>   >  デジタルアーティストが肌身で感じたDMM VR THEATERの可能性〜「HOLOGRAPHIC VR CONTEST 2016」開催記念<1>
デジタルアーティストが肌身で感じたDMM VR THEATERの可能性〜「HOLOGRAPHIC VR CONTEST 2016」開催記念<1>

デジタルアーティストが肌身で感じたDMM VR THEATERの可能性〜「HOLOGRAPHIC VR CONTEST 2016」開催記念<1>

<2>トランジスタ・スタジオがDMM VR THEATER作品を手がけるとしたら?

一連の見学の最後に、トランジスタ・スタジオの両氏と先述の江﨑氏、そして「HOLOGRAPHIC VR CONTEST」の審査員に名を連ねる沼倉有人(CGWORLD編集長)を交えて、DMM VR THEATER向けコンテンツの可能性について語り合ってもらった。

ーートランジスタ・スタジオのお二人は実際にご覧になられて、いかがでしたか?

トランジスタ・スタジオ/秋元純一氏(以下、秋元):最初に想像していたものとまったくちがっていましたね。あまりのインパクトに脳が汗をかきました(笑)。

トランジスタ・スタジオ/平井豊和氏(以下、平井):いろいろな作品を拝見させていただきましたが、特に『ふなっしーVR』はハイクオリティでした。CGキャラクターたちがすごく立体的で、実在感がありましたね。

秋元:hideさんのライブ映像など実際の人間(リアルなCGキャラクター)を投影したものでは、少し実際のサイズより小さいようにも感じられました。これは目の錯覚かもしれませんが、気持ち大きめくらいでつくった方が良いのかなと思ったのですが、実際のところどうなんですかね?

ーー鑑賞後は壇上に上がられて舞台下のLEDビジョンを熱心に観察されていましたね。

秋元:LEDビジョンに映し出された映像はかなりハイコントラストなのですが、それがハーフミラー性能のスクリーンを通して結像されると、絶妙な立体感のある映像になっているんですよね。その仕組みには感心させられました。

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壇上からLEDビジョンを覗き込む秋元氏と平井氏

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DMM VR THEATERの上映システムを図解したもの

ーーもしおふたりがDMM VR THEATER用の作品をつくるとしたら、どのようなものを上映しますか?

秋元:うーん、どうでしょう。先ほども3DCGと実写の両方の映像コンテンツが使える点がポイントだと思うんですよ。だったら、その両方を同期させるような映像表現が、一番オイしいんじゃないかなあと。

ーーなるほど。

秋元:実際、普通の舞台だと火炎放射器は使えないし、雨だって降らせられない。そうしたCGエフェクトを加えるだけでも、いろんな表現ができるんじゃないかな。それこそ『ハリー・ポッター』のような世界観だったり、日本のアニメ的な魔法少女ものだったり。そうした表現をモチーフにしたエフェクトなどは向いている気がします。



デジタルアーティストが肌身で感じたDMM VR THEATERの可能性〜「HOLOGRAPHIC VR CONTEST 2016」開催記念<1>

スクリーン面に結像されたキャラクターと肩を組むふりをしてみたりも。実際に観客席側から観ると写真以上に一体感があった

ーー今回のコンテストでは、実写やCGといった制限は特にありませんよね。

DMM.futureworks/江﨑喜考氏(以下、DMM・江﨑):そうですね。作品の時間やテーマも応募者が自由に設定できます。「ホログラフィック劇場」を活かした作品であれば、特に制限はありません。様々な作品が一堂に会することで、想像もしなかったような作品や演出が誕生すると嬉しいですね。

秋元:個人的な趣味ベースのアイデアとしては、珊瑚礁の海を切り取ったような映像をつくってみたいなと思いました。水族館が好きで、良く行くんですよ。海水ならともかく、淡水でステージサイズのような水槽って、ほとんどないじゃないですか。それがこのシアターなら、奥の画面に水槽を表示するだけで再現できてしまう。

ーーたしかに。

秋元:そんなふうに、固定された空間をずっと見せておくような、スクリーンセイバー的な映像でも面白いんじゃないのかな。「HOLOGRAPHIC VR CONTEST」の幕間に上映する、ブリッジ的な映像をつくりたくなってきた(笑)。

ーー実際に作品をつくるとなると、どんな手順が有効だと思いますか? 少なくとも手前と奥の2種類のソースを制作する必要があるわけですね。

秋元:そうですね。前面はキャラクターなどがクロマキーされた映像になると思うので、DCCツール上では手前と背景用のソースをレイヤー構造で重ねてプレビューすれば良いのかな?

