<2>現在主流のアニメCG表現手法とは
ーー近年はセルシェーディングだけに頼るのではなく、コンポジット工程におけるレタッチなど後処理でセル調を目指す手法が増えているように感じます。
加藤:3DCG制作者としてはセルシェーディングだけで完結できることを望んでいるのですが、現状ではコストや作業負荷を考慮すると難しいですし、レタッチでより良い画がつくれるならレタッチすべきだと思っています。
野口:最近は、セルシェーディングだけで完結(※2Dレタッチは行なっていない)しているプロダクションさんもあるみたいですけどね。
加藤:実は、東映アニメーションに入る以前にフル3DCGのTVシリーズを制作しようというプロジェクトに携わったことがあったのですが、いわゆる3DCG本来のリアル路線の表現手法ではコストが見合わないという結論に達し、そこでもセルシェーディングにたどりつきました。作画アニメの場合は基本的に2コマ作画だと1秒間に12枚、3コマ作画だと同8枚と描く枚数も少ないですし、後処理で塗り直したり、手を加えるといったレタッチも可能ですからね。こうした手法が利用できることもセルシェーディングの利点だと思います。ただ、本作では様々なシェーディング処理も併用しているので、そのレタッチが容易にはできません(苦笑)。
マケット制作<1>3Dプリント向けの調整
【Step 1-1】(左)東映アニメーションから提供された3DCGモデルをOBJ形式で3ds Maxに読み込んだ状態/(右)オープンエッジが表示されるように設定し、このデータをオープンエッジが0になるよう加工していく
【Step 1-2】(左)眉毛部分の調整例。元データは厚みがない状態のため厚みを付けた上でオープンエッジも閉じる/(右)調整後
【Step 1-3】(左)歯や舌は見えないので削除する/(右)グリーンで表示された箇所がオープンエッジ
【Step 1-4】(左)3Dプリントを行う上では、閉じた(隣り合ったポリゴン同士が接した状態)データにしておかないと出力時にエラーが生じてしまう。そこで目の穴なども埋めておく必要がある/(右)同様に裏側の穴も埋める
【Step 1-5】(左)元データでは、手首にもオープンエッジが存在している/(右)3ds Maxのキャップ機能でオープンエッジを閉じた状態
【Step 1-6】(左)髪の毛についても全てのオープンエッジを閉じていく/(右)厚みの調整を始める前に出力サイズの調整を行う。全高の目安になるBOXを配置し、それに合うように拡大・縮小を行う
【Step 1-7】(左)衣服部分のオープンエッジを閉じつつ厚みの調整を行なっていく/(右)厚みの調整を行う際は、1㎜サイズのキューブ等を配置し、最低限の厚みを下回らないように配慮する(※3Dプリンタの仕様に応じて、最低サイズは異なる)
【Step 1-8】(左)胴体パーツのオープンエッジ/(右)こちらもキャップ機能で閉じた
【Step 1-9】全てのオープンエッジを閉じることができた状態(UI下部にエッジ0と表示されている)