>   >  "いつも自然体で、客観的な視点も忘れない。"(AC部)「20人に聞く」<1>CGWORLD創刊20周年記念シリーズ企画
"いつも自然体で、客観的な視点も忘れない。"(AC部)「20人に聞く」<1>CGWORLD創刊20周年記念シリーズ企画

"いつも自然体で、客観的な視点も忘れない。"(AC部)「20人に聞く」<1>CGWORLD創刊20周年記念シリーズ企画

<2>『ポプテピピック』の反響はケタちがいだった

CGW:仕事のオファーも増えて必然的に作業量も増えたかと思いますが、AC部は今後「部員」を増やす予定はございますか?

安達:増やしていこうとは思っています。ただ、20年近くふたりでやってきていていることもあり、どうやって体制を広げていけばいいのかわからなくて......高いスキルを持っているクリエイターで、AC部みたいな(わざと崩した)作風を甘んじてやってくれる人がいるものか、全然想像がつきません(苦笑)。

CGW:一連の制作は、現在もふたりだけで完結されているのでしょうか?

板倉:最近は外部パートナーに手伝ってもらいながら動くことが多くなってきましたね。あと、自分たちでAfter Effectsを使いこなすのと同じくらいの感覚で3DCGが扱えたらなあと思うことが増えてきたこともあって、CGができる人がメンバーにいてほしいと考えるようにはなりました。

CGW:新しい表現手法として、3DCGを採り入れていくということですか?

安達:今までどおり2Dベースでやっていくのも表現的な限界があるし、できることを広げることで新たな表現を創り出せればと思っています。インタラクティブコンテンツなどもやってみたいですね。

CGW:新しい表現と言えば、高速紙芝居『安全運転のしおり』(2014)は秀逸でした。『ポプテピピック』でも原作漫画に登場する「ヘルシェイク矢野」を高速紙芝居で描いたことが大きな話題になりましたね。

板倉:おかげさまでたくさんの反響をいただきました。実は、今年の「アニサマ」(Animelo Summer Live)にヘルシェイク矢野が出演することが決まったんですよ。

  • ヘルシェイク矢野のアニサマ出演が決定!
    現在、多忙を極めるAC部、本インタビューも過密スケジュールの合間をぬって実施。新作も鋭意準備中とのことだが、なんとアニメ『ポプテピピック』にてAC部が披露した高速紙芝居で社会現象を巻き起こした「ヘルシェイク矢野」が今年のアニサマに出演することが決定!
    詳しくは、公式サイトをチェック

© Animelo Summer Live 2018 / MAGES.
Animelo Summer Live 2018 "OK!"

日時:8月24日(金)、25日(土)、26日(日)各日14:00開場、16:00開演 ※ヘルシェイク矢野は、8/26(日)の公演に出演
会場:さいたまスーパーアリーナ
anisama.tv/2018


CGW:ご自身で3DCGを習得しようと思われたりは?

安達:まさに、「今年こそはCinema 4Dを覚えたい」という強い気持ちを胸に新年を迎えたところでした。表現の幅を広げるために今年こそはやるぞ! と。

CGW:半年が経ちましたけど......?

安達:なかなか思うようにはいきません(苦笑)

CGW:他のアーティストとコラボレーションするというのもアリですよね。

安達:確かにそうしたお誘いをいただくことはあります。これからは、自分たちの方から他の方々へコラボレーションを持ちかけることも考えていかないとですね。

CGW:先ほど、Twitterによるリサーチを創作のよりどころにされているとおっしゃいましたが、AC部の活動をTwitterなどのSNSで拡散しようと思ったりはしませんか?

安達:うーん、ねらうと大抵上手くいかないんですよね(苦笑)。

板倉:そう。自分たちからの発信ではバズらないんですよ。Twitterの特性もあるかも。そうした意味でも、上手くひろってもらえるような面白い作品をつくる、ということくらいしか思いつかない。

安達:そもそもSNSにコンスタントに投稿し続けること自体、あまり自分たちに向いていないんですよね(笑)。本当に続かなくて......。投稿するべきトピック自体は日々あるにはあるんですが、意識していないもんだから「そうか。あの写真を撮って投稿すればよかったのか」と、後悔するみたいな(笑)

CGW:そうはおっしゃいますが、10年以上前からAC部に注目してきた身からすると()、着実に世間に対する影響力を高めていると思いますよ。

 AC部が初めてCGWORLDに登場したのは、本誌90号(2006年2月号)第2特集「ディレクター実践演出術」で取り上げた、ザマギ『マジカルDEATH』MVのメイキング記事である

安達:たまたまの積み重ねですけどね......。ただ、『ポプテピピック』の反響はこれまでとはケタちがいでした。

CGW:『ポプテピピック』以降、AC部の活動に変化はありましたか?