DMM・江﨑:基本的にはその要領で大丈夫だと思います。ただ、本コンテスト用の作品を提出していただく際には、手前と奥の各ソースに加えて両者をコンポジットした映像も必要になります。コンポジットした映像をリファレンスとして、上映時のセッティングを最適化できればと考えています。

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DMM VR THEATERの上映機材。「HOLOGRAPHIC VR CONTEST 2016」では、Grass Valleyのデジタル・ディスクレコーダー「T2」シリーズ(写真・中央)が用いられるという

ーー『ふなっしーVR』はUnreal Engine 4でコーディングされたとうかがいましたが、今回のコンテストもリアルタイムCGを用いる必要があるのでしょうか?

DMM・江﨑:いいえ。「HOLOGRAPHIC VR CONTEST」についてはプリレンダーの映像で大丈夫ですよ。

平井:それなら敷居は少し下がりますね。とは言え、作り手としては実際にどのように見えるのか制作途中に試写ができればと思ってしまいますね。LED照明とのインタラクションなども重要になるでしょうし。

DMM・江﨑:本コンテストでは照明等の舞台装置による演出は用いません。純粋にステージ上に投影される映像だけで勝負していただければと思います。舞台の両端に配置されたディスプレイも使用しません。同様に立体音響についてもMAやチューニングは応募される方々にとってはかなりの負荷になってしまうので、通常の映像コンテンツと同じ要領で制作していただければ大丈夫ですよ。

秋元:ということは、本当に2種類の映像ソースをどのように組み合わせるのかが重要になるわけですね。やっぱり大きな車窓を切り取ったような表現が良いのかなあ。アニメーションも、変にモーションブラーをつけたりしない方が良さそうですね。レンズ効果も奇をてらわず、肉眼で見たままのレンダリングにした方が良いようにも感じました。

平井:たしかに車窓みたいに、手前と奥とで二層に分かれやすい見せ方が向くかもしれません。逆にキャラクターに影がついて、立体的に見えたぶん、エフェクトが平面的なようにも感じました。CGでいろんなエフェクトが出せるメリットはあると思いますが、このあたりも少し気をつけた方が良いかもしれませんね。

ーーそのへんの感覚は、実際にDMM VR THEATERで上映してみないとわからない気がします。

秋元:その通りだと思いますよ。たぶん二枚の映像の重ね合わせ方がキモで、奥の映像に影をどうやってつけるかが、立体感を出す秘訣なんでしょうね。本気で賞を狙ってるなら、応募する前に見に来た方が良いと思います。

DMM・江﨑:現在エントリーを受付中でして、9月9日(金)がエントリーの締切日になります。そして作品自体の提出期日は9月23日(金)を予定しています。その間に何度か説明会やデモンストレーションを設ける予定なので、気になる方にはぜひ参加していただければと思います。なお、ご応募いただいた作品は予備審査を経て絞らせていただいた上で「予選上映」※2016年10月中を予定)として実際にDMM VR THEATERで上映して、観客の方々に投票していただきます。そしてファイナリストに選出された作品を「本選上映」※2016年11月3日(木)を予定)として、審査員の前でプレゼンテーションしていただきながら上映し、各賞を決定するという流れになります。

平井:それは本格的ですね。

DMM・江崎:審査員には、新しい演出論の開拓という意味合いも込めて、放送作家・演出家の鈴木おさむさんにも参加してもらいます。

秋元:じゃあ、ちょっとお笑いの要素も意識しないと(笑)。

ーー(笑)。世界初の常設型ホログラフィック劇場というわけで、当然ながら世界初のコンテストになるわけですが、同じく審査員を務める沼倉さん的にはどんな作品を期待していますか?

