<2>フィルム(アニメシリーズ)とライブストリーミングの2本柱
キャラクターやシナリオ開発において重視されている点をお聞かせください。
頼:中国から展開するということで、当初はアイドルの5人全てを中国人という設定にするかどうか迷いました。ですが、中国だけではなく、アジアでも通用するコンテンツにしたいという想いから、5ヵ国のアイドルが集まって選抜される「世界の甲子園」に改めました。さらにアイドル作品ということで音楽性の幅をもたせつつストーリーに組み込めるよう、英・米・露・日・中のキャラクターにしました。現在、中国の若者は以前よりずっと海外旅行に行くようになっていますので、外国の文化にも興味をもつ人が増え、外国人キャラクターでも興味を抱いてくれるのではないか。そして、華僑は世界中にいるので、彼らを取り込むのも狙いの一つです。
菊池:キャラクター性を出す上で、出身国がバラエティに富んでいるのは大きな強みです。異なる個性同士をぶつけることでドラマやイベントが生まれますから。ストーリーづくりで大変だったのが、5分間の中でドラマをきちんとつくる必要があったことですね。かつ、この企画は参加型ですから明確に主人公を置くのではなく、できる限りバランスよく見せ場をつくる必要があります。そこでシナリオとして長め(7~8分程度)につくり、それを凝縮させているんです。
ライブストリーミングより
平池:李 清歌(中国)のキャラクターが最初とは大きく変わりましたね。日本のアニメだと主人公的な子は、デキの悪い子が努力してがんばって輝く、というパターンが多いのですが、中国のユーザーには、ある程度完成されたキャラターが人気というリサーチでした。
頼:あとは、キャラクター設定の中にマネタイズに使える要素は盛り込んでいく必要がありました。プロダクトプレイスメントになりそうな衣装や、ライブストリーミングで話題にできそうな内容とか。どちらも実際に展開できています。
【战斗吧歌姬!】ライブストリーミング ダイジェスト その10 (日本語字幕付き)
演出面においてはいかがでしたか?
平池:手描きアニメの演出をしていた人間からすると最初は、「何でこんな簡単なことができないケースが多いんだろう」と思いました(笑)。でも一方で「劇場版でもないと許されない演出が、何と簡単にできるんだろう」という発見があったことも面白かったですね。例えば、シーズン0に、アイドルたちが長々と会話をしながら廊下を歩いていくというカットがあるのですが、これは作画だと非常に負担が大きい画づくりなんです。でもCGだと事も無げにできる。あとは、モーションキャプチャ収録後の動きの修正も即座に対応ができたり。その意味で実写的ですね。CGにも不得手な描写はありますが、回避する方法はこれまでの自分の経験にありますし、CGが可能なことにおいては表現を加減する必要がないというのは大きなメリットだと言えますね。シーズン0では各話で自分なりに課題をもって挑戦し、それをシーズン1に反映させています。キャラクターモデルやフェイシャルも改良されずっと良くなっているんですよ。
ライブストリーミングより
技術面の課題はいかがでしたか?
野澤:HEAPのチームはこれまでゲームタイトルは数多く開発されていらしたのですが、映像作品は初めてとのことだったので、映像的なセオリーに理解を深めていただくことからはじめました。ですが、ここを覚えてしまえばゲームと共通のツールはあるし、何より中国メンバーは技術の吸収に対して貪欲なんです。原案を教えれば、自分なりのオリジナリティを入れて良くして返してくる。「好きだからつくっている」という、熱い想いを感じます。
頼:HEAPのエンジニアたちはUnityには詳しいのですが、工程の前半で使うMayaなどのCGアニメーション作成用ツールについてはあまり詳しくなかったので、最初はチャレンジングだったと思います。現時点ではアニメをつくるチームとライブストリーミングの2チーム体制なのですが、日本のチームと組むことでライブストリーミングをどんどん改良してくれました。日本の方も素晴らしい経験値があるので、そこは上手くコラボレートできていると思います。
野澤:それをつなぐ通訳さんが素晴らしいお仕事をしてくれているんですよ。やり取りはSlackで行なっているのですが、自動翻訳以上のスピードと精度で行なってくれています。
頼:技術的な用語についても、その前に理屈を知らないと正しく翻訳できないので、中国の技術チームとミーティングして勉強させています。私は日頃から「あなたたちは単なる翻訳ではなく、架け橋だよ」と発破をかけています。翻訳チームも自社の社員なのですが、この体制を組めていることは誇りですね。
ライブストリーミングより
日本での今後の展開について教えていただけますか?
頼:『リブドル!』のミニプログラムの日本語化を進めて日本の方が参加しやすい体制をつくりたいと思います。それから、ライブストリーミング等のコンテンツも日本語でも実施できたらと思います。この企画がVTuberとちがうところは、しっかりと構築された世界観の中で、キャラクターIPをつくっているところです。アニメシリーズは実際のアイドルでいうドキュメンタリーの位置づけで、ライブストリーミングが劇場でのパフォーマンスやお客さんとのインタラクティブなんです。制作チームもそれぞれで起きたことを互いにフィードバックして、より高めた表現にしてシーズン2に向けて制作を進めています。Twitterの日本語アカウントではひき続き情報を出していきますので、まずは『リブドル!』で検索してください!
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