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アニメーション制作における多くの工程がデジタル化されている昨今。フルデジタル化への試みを耳にする機会も増えてきており、未だに紙と鉛筆が主流といわれている作画工程においても、デジタル化の風が強く吹き始めているのを感じる。デジタル化によって、効率的な作業が可能となり、作業者の負担の軽減やクオリティアップにもつながる。また、過酷な労働環境が問題視される日本のアニメーション業界では、現状打破の一手としても、デジタルツールに期待が高まっているようだ。

そこで今回は、アニメーション制作のデジタル化を牽引するツールメーカーのひとつ、TVPaint Développement(フランス)が目指すデジタルツールのあり方について、開発者インタビューと「TVPaint Animation 11」の機能から紐解いていこう。

TEXT_野澤 慧 / Satoshi Nozawa
EDT_斉藤美絵 / Mie Saito(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota

Q1:自己紹介をお願いします。

ファブリス・ドゥバルジュ氏(以下、ドゥバルジュ):TVPaint Développementでプロダクトマネージャーを務めています。

  • ファブリス・ドゥバルジュ/Fabrice Debarge
    プロダクトマネージャー(TVPaint Développement)

ミカエル・シュライナー氏(以下、シュライナー):TVPaint Animation 11のメイン開発をしています。

  • ミカエル・シュライナー/Michaël Schreiner
    TVPaint Animation 11メイン開発者(TVPaint Développement)

Q2:TVPaint Animationの特徴を教えてください。

ドゥバルジュ:TVPaint Animationは世界70ヶ国で使用されています。ユーザーの割合としては、フリーランスのアニメーター、スタジオ、学校、そして学生が、それぞれ約4分の1ずつを占めています。

シュライナー:TVPaint Animationの大きな強みは、絵コンテから撮影までの全ての工程を、1本のソフトウェアでできることです。様々な技術に対応できるので、劇場作品、TVシリーズ、短編映画、ゲーム、広告など、使用されている場面は多岐にわたります。そのジャンルも2Dアニメーションだけに留まらず、3D素材との組合せ、ストップモーション、ロトスコープアニメーション、カットアウトアニメーションなどいろいろあります。

ドゥバルジュ:ユーザーの要望に積極的に対応できるようにと心を込めています。

シュライナー:TVPaint Animationはアニメーション向けのプロフェッショナルツールで、全ての機能がアニメーターさんの要望に即したものです。世界中のベータテスターの協力を仰ぎ、最良のツールをつくりたいと日々奮闘しています。ユーザーからの要望は全てリストアップして優先順位をつけた上で、ひとつひとつに対応できるよう心がけています。日本にいらっしゃるユーザーの声にも応えた結果、[タイムシート出力スクリプト]、[After Effects出力オプション・入力スクリプト]、[スケッチパネルRGB値]など、多くの機能を開発することができました。最新のアップデートでは、[カラーチェッカー]などの仕上げツールの追加や、アナログとデジタルが混在したワークフローへの対応機能の充実にも力を入れています。ほかにも、TVPaint Animation 11のAndroid版もリリースしました。TVPaint Animationユーザーに限らず、全ての方がプロフェッショナル版をAndroid端末にインストールできます。加えて、iOS版のリリースも予定していますので、さらなるモバイル環境での制作が可能となります。また、近いうちにソフトウェアのプロテクションシステムの変更を予定しています。ドングルあり・なしの各ライセンスタイプに変更することができるようになります。

ドゥバルジュ:今後も日本語専用フォーラム(forum-jp.tvpaint.com/index.php)に要望を出していただければ、開発チームが検討させていただきます。こちらは情報交換スペースとして、チュートリアルビデオやテクニカルサポート、イベント情報などもまとめています。開発スタッフもフォーラムを確認していますので、開発スタッフからの返事がくることもあります。ぜひご利用ください。

Q3:日本のアニメ制作現場にコメントをお願いします。

ドゥバルジュ:TVPaint Animationのスタッフの中にも日本のアニメファンがおり、憧れているジャンルです。大人向けの作品も多く、それらが特に魅力的だと感じています。2Dアニメーションは歴史のある芸術ですが、作品のクオリティおよびワークフロー効率のさらなる向上のために、常に新たな技術を追加したいと考えています。そうしたデジタルアニメーションのイノベーションが、アーティストの様々な表現を叶えてくれると信じています。制作会社の皆さんは、アニメーターさんが作業者である前に、まずアーティストであるということを忘れないでくださいね。


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TVPaint Animation 11から追加された新しい機能

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TVPaint Animation 11から追加された新しい機能

今回のバージョンアップでは、作業の効率を大幅に向上させるようなアシスト機能がいくつも追加されている。アニメーターたちにとっての不要なストレスを可能な限り軽減させ、さらなる表現の探求へと後押ししてくれる機能ばかりだ。大きなテーマとなっているのは、「アナログとデジタルをつなぐワークフローへの対応」と「仕上げ向けツールの充実」の2つ。いったいどんな機能が追加されたのか、ひとつひとつ紹介していこう。

デジタルツールを導入するにあたり、まず懸念されるのがワークフローの変化だ。これまで積み上げてきたワークフロー全てを白紙にして、いきなりフルデジタルの新しいワークフローを構築するのは非現実的である。つまり、既存のワークフローと円滑に結びつけることが、デジタルツールが超えるべき必須のハードルと言える。