CGWORLD/沼倉有人(以下、CGW・沼倉):やっぱり、今まで観たことがない作品ですよね。非常にベタな表現ですけど(苦笑)。

秋元:エンターテインメントだけでなく、教育コンテンツなども良さそうですね。小さくなって体の中に入っていく......映画『ミクロの決死圏』みたいなものだったり。そこから派生させて、架空の製薬会社の新薬プレゼンテーション映像にしちゃうとか。

CGW・沼倉:それは面白そう! あとは先ほども秋元さんが話されていましたが、実写撮影に慣れている方なら全てを3DCGで作成するのではなく、演者さんをブルーバック撮影するといった手法もアリかもしれませんね。

秋元:ふなっしーのようなデフォルメされたキャラクター表現も有効だと思います。コストパフォーマンス的にも。そのほかにもリアルなサイズにこだわらずに、拡大/縮小させてみたらどうなるんだろうとか。とにかく可能性がありすぎて、ワクワクしますね。



DMM VR THEATER オープニングイベント ゲストステージ

ーー主催者であるDMM.ftureworksとしては、どのような作品を期待されていますか?

DMM・江﨑:すでにいろいろなアイデアが出ていますが、もし作品が5~10分といった長さになるのであれば、ドラマ性というか何らかのストーリーをもたせた方が望ましい気がします。それくらいの尺になると、純粋な映像美や映像表現だけでは、観客の興味を保つのがどうしても難しくなってくると思うので。

ーーなるほど。それにしても、どんな作品が集まるのかまったく想像がつきませんね。

DMM・江﨑:はい、われわれとしてもDMM VR THEATERの様々な魅力を、ひき続き追求していきます。「HOLOGRAPHIC VR CONTEST」もその一環ですので、こちらが気づいていない、様々な可能性を教えていただける作品の応募を期待しています。

秋元:ちなみに賞金は出るんですか?

DMM・江﨑:グランプリが50万円、準グランプリが10万円です。そのほかにも特別賞を用意しています(詳しくは、「HOLOGRAPHIC VR CONTEST」特設サイトを参照

秋元:ええっ! そんなにもらえるんですか?

平井:これは......応募しますか?

ーーこれはトランジスタ・スタジオも参戦されますか?

秋元:金額を聞いて、めちゃめちゃ興味がわいてきました。しまった、ちょっとヒントを出し過ぎちゃったかも(笑)。真剣に参加を検討してみようと思います!



  • デジタルアーティストが肌身で感じたDMM VR THEATERの可能性〜「HOLOGRAPHIC VR CONTEST 2016」開催記念<1>
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▶HOLOGRAPHIC VR CONTESTへのエントリーはこちらから︎

※エントリーを行うとDMM VR THEATERの実寸劇場データ(FBX形式 ※サンプル画像はこちら)や作品制作のポイントなどの資料を後日送ります

Info.

  • デジタルアーティストが肌身で感じたDMM VR THEATERの可能性〜「HOLOGRAPHIC VR CONTEST 2016」開催記念<1>
  • 「HOLOGRAPHIC VR CONTEST 2016」エントリー受付開始!
    主催:DMM.futureworks
    共催:CGWORLD
    <各賞と賞金>
    グランプリ 50万円(1作品)
    準グランプリ 10万円(1作品)
    特別賞 CGWORLD定期購読1年分(2作品)
    <審査員> ※敬称略
    鈴木おさむ(放送作家)
    白A(次世代型エンタテイメント集団)
    福原慶匡(DMM.futureworks執行役員プロデューサー)
    沼倉有人(CGWORLD編集長)
    <審査基準>
    ・誰でも楽しめる芸術性やエンターテインメント性があるか
    ・VR THEATERの特徴を活かした表現ができているか
    ・3DCGなどの技術を駆使して立体的な映像になっているか
    提出物:Holographic VRを活用した映像作品
    エントリー締切:2016年9月9日(金)

    「HOLOGRAPHIC VR CONTEST」特設サイト


Profileプロフィール

トランジスタ・スタジオ/Transistor Studio<br />秋元純一/Junichi Akimoto、平井豊和/Toyokazu Hirai

トランジスタ・スタジオ/Transistor Studio
秋元純一/Junichi Akimoto、平井豊和/Toyokazu Hirai

右から、秋元純一(VFXスーパーバイザー、取締役)、平井豊和(テクニカルアーティスト)。以上、トランジスタ・スタジオ

HOLOGRAPHIC VR CONTEST 2016

HOLOGRAPHIC VR CONTEST 2016

世界初のホログラフィック劇場で開催する世界初のホログラフィックコンテスト。
グランプリは賞金50万円。エントリーは9月9日(金)まで。

http://hvc2016.com/

スペシャルインタビュー