Happy Elements Asia Pacificが展開中のバーチャルアイドル『战斗吧歌姬!』(中国語原題)、タイトルは『ReVdol! -VIRTUAL IDOLS NEXT TO YOU-』に決定した。
歌声で世界を救うアイドル「スワン」候補生たちをアニメやライブストリーミングを通じて描く。そして、その姿に好感を抱いたサポーターたちの応援をリアルタイムで反映させる。ありそうでなかったアイドルプロジェクトはいかにして誕生したのか?

TEXT_日詰明嘉
EDIT_沼倉有人 / Arihito Numakura(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada

『ReVdol!』(リブドル!)
※中国語タイトル『战斗吧歌姬!』(じゃん どう ばあ ぐう じい!)

〈公式Twitter〉 @Re_Vdol
〈公式YouTubeチャンネル〉 youtube.com/channel/UC1AYIkgyMfM0UT8xZnvzWGQ
〈bilibili動画〉 space.bilibili.com/364225566

<ストーリー>
世界各地に突如現れた「ナイトメアドーム」。地球を飲み込み、災いをもたらすドームを消し去ることができるのはたったひとつ、「スワン」と呼ばれるアイドルたちの歌声であった......。中国、日本、米国......各国から集められた素質ある少女たち。彼女たちはスワン育成機関であるイドゥン機関にて日々、厳しい訓練をこなし人々に愛され、ドームに対抗できる「スワン」を目指す

©2019 Happy Elements Asia Pacific Co., Ltd. 037



<1>CGアイドルを手がける上で重要な3つのコンセプト

まずは『ReVdol !』(以下、リブドル!)企画が誕生した経緯を教えてください。

Happy Elements Asia Pacific(HEAP)・頼 嘉満エグゼクティブプロデューサー(以下、頼):アイドルのキャラクターIPを展開することが前提としてありました。それにあたり大きく3つのコンセプトを立てました。まずファンとの距離感を縮める上で重要な「インタラクティブ性」。そして時流を汲んだコンテンツであるという「リアルタイム感」です。現状、手描きのアニメは各社制作ラインが埋まっていて、企画から放送まで数年かかってしまいます。手描きには独自の良さがありますが、トレンドに合わせた作品づくりをする上では新たな技術とエンターテインメント性の組み合わせが不可欠でした。3つ目は「マネタイズ」です。従来の映像コンテンツのパッケージ販売やゲームによるビジネスが曲がり角にきているなか、新たなビジネスモデルを構築する必要があります。この3つを模索しているとき「CGならばこれが可能なのでは?」と思い、知人をたどって野澤さんを紹介してもらいました。そこで「1週間でCGアニメをつくりたいんですけど」と相談したところ、「長さによりますが、できますよ」と教えてもらったのがプロジェクトのはじまりですね。

『リブドル!』の世界観


『リブドル!』作品世界の設定とコンテンツ展開、そして現実世界のファンたちとの関わり方を図示したもの。アニメやライブストリーミングといった各種コンテンツを通したアイドルたちの活動と、それに対するファンのリアクション(応援など)を可能な限り即座に反映させることを目指している



GUNCY'S・野澤徹也氏(以下、野澤):僕はずっとCGプロダクションにいたこともあり、量産とスピードには自信があったので、安請け合いをしたつもりはなかったんです。ただ、企画からプロジェクトに入るのは初めてで、プランニングはできても実際にやってみないことには机上の空論ですので、「Project MariA」という技術検証プロジェクトを起ち上げ、2017年8月末のCEDEC 2017で成果を発表することにしました。

:シナリオライターの菊池さんと出会ったのはその少し前ですね。知人を通じて紹介していただき、さらに菊池さんと旧知でいらっしゃるサテライトの金子文雄プロデューサーから平池監督を紹介していただきました。

シナリオ・菊池たけし氏(以下、菊池):「インタラクティブ性」のあるユーザー参加型企画だと言われて、私に話がきたことに合点がいったんです。僕は'80年代後半から雑誌で読者参加企画を連載していたので、その面白さは実感していました。頼さんを紹介してくださった知人も、当時の読者だった人なんです(笑)。その頃は読者に募集をかけてから誌面に結果が出るまで2ヶ月かかっていたのですが、現代の技術ならリアルタイムにできそうだというところが面白いなと思いました。

平池芳正監督(以下、平池):以前から手描きとCGのハイブリッドなアニメに親しんでいたのですが、フルCGを手がけたことはこれまでなかったので、チャンスだなと感じました。私の印象ではHEAPは企画力が高いですね。もちろんシナリオ打ち合わせから参加していますが、あくまで企画をベースにキャラクターをどのように動かしていくか、というハンドリングをしています。



