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タイムシートもデジタル化!? TVシリーズ『正解するカド』で実践されるワークフロー

タイムシートもデジタル化!? TVシリーズ『正解するカド』で実践されるワークフロー"フルデジタル化"への挑戦

"デジタルタイムシート"で次世代のフローへ

「タイムシートの情報をデジタルで取り扱うために開発した"Toei DigitalTimeSheet"は、すでに試験運用できるところまできています」
ー高橋裕哉氏(東映アニメーション プロダクションマネージャー兼アシスタントディレクター)

C:それは、どういったプロジェクトなのでしょう?

:基本的には、まずいまアナログ的に読み取っている情報はなんでしょう、という定義をしっかり検証していくことですよね。それらの情報をデータとして管理して、汎用的にインプット/アウトプットができるようになれば、作業効率もヒューマンエラー頻度も、劇的に改善されるはず。話数、シーン番号、カット番号、幅高さ解像度などのフレーム情報、その余白やレイヤーの重なりについてのオーダーとタイミング情報、台詞タイミング、カメラフレームの前後左右の移動値など......といった情報。それらのデータを全て管理しているのはといえば......。そう、求められているのは"タイムシートのデジタル化"です。

:アニメの出来、というか演出は、タイムシートに大きく依存しています。ですがこれまで、一応データという存在にはなっているものの、実際にはただビットマップデータとしてPSDに手描きの指示や数字を次々に描き込みつつ運用する、みたいな"デジタル化されたアナログ"的状態でやってきていたんです。それを、クリエイターにとって使い勝手の良い一定のフリーハンドな部分を残しつつ、できるところはデータ管理していこうよ、と。

:そのタイムシートで表現されている情報をデジタルで取り扱うために東映で開発している「Toei DigitalTimeSheet」【下画像】も、すでに試験運用できるところまできていて。原画、動画が揃い、タイムシート上で演出が指示したものを、After Effectsによる撮影にデジタルデータとして読み込める、というところまではきました。

開発中のToei Digital TimeSheet。原画から撮影までの指示や修正を履歴として全て残しながら、データとして格納していく。自由筆記などの遊びを残しながらも、各アプリケーション間で数値情報を共通使用する(入出力する)ための重要な役割を担う

C:そこが自動化されるだけでもすごいことのように思います。ヒューマンエラーも大きく減りそうです。

:ですが......デジタルデータの定義がある程度できて、その出力ができるようになったとしても、タイムシートへの"入力"については、作画アプリケーション側で必要となる数値を書き出してくれないと、結局別途手入力になる。これだと"覚えるデジタル作業が1つ増えた"だけで、作業者のメリットにはならないんですよね。かといって、後で補うから適当でいいよ、にしてしまうと、また制作進行や演出が大変な目に......。

:そこにはわれわれツールベンダーも関わっていかないといけません。今までも様々な現場での要望を聞いて、タイムシート情報の入出力が必要とされていることはわかっていました。ですが逆にベンダー側としては、"どのように使われる情報を、どのようなかたちで書き出せばよいか"が正確にはわからなかったのです。そこは制作の現場の人にしか把握できない様々な事情もありますし、制作現場それぞれによっても、必要とされる仕様が異なります。

C:それが今回、東映アニメーションさんでは独自に"デジタルタイムシート"という受け皿を開発されていて、まさしく出力するデータの仕様が固まりつつあった、というわけですね。

:はい。ですので、われわれとしてもぜひ一緒に考えさせてください、と。

「何よりも"作業者にメリット"のあるデジタル作画環境を実現したい。それでこそ、デジタルワークフローを広げる意義がある」
ーりょーちも氏(アニメーター・イラストレーター・演出家)

:東映アニメーション側ではデータの入出力方法を探っていて、セルシスさん側では入出力の仕様を探っていた。それぞれ業界的な課題を日頃から感じて模索しているなかで、どちらからともなく自然発生的にできた協力体制ですね。

:コンテ用紙や作画用紙、そしてタイムシートももちろんですが、業界として規格や仕様が統一されているものではなく、どこでも同じっていう標準フォーマットは、実はないんですよね。それが、デジタル化に伴う汎用の仕様づくりを行う上で難しいところですね。

:だったら、まずやってみて「これでシリーズ作品できたよ!」って実績で示すのが早いのかな、と。上手くいってそれをオープンなかたちで広められれば、業界全体としてデジタルワークフローを前進させることもできるかもしれない。まぁシリーズ作品の実工程を実際にまわしながら試験を行なっているわけなので、正直つらいところもありますが(苦笑)。でも誰かが開拓して実績で示さないことには、この中途半端な状態からいつまでも脱却できない。

:われわれとしても、デジタル的な制作管理環境を整えることで、進行管理側としての単純な作業効率の追求やローコスト化といったことだけではなく、優秀な人材の確保と新人の効率的な育成・登用、そしてその上での作画品質の担保、加えてそれらのクリエイターたちの負担軽減、といったことを実現していきたい。一度セットアップされたマシンごと送ってしまえば、どこにいても負担を感じることなくプロジェクトに参加できるわけなので、たとえば物理的な距離が離れている地方のクリエイターたちも発掘していきたいですね。

:そういったデジタルワークフロー導入の必要性は、日本動画協会などでも語られていますし、なによりクリエイターの利便性を上げるためにも、今回の"CLIP STUDIO PAINTからのタイムシート情報の入出力"については検討段階から情報公開を進め、関係先からの意見反映を検討していく予定です。Toon Boomなどのベンダーともすでに話をしています。形式はテキストベースとし、各現場で使っている作画ソフトや管理ツールと柔軟に連携できればと。RETASも例外ではありません。各ツールと相互の入出力の検証を進め、逐次、状況を公開していければと思っています。ご興味のある企業様にはぜひご連絡いただきたいと思います。

「この取り組みが、柔軟でオープンなデジタルフローのフォーマットを業界全体で考えていくきっかけになれば」
ー横塚智明氏(セルシス 開発担当役員)



問い合わせ 株式会社セルシス CLIP STUDIOソリューション
URL:www.celsys.co.jp/clipsolution
mail:clipsolution@artspark.co.jp

TVアニメ『正解するカド』Blu-ray Disc BOX&DVD BOX
全2巻にて発売決定! 第1巻は7月26日(水)、第2巻は9月27日(水)発売! 詳しくはTVアニメ『正解するカド』公式サイトにて!
seikaisuru-kado.com
Twitter:@Seikaisuru_Kado
©TOEI ANIMATION,KINOSHITA GROUP,TOEI

Profileプロフィール

東映アニメーション×りょーちも×セルシス

東映アニメーション×りょーちも×セルシス

写真右より:りょーちも氏(アニメーター・イラストレーター・演出家)/横塚智明氏(セルシス 開発担当役員)/高橋裕哉氏(東映アニメーション プロダクションマネージャー兼アシスタントディレクター)/小林哲也氏(セルシス マーケティング部 部長)/今村幸也氏(東映アニメーション プロダクションマネージメント室長)/武田暁雄氏(セルシス マーケティング部)

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