化を進めていますね。例えば今回の交換でレンダリング効率がどの程度上がったのか、具体的なデータを取るようにしています。

鈴木氏:そうやって情報を集めて、テストもして、いざ導入したシステムが無駄なく稼働してくれた瞬間は特に嬉しいですよね。システム管理者が絵づくりに直接たずさわることはありませんが、使い勝手の良いシステム構築を通して、間接的に映像制作に参加できる。この関係性は心地良いですし、凄くやりがいのある仕事ですよ。

アーティストの働き方の選択肢を広げたい

渡邉氏:クライアントや視聴者から期待される映像クオリティは年々高くなっています。それにともないアーティストの手間や扱うデータ量も増加の一途を辿っていますが、制作期間の延長には限界がある。物理シミュレーションやレンダリングにかかる時間を短縮できるシステムを提案し、自動化のしくみをつくることで、アーティストの負担を減らす努力が今後も求められると感じています。

早川氏:一方でシステムやインフラの技術も日々進歩しているので、より使い勝手の良い制作環境を構築できる可能性も広がっていることは心強いですね。

鈴木氏:早川とは「将来的に、ハード、ソフト、インフラの全てがネットワーク上で繋がるようになれば良いね」という話をしています。制作データや作業用ソフトの入手、表示用液晶モニタの調整などがネットワーク経由で可能になれば、アーティストはどこにいても同じ仕事ができるようになります。そんな時代になったら、今以上に仕事が面白くなるでしょうね。

早川氏:自宅や海外にいても仕事ができるようになれば、働き方の選択肢が広がり、アーティストが仕事をするチャンスも増えますよね。

渡邉氏:そういう環境が構築できる技術は既に出そろっています。構想を具体化させるための調査や検証も、今後の我々の仕事になっていくでしょう。

TEXT_尾形美幸(EduCat)
PHOTO_大沼洋平

▼会社紹介

株式会社エヌ・デザイン
映画・TVドラマ・ゲームのOP映像・遊技機向け液晶映像など、幅広いジャンルのCGI・VFX制作に対応し、多くの実績を残してきた。「目指すは、日本で一番クオリティが高いCGプロダクション」というビジョンを掲げ、日々挑戦を続けている。
http://www.ndesign.co.jp

株式会社白組
劇場用の実写映画やアニメーション映画、TV用のCMや実写番組、アニメーション番組などの企画制作を行う映像プロダクション。3DCGを駆使したVFXからミニチュア制作まで幅広い手法に精通しており、多彩な映像表現を追求している。
http://www.shirogumi.com