  • 『リブドル!』中核メンバー
    左から、菊池たけし氏(フリーランス)、頼 嘉満エグゼクティブプロデューサー(Happy Elements Asia Pacific)、平池芳正監督(サテライト)、野澤徹也氏(GUNCY'S



:監督たちをお呼びする前、2016年の年末からHEAP社内で企画会議をくり返し行なってきました。今回の企画は当初から成長が見込まれる中国から展開したいと考えていたんです。そして、「リアルタイム感」「インタラクティブ性」を用いて「マネタイズ」につなげていくしくみをつくる上で、中国市場の独自性を考慮する必要がありました。中国には約10億人ユーザーをもつメッセージアプリWeChatがあります。このアプリプラットフォーム内にミニプログラムとして『リブドル!』プラットフォームを開発しました。このミニプログラムは、動画再生、ファン投票によるリアルタイムランキング表示等の機能があります。また、わざわざ新しくアプリをインストールぜずともアクセスができ、WeChat内で友だちの紹介からすぐに導線をつくることができます。さらに、eコマースまで完結できるのです。

野澤:僕は10年以上前から中国の経済成長とその大きなマーケットに注目し、魅力的に感じていました。ただ、このプロジェクトも最初は本当に手探りで、いきなり大きなものをつくるよりも、まずはつくって成長させていくことが重要だと思い、先ほどの「Project MariA」から進めていきました。実は僕自身はアニメもゲームも詳しくなかったのですが、その過程でセル調の良いCGコンテンツをつくっている人たちをTwitterでどんどんフォローしていって、どんな絵が良いのか、キャラクターづくりの中核となる人を地道に探していきました。

アニメシリーズより



:私も心がまえとして、最初から全てをつくり込んで決めるのではなく、ユーザー参加型で反応によって軌道修正をしていくことを意識していました。そこでまず、監督や菊池さんと『リブドル!』のシーズン0をつくり、ワークフローやパイプライン、必要なツール開発を進めていくことにしました。



アニメシリーズより



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<2>フィルム(アニメシリーズ)とライブストリーミングの2本柱

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<2>フィルム(アニメシリーズ)とライブストリーミングの2本柱

キャラクターやシナリオ開発において重視されている点をお聞かせください。

:中国から展開するということで、当初はアイドルの5人全てを中国人という設定にするかどうか迷いました。ですが、中国だけではなく、アジアでも通用するコンテンツにしたいという想いから、5ヵ国のアイドルが集まって選抜される「世界の甲子園」に改めました。さらにアイドル作品ということで音楽性の幅をもたせつつストーリーに組み込めるよう、英・米・露・日・中のキャラクターにしました。現在、中国の若者は以前よりずっと海外旅行に行くようになっていますので、外国の文化にも興味をもつ人が増え、外国人キャラクターでも興味を抱いてくれるのではないか。そして、華僑は世界中にいるので、彼らを取り込むのも狙いの一つです。

菊池:キャラクター性を出す上で、出身国がバラエティに富んでいるのは大きな強みです。異なる個性同士をぶつけることでドラマやイベントが生まれますから。ストーリーづくりで大変だったのが、5分間の中でドラマをきちんとつくる必要があったことですね。かつ、この企画は参加型ですから明確に主人公を置くのではなく、できる限りバランスよく見せ場をつくる必要があります。そこでシナリオとして長め(7~8分程度)につくり、それを凝縮させているんです。



ライブストリーミングより



平池:李 清歌(中国)のキャラクターが最初とは大きく変わりましたね。日本のアニメだと主人公的な子は、デキの悪い子が努力してがんばって輝く、というパターンが多いのですが、中国のユーザーには、ある程度完成されたキャラターが人気というリサーチでした。

:あとは、キャラクター設定の中にマネタイズに使える要素は盛り込んでいく必要がありました。プロダクトプレイスメントになりそうな衣装や、ライブストリーミングで話題にできそうな内容とか。どちらも実際に展開できています。



【战斗吧歌姬!】ライブストリーミング ダイジェスト その10 (日本語字幕付き)

演出面においてはいかがでしたか?

平池:手描きアニメの演出をしていた人間からすると最初は、「何でこんな簡単なことができないケースが多いんだろう」と思いました(笑)。でも一方で「劇場版でもないと許されない演出が、何と簡単にできるんだろう」という発見があったことも面白かったですね。例えば、シーズン0に、アイドルたちが長々と会話をしながら廊下を歩いていくというカットがあるのですが、これは作画だと非常に負担が大きい画づくりなんです