<3>短尺の利点を活かし、細部までこだわりぬく
サウンドとのシンクロを徹底的に追求する
本作は音楽とのシンクロする映像を目指したためフルコマでアニメーションが制作されているのだが、キャラクターが蜘蛛の巣に縛られ身動きが取れないシーンはセルアニメの特有の緩急を再現したいという監督のオーダーに応える必要もあったという。「フルコマによって動きがヌルく見えないよう、まずはキーポーズを作成し、ツメタメなどメリハリを考慮しながら中間の画を作成していきました。動きも速いのでセカンダリはシミュレーションに頼らず手付けでアニメーションを付けています」とアニメーターの岩崎健司氏。
蜘蛛の巣はキャラクターの動きに合わせてアニメーションさせなければならなず苦労したという。「1コマでポーズを変えるなど大胆にアニメーションを付けられる方は少ないので、岩崎さんの感性と作家性に助けられました」と吉崎監督も続ける。
また通常セルアニメの場合はオバケという作画技法で動きの速さを表現するのだが、本作ではあえてRE:Vison Effects ReelSmartMotion Blurを使用し、CGならではの表現を目指したのだという。音楽のリズムに合わせたダイナミックなカメラワークとすり鉢状の蜘蛛の巣に散りばめられた無数の発光エフェクトを組み合わせることで、要素としては少ないものの奥行きを感じられる世界観を作り上げている。
「グラフィカルな映像を意識していたので、背景は暗くしてアニメーションと蜘蛛の巣のディテールが際立つように設計しました。特に羽根と蜘蛛の巣の発光パーツは音楽とのシンクロや画面を鮮やかにするために重要なアイテムなので、土壇場まで発光感や発色、タイミングを何度も調整を行いました」と、吉崎監督。発光エフェクトについてはパーツごとにマテリアルIDを割り当て、AE上で色をカラーキーで抽出し発光マスクとして使用することで、光が走るアニメーションを作成している。
さらに羽根が開くと同時に蜘蛛の巣や三角形の発光体が粉砕させる表現では、TrapcodeのStarGlowやShine、VideoCopilot Optical Flaresなども多用し派手さが追求された。
■ショットワーク
▲3ds Maxによるフェイシャルアニメーション作業例
▲コンポジット作業時におけるキャラクターのルック調整例
羽化する瞬間のエフェクト作業例
▲3ds Maxのシーンファイル
▲3Dエフェクト素材
▲AEによるコンポジット作業(2Dエフェクトの追加とルックの調整)。右側のサブウインドウは主なレンダーパス
■吉崎監督のディレクション
▲プロジェクト後半に吉崎監督がTRICK BLOCK向けに作成した修正指示。書き込まれたコメントからは双方の深い絆が伝わってくる
メイキング動画集
▲「hal cm preview 0218」アニマティクス。音声はTeddyLoid氏によるデモ音源Ver.1
▲「hal_cm_render.20160222」テイク1。音声はTeddyLoid氏によるデモ音源Ver.2
▲「hal cm render 20160301」テイク2。TeddyLoid氏とDAOKO氏によるコラボ音源完成版
▲「hal cm render 20160317 」テイク3。映像としての完成形