>   >  実写監督と日本人アメコミアーティストが贈る、虫たちの冒険活劇!? 3DCGアニメ『スペースバグ』放送開始直前対談(後編)
実写監督と日本人アメコミアーティストが贈る、虫たちの冒険活劇!? 3DCGアニメ『スペースバグ』放送開始直前対談(後編)

実写監督と日本人アメコミアーティストが贈る、虫たちの冒険活劇!? 3DCGアニメ『スペースバグ』放送開始直前対談(後編)

<2>虫の特徴を残しつつ削ぎ落としたデザインのサブキャラクター

CGW:主人公の仲間キャラクターであるハカセ(コオロギ)、マルボ(クモ)はどのようにつくりましたか?


ミッジと行動を共にするハカセ(左)とマルボ(右) ©W.BABA & TMS

中尾:ビジュアル面から想定していった感じですね。トリオでよくある、細いのと、丸っこいのと、メガネキャラみたいなかたちで、インテリのメガネだったら何の虫だろうと考えてコオロギ、そして丸っこいのならクモかなと。どちらも宇宙実験によく連れて行かれる虫ですし。マルボに関しては、後になってからクモが糸を出すということを思い出して作品にも盛り込んでいますが、最初からその能力を出してしまうとスパイダーマンみたいに何でもできる最強キャラクターになってしまう。だから、食いしん坊で、トラウマがあって糸を出せないというキャラクター性を先に出せばストーリーにも立体感が出るなと。

ハカセのデザイン画(左&右上)とCGモデル(右下)

ササキ:マルボはモデリングの段階で見せていただいてかなりやり取りをさせていただいていたんですよね。

中尾:口の接地面は3Dにするとなかなか難しかったりして。グリヒルさんの絵は、表情にしても2Dだからこそ出せる良さがあって、3Dにするときに結構時間がかかりましたね。

マルボのデザイン画(左上&右)とCGモデル(左下)

ササキ:手足は4本にすると決めたのは監督でしたっけ? 6本や8本にすると気持ち悪くなるからと。マルボがモンスターぽくなったときは戻しましたよね。どのキャラクターも、虫としての特徴は残しつつ、見ていて気持ちが悪くないように削ぎ落としていきました。

中尾:『ズートピア』(2016)などにも言えることですが、キャラクターが立てば実際動物の造形が正確に再現されているかどうかは気にならなくなるんですよね。アニメーターも慣れてきますし、フェイシャルについても、最初は何回かやり直しをしていたけれど、最近は微笑み方がすごく可愛くなっていって。キャラクターを掴んでいくという点では人間の役者と似ている感じがします。プレスコなので声の芝居を取ってからCGをつけていただいています。

ササキ:後半に登場するキャラクターの場合はデザインの前に先に声をいただくということがありましたね。


©W.BABA & TMS

CGW:カエルのゲロッパは、怖いキャラクターでありつつもどこか愛嬌がありますね。

中尾:彼はシリーズ通しての悪役みたいな位置づけですね。ルパンと銭形、トムとジェリーのように、ずっと追いかけ続ける永遠のライバルみたいな関係。

悪の親玉・ゲロッパのデザイン画(左)とCGモデル(右)

カワノ:拾ったボタンを眼帯にしていて、そうしたところでちょっとした親分気質というか、すごい悪役ではない感じを出していると思うんですよね。最初はもっと黒い色のパターンを出したら、怖すぎて修正しました。

ササキ:大きさについては悩みましたね。世界で一番大きいカエルをモデルにしているので、実際の対比にすると虫たちが小さくなりすぎてしまうので。

中尾:同じセット上で画面が成り立たなくなるし、さらに人間の活動場所を舞台にしているから余計にバランスが悪くなる。そのあたりは物語上の演出ということにしています。

ササキ:他のキャラは2Dでいい感じのフォルムにして、あまり3Dのことを考えなかったのですが、ゲロッパ、イトー、カトーのカエル3匹だけはまっすぐ立たせずに膝が曲がっている感じにしました。

ゲロッパの手下、イトー(上段)とカトー(下段)

カワノ:他作品に登場するカエルのキャラクターはシャンと立つ場合が多いのですが、それが艶かしくて苦手だったので、蹲踞の姿勢のまま歩くようにしています。

中尾:あまり3Dのことを考えず、遠慮せずデザインをしていただけたことが良かったです。

CGW:クマムシのワンは作劇として使い勝手が良さそうですね。

中尾:そうなんですよ。放射線を浴びても、宇宙に出ても死なない不死身なので(笑)。だからブラックホールを舞台に、いつもはできない『ポールのミラクル大作戦』(1976)のような不思議なお話をつくることができました。


  • クマムシのワンのデザイン画(上段)とCGモデル(下段)

ササキ:このキャラクターは不思議感を出すために他のキャラクターと区別してちょっと虫寄りのデザインにしています。あとは表情をどう付けるかで、目や口がみえないので眉毛と髭で動きがわかるようにしています。

中尾:これは多少不気味という感じでも良かった。その他にもいろいろな虫が出てくるのですが、制作スタッフが参考に気持ちの悪い写真資料ばかり渡すんですよ(笑)。後半は動物や水棲生物、他にもよくぞこれをキャラクターにしてくれたみたいな虫も出てきますよ。


©W.BABA & TMS

CGW:最後に、この作品をどのように見てほしいですか?

カワノ:モチーフが虫と聞くと、驚かれるかもしれませんが、デザインとお話が楽しくできているので、そこに囚われず見ていただけたらと思います。

ササキ:まっすぐ、王道のところが伝わってくれればいいなと思います。そのなかのしかけを楽しんでもらえれば嬉しいです。パッと見の印象で子どもが似顔絵で描けるような、色もクレヨンにあるようなカラフルなデザインで、キャラクターの構造も丸と棒で真似しやすいので、お子さんには似顔絵を描いてもらえたら嬉しいですね。

中尾:子どもたちには、最初はまずアクションにハラハラドキドキして楽しんで観てもらえると思います。そして大きくなったり、自分が親になったときに、実はこういうテーマをもった作品だったんだと思い返してもらえるような、長きに渡って気に入ってもらえる作品になってくれたらと思います。後半はシリアスな展開や社会風刺も入っていますが、ギャグも散りばめているのでそういう目線でなくともキャラクターやアクションで楽しめると思います。僕らが昔観ていたアニメのように観てもらいたいですね。

Profileプロフィール

中尾浩之&グリヒル

中尾浩之&グリヒル

監督・脚本:中尾浩之氏(写真中央)、キャラクターデザイン:グリヒル(写真左右)

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