そのためには、これまで紙と鉛筆で腕を磨いてきたアニメーターたちにとっても、使いやすいということが必要不可欠だ。アナログとデジタルとで大きな問題となるのは、描き味のちがいだろう。アナログのアニメーターがその描き味の差から綺麗な線が引けなくなるのではという不安を抱くのは当然だ。そこで力を発揮するのが、[ラインスムージング(線補正機能)]である。手ブレを補正し、滑らかな線へと自動的に調整してくれる機能で、デジタルツールの大きな魅力のひとつだ。TVPaint Animation 11では、この[ラインスムージング]に新タイプの[平均(ポイント)]が加わったことによって、繊細な力加減が反映できるようになり、一層自然な線の仕上がりとなった。

アナログによるアニメーション制作の現場の多くでは、紙に描いた動画をスキャンし、スキャンした線画は仕上げ工程で二値化される。その作業をTVPaint Animationでは[スキャンクリーナー:カラーFX]で行うことが可能だ。トレス線の強さを調整できる設定が追加され、綺麗な非アンチエイリアス画像にすることができる。

さらにTVPaint Animationとアナログの大きなちがいのひとつとして、タイムラインが挙げられる。日本では縦に書かれた「タイムシート」を用いるが、TVPaint Animationは横に伸びた「タイムライン」上に画を載せていく。日本のアニメーション業界はタイムシートに慣れているため、タイムラインは感覚的に使いづらいという感想を抱くアニメーターも少なくない。そんな悩みを軽減するために、タイムシートの要素をタイムラインで表現できる機能が標準のカスタマイズパネルとして搭載された。最終的にはタイミングなどを書き込んだタイムシートを出力することができる。

こうしてアナログからデジタルへと移行し、仕上げ工程へと移っていくのだが、仕上げ工程にも重要な機能が追加された。上述の[スキャンクリーナー]等で二値化された線画は彩色されるが、ここで便利なのが[アドバンスラインカラーズFX]と[カラーチェッカー]だ。[アドバンスラインカラーズFX]はトレス線の含み塗りを簡単に行えるようにする機能で、カラーセット(影、普通、ハイライト)を設定した後に、塗りたいトレス線の色を指定できる。この設定した1枚をベースとして、全ての動画含み塗りを適用することが可能だ。


アドバンスラインカラーズFXの作業画面

また、彩色で起こりやすいのが塗り漏れである。このとき[カラーチェッカー]を使用することで、簡単に塗り漏れを検出することができる。細かな塗り漏れは作業中発見しづらいため、クオリティ維持のためにも有用な機能だ。

ほかにも色の変更・修正に有効なのが[複数色の置き換えFX]と[ペンツールモード BカラーからAカラーへ]である。[複数色の置き換えFX]はその名の通り、シーンごとに置き換え指定をした全ての色を一度に変更できる。ペンツールには、Bカラーに選択された色をAカラーに選択された色にのみ塗り替えることができるモードが追加された。色修正の際に力を発揮してくれる。


複数色の置き換えFXの作業画面

ユーザーの要望に応える新機能たち

インタビューからもわかるように、TVPaint Animationではクリエイターたちを第一に考え、その意見をとても大切にしている。各国から受けた意見はリスト化しているという話もあったが、TVPaint Animation 11でも、そんな意見を基にした様々な改善が行われた。ここでは実装された5つの機能について紹介する。

まず1つめが「表示の位置の保護のオプションの追加」だ。表示の回転を行う際に、そのまま表示を保持できるオプションを追加した。

2つめが[Ctrl +Shiftキー]による「直線描画」である。[Ctrlキー]と[Shiftキー]を押すことで直線を引くことができるようデフォオルト設定を変更した。好きな角度や太さで自由に描くことができる。

3つめが「リネームインスタンスの[スマートモード]の追加」だ。必要なものにのみ半自動的にリネームできるなど、インスタンス名を簡単に変更できる機能である。タイムシートを出力する場面では大いに役立ちそうだ。

4つめが「After Effectsへのタイムラインの反映」である。タイムラインをAEへと反映できるように、新たな書き出しフォーマットとして「.json」を追加した。

そして最後、5つめが「[色を積む――フローティングタイプ]のショートカット」である。設定したキーを押し続ける間、[色を積む]機能を使用でき、リリースすれば元のツールに戻る。ひとつのキーで簡単に切り替えが可能となった。

このように、より使いやすいデジタルツールを目指して、細かな設定の変更にも誠実に対応していることがわかる。ひとつひとつの要望に徹底して向き合っているからこそ、デジタルツールの最前線を走り続けることができているのだと痛感した。ぜひ最新のTVPaint Animation 11に実際に触れ、その使いやすさをその手で実感してほしい。

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  • ●INFORMATION
    製品名:TVPaint Animation 11
    価格:TVPaint Animation 11.0 フルコマーシャルライセンス プロフェッショナルエディション 1,250ユーロ/同 スタンダードエディション 500ユーロ/TVPaintクリエーション・パック 1.0 150ユーロ
    お問い合わせ:TVPaint Développement
    tvpaint.odoo.com/ja_JP/page/contactus