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ブエノスアイレスを離れ、東京で起業。Onesalのモーショングラフィックスに迫る

ブエノスアイレスを離れ、東京で起業。Onesalのモーショングラフィックスに迫る

東京と聞くだけで、多くの人が興味をもつ

C:先ほど『Discovery Japan "Sculptures" Filler』の制作期間はOnesalとしては長い方だとおっしゃいましたが、他にはどんなケースがありますか?

サルセド:例えばニコライ・バーグマンから依頼された『Hanami 2050 - Digital Flower Installation』は、私を含む数名のアーティストが約3週間で制作しました。本作の場合は、一部のサウンドエフェクトも私がつくっています。

▲『Hanami 2050 - Digital Flower Installation』の第一段階でつくられたスタイルフレーム。「Future Flowers」というコンセプトのもと、多彩なビジュアルが提案された


▲『Hanami 2050 - Digital Flower Installation』のアニマティック


▲『Hanami 2050 - Digital Flower Installation』の最終段階でつくられたスタイルフレーム


▲『Hanami 2050 - Digital Flower Installation』の完成映像
クライアント:ニコライ・バーグマン
エグゼクティブ・プロダクション:Archie Works
制作:Onesal
ディレクター:ナウエル・サルセド(Nahuel Salcedo)
プロデューサー:アイリン・ブルンナー(Ailin Brunner)
デザイン・アニメーション:ディエゴ・ディアポロ(Diego Diapolo)、ナウエル・サルセド(Nahuel Salcedo)
アディショナル・アニメーション:デイビッド・キーン(David Kvien)、柳生大志(Taishi Yagyu)
サウンドデザイン:ダニエル・ペレス(Dany Perez)、ナウエル・サルセド(Nahuel Salcedo)


Hanami 2050での『Hanami 2050 - Digital Flower Installation』の展示の様子。このプロジェクトで制作した3種類のループアニメーションは2018年3月29日∼4月1日まで福岡県の太宰府天満宮で展示され、日本はもちろん、アメリカのニュースでも取り上げられた。「このプロジェクトを通して、インスタレーションや展示への興味が高まりました。今後はモーショングラフィックスに加え、ファッションや現代アートなど、ほかのジャンルとのコラボレーションにも挑戦したいです」(サルセド氏)


C:現在のクライアントは、日本とそれ以外のどちらが多いですか?

ブルンナー:日本以外のクライアントが多いです。これまではイギリスが多かったですが、メルボルン大学がクライアントの『Infinite Futures - The University of Melbourne』を手がけて以来、オーストラリアからの依頼も増えました。

C:そんな中で、東京に拠点を設けるメリットは何なのでしょうか?

サルセド:これは個人的な意見ですが、海外のデザイナーから見ると、東京は憧れの場所のひとつなのです。素晴らしいデザインや作品が生み出される都市だから、興味をもつ人は多いし、来たがる人も多いです。そんな東京に拠点を設け、アートディレクションをしている会社というだけでワンランク上のスタジオだと思ってもらえます。誰かに来てほしい場合も、東京であれば喜んで足を運んでくれます。

ブルンナー:東京と聞くだけで、多くの人が興味をもちますね。ブエノスアイレスにいた頃の私自身もそうでした。

サルセド:それから東京には数多くの優秀なアーティストがいますから、コラボレーションの相手に事欠きません。今後Onesalのビジネスが大きくなったとしても、アーティスト集めに関しては心配無用だと思っています。さらに中国、シンガポール、インドネシアなどが近いため、アジア各国から仕事の依頼がきます。最近は中国からの依頼が増えていますね。

▲『Infinite Futures - The University of Melbourne』の第一段階でつくられたスタイルフレーム


▲『Infinite Futures - The University of Melbourne』のストーリーボード


▲『Infinite Futures - The University of Melbourne』の最終段階でつくられたスタイルフレーム


▲『Infinite Futures - The University of Melbourne』のメイキング映像


▲『Infinite Futures - The University of Melbourne』の完成映像。本作はメルボルンモデル(同大学独自のカリキュラム)を紹介するブランドキャンペーンの一環として制作された。「メルボルン大学で進行中の研究に基づき、その可能性を示唆する16の抽象的、かつ幻想的な風景を表現しました。2017年10月に最初の紙面広告が発表されて以降、関連映像が様々なメディアで公開されています」(サルセド氏)
クライアント:メルボルン大学
代理店:McCann Melbourne
制作:Onesal
ディレクター:ナウエル・サルセド(Nahuel Salcedo)
プロデューサー:アイリン・ブルンナー(Ailin Brunner)
デザイン・アニメーション:ナウエル・サルセド(Nahuel Salcedo)、ダミアン・センディン(Damian Sendin)、マーティン・サルフィーティ(Martin Salfity)
アディショナルデザイン・アニメーション:ロバート・サンデリン(Robert Sundelin)
デザインアシスタント:菅野久子(Hisako Sugano)
サウンドデザイン:アンドレア・ダミアノ(Andrea Damiano)

本作は以下のアワードを受賞している
Adfest 2018 - Design Lotus - Silver Award Winner
Adfest 2018 - Film Craft Lotus - Bronze Award Winner

黙らないで、本当に思っていることを言った方がいい

C:Onesalではインターンの受け入れや新卒採用もなさっていますが、選考では何に注目しますか?

サルセド:私たちの好きなテイストを好きだと感じてくれる人を求めています。その上で、アートディレクションに興味をもっている人がいいですね。作品に対してこだわりをもち、安易に満足せず、「ここがいい」「ここはよくない」「ここはもっとこうした方がいい」という判断ができる人、あるいは判断できるようになろうと努力している人であれば、アートディレクターに向いていると思います。


C:では、最後の質問です。日本のCGプロダクションやアーティストが海外の人たちとコラボレーションをするとき、心がけておくといいことがあれば教えていただけますか?

サルセド:黙らないで、本当に思っていることを言った方がいいです。しかも、早く言った方がいいです。日本人は上下関係や立場をすごく大事にしますが、最大の目的は一番いいものを世に出すことです。その目的を達成するためには、上下関係を忘れてフラットに話し合う必要があると思います。実際、ロンドンやニューヨーク、ロサンゼルスのハイレベルなスタジオはそれを実践していますし、Onesalも同様です。

ブルンナー:言いたいことを我慢していると、いいアイデアが浮かばなくなります。Onesalでは、みんなが言いたいときに、言いたいことを言います。

C:お話いただき、ありがとうございました。今後の作品も期待しています。

Profileプロフィール

ワンサル/Onesal

ワンサル/Onesal

アルゼンチン出身のナウエル・サルセド氏(写真下段中央)が、2014年に東京都 目黒区にて設立したCGプロダクション。現在は世田谷区に移転。デザインとモーショングラフィックスを得意とし、国内外のクライアントのCM、チャンネルID、ビデオプロダクト、デジタルサイネージ、音楽PV、ビジュアルアプリなどを手がける。世界各地のアーティストとのコラボレーションによって生み出される映像美は、SIGGRAPH AsiaやADFESTなど、様々なアワードで評価されている。
www.onesal.com

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