安達:お仕事やインタビューのオファーが増えました。あと、初対面の方でもAC部のことを知ってる人が増えた気も......。SNSのフォロワー数も増えましたけど、自分たち自身は特に変わりなく意外と冷静です。

CGW:改めて、おふたりが本当につくってみたいものとは、どのようなものなのでしょうか?

安達:明確にこれというものがあるわけではないのですが、やりたいことって自分の内側からその都度自然と出てくるものですよね。普通にカッコイイものや普通にクオリティの高いものをつくってみたいとは思いますよ。でも、普通にそれをやろうとしても、中途半端で全然面白くないものになってしまう気がするので今はまだ早いかなと......。

板倉:今のAC部の活動って「結果(反響)を楽しむ」という面が大きいわけですが、つくっているときも楽しいと思えるようなそんなバランスの良い感じでやっていけるなら自分としてはハッピーなのかなと思っています。結果にこだわらず、自分の感覚でつくるということなのかもしれませんが、それってアートなんですかね?

  • CGWORLD創刊20周年記念キャラクター
    マゥスーマウス

    なんと、AC部さんに本誌の創刊20周年を記念したキャラクターを描き下ろしていただきました! 圧倒的な個性と強烈なインパクトと同時に親しみやすさも兼ね備えている......さすがです! 今後展開していく企画やキャンペーンに、このキャラも登場する予定のでお楽しみに

    【AC部コメント】
    「キャラクター制作にあたり、ひと口にCGと言っても手法やジャンルがあまりに多様なので苦悩しましたが、コンピュータに初めて触ったときのことを思い出し、マウスと手がモチーフのキャラクターが誕生しました。」


CGW:AC部は、学生時代からずっと自然体で活動を続けているとのことなので、"本当につくりたいもの"も自然の流れで誕生するのかもしれませんね。

安達:これまでも、時間をかけてでもやってみたいと思うことは実現し続けているので、これからも「続けること」ですね。

CGW:最後に、クリエイターを目指す方へのアドバイスをいただけますか?

板倉:僕が少し気になっているのは、「良い/悪い」の基準を特定のコミュニティ内で暗黙の了解で決め込まれていて、それが息苦しく感じることがあるんです。例えば「萌え」とか「美形」といったカテゴリーがあったとして、その中で確立されている「こう描かなければならない」というものを追うのではなく、それとはちがう、新たなものを自分の作品に取り入れるとか。しがらみのようなものを壊してやってみた方が楽しいんじゃないかなと。

CGW:創作活動は本来自由で楽しいもののはずなのに既成概念に囚われてしまい、重苦しくなってしまうという悩みはあるでしょうね。

板倉:自分が好きでやっていて、息苦しくなければそれで良いのでしょうけどね。

安達:最近は、Twitterでも描き方などのTIPSを教えてくれたりするじゃないですか。無料のチュートリアル動画とかも数多くあって、どれもクオリティが高い。そうした情報がちゃんと蓄積されているから、巧い人が多いなあと感心します。ただ、これってスポーツに近いなとも思うんですよ。みんなひとつの目標を目指してがんばって練習している、みたいな。でも、クリエイティブは競技スポーツではない。いろんな表現手法があるし、ちょっと目を外に向ければい面白い人たちがたくさんいるので......自分たちもがんばらないと(笑)



Profileプロフィール

AC部(安達 亨/板倉俊介)<br>AC-bu(Toru Adachi / Syunsuke Itakura)

AC部(安達 亨/板倉俊介)
AC-bu(Toru Adachi / Syunsuke Itakura)

AC部は、1999年頃に多摩美術大学在学中に結成されたクリエイティブチーム。ハイテンションで濃厚なビジュアル表現を持ち味に、映像やイラストレーションなどあらゆる形の創作に挑み、人々の暮らしに驚きと生きる活力を与えていくことを目的とした部活動であるとは、本人たちの弁。
www.ac-bu.info

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