TVPaint Animation 11から追加された新しい機能
今回のバージョンアップでは、作業の効率を大幅に向上させるようなアシスト機能がいくつも追加されている。アニメーターたちにとっての不要なストレスを可能な限り軽減させ、さらなる表現の探求へと後押ししてくれる機能ばかりだ。大きなテーマとなっているのは、「アナログとデジタルをつなぐワークフローへの対応」と「仕上げ向けツールの充実」の2つ。いったいどんな機能が追加されたのか、ひとつひとつ紹介していこう。
デジタルツールを導入するにあたり、まず懸念されるのがワークフローの変化だ。これまで積み上げてきたワークフロー全てを白紙にして、いきなりフルデジタルの新しいワークフローを構築するのは非現実的である。つまり、既存のワークフローと円滑に結びつけることが、デジタルツールが超えるべき必須のハードルと言える。
そのためには、これまで紙と鉛筆で腕を磨いてきたアニメーターたちにとっても、使いやすいということが必要不可欠だ。アナログとデジタルとで大きな問題となるのは、描き味のちがいだろう。アナログのアニメーターがその描き味の差から綺麗な線が引けなくなるのではという不安を抱くのは当然だ。そこで力を発揮するのが、[ラインスムージング(線補正機能)]である。手ブレを補正し、滑らかな線へと自動的に調整してくれる機能で、デジタルツールの大きな魅力のひとつだ。TVPaint Animation 11では、この[ラインスムージング]に新タイプの[平均(ポイント)]が加わったことによって、繊細な力加減が反映できるようになり、一層自然な線の仕上がりとなった。
アナログによるアニメーション制作の現場の多くでは、紙に描いた動画をスキャンし、スキャンした線画は仕上げ工程で二値化される。その作業をTVPaint Animationでは[スキャンクリーナー:カラーFX]で行うことが可能だ。トレス線の強さを調整できる設定が追加され、綺麗な非アンチエイリアス画像にすることができる。
さらにTVPaint Animationとアナログの大きなちがいのひとつとして、タイムラインが挙げられる。日本では縦に書かれた「タイムシート」を用いるが、TVPaint Animationは横に伸びた「タイムライン」上に画を載せていく。日本のアニメーション業界はタイムシートに慣れているため、タイムラインは感覚的に使いづらいという感想を抱くアニメーターも少なくない。そんな悩みを軽減するために、タイムシートの要素をタイムラインで表現できる機能が標準のカスタマイズパネルとして搭載された。最終的にはタイミングなどを書き込んだタイムシートを出力することができる。
こうしてアナログからデジタルへと移行し、仕上げ工程へと移っていくのだが、仕上げ工程にも重要な機能が追加された。上述の[スキャンクリーナー]等で二値化された線画は彩色されるが、ここで便利なのが[アドバンスラインカラーズFX]と[カラーチェッカー]だ。[アドバンスラインカラーズFX]はトレス線の含み塗りを簡単に行えるようにする機能で、カラーセット(影、普通、ハイライト)を設定した後に、塗りたいトレス線の色を指定できる。この設定した1枚をベースとして、全ての動画含み塗りを適用することが可能だ。
アドバンスラインカラーズFXの作業画面
また、彩色で起こりやすいのが塗り漏れである。このとき[カラーチェッカー]を使用することで、簡単に塗り漏れを検出することができる。細かな塗り漏れは作業中発見しづらいため、クオリティ維持のためにも有用な機能だ。
ほかにも色の変更・修正に有効なのが[複数色の置き換えFX]と[ペンツールモード BカラーからAカラーへ]である。[複数色の置き換えFX]はその名の通り、シーンごとに置き換え指定をした全ての色を一度に変更できる。ペンツールには、Bカラーに選択された色をAカラーに選択された色にのみ塗り替えることができるモードが追加された。色修正の際に力を発揮してくれる。
複数色の置き換えFXの作業画面
ユーザーの要望に応える新機能たち
インタビューからもわかるように、TVPaint Animationではクリエイターたちを第一に考え、その意見をとても大切にしている。各国から受けた意見はリスト化しているという話もあったが、TVPaint Animation 11でも、そんな意見を基にした様々な改善が行われた。ここでは実装された5つの機能について紹介する。
まず1つめが「表示の位置の保護のオプションの追加」だ。表示の回転を行う際に、そのまま表示を保持できるオプションを追加した。
2つめが[Ctrl +Shiftキー]による「直線描画」である。[Ctrlキー]と[Shiftキー]を押すことで直線を引くことができるようデフォオルト設定を変更した。好きな角度や太さで自由に描くことができる。
3つめが「リネームインスタンスの[スマートモード]の追加」だ。必要なものにのみ半自動的にリネームできるなど、インスタンス名を簡単に変更できる機能である。タイムシートを出力する場面では大いに役立ちそうだ。
4つめが「After Effectsへのタイムラインの反映」である。タイムラインをAEへと反映できるように、新たな書き出しフォーマットとして「.json」を追加した。
そして最後、5つめが「[色を積む――フローティングタイプ]のショートカット」である。設定したキーを押し続ける間、[色を積む]機能を使用でき、リリースすれば元のツールに戻る。ひとつのキーで簡単に切り替えが可能となった。
このように、より使いやすいデジタルツールを目指して、細かな設定の変更にも誠実に対応していることがわかる。ひとつひとつの要望に徹底して向き合っているからこそ、デジタルツールの最前線を走り続けることができているのだと痛感した。ぜひ最新のTVPaint Animation 11に実際に触れ、その使いやすさをその手で実感してほしい。
体験版のダウンロードはこちらから
※ダウンロードには、「アカウント作成」からユーザーアカウントの登録が必要です
-
●INFORMATION
製品名:TVPaint Animation 11
価格:TVPaint Animation 11.0 フルコマーシャルライセンス プロフェッショナルエディション 1,250ユーロ/同 スタンダードエディション 500ユーロ/TVPaintクリエーション・パック 1.0 150ユーロ
お問い合わせ:TVPaint Développement
tvpaint.odoo.com/ja_JP/page/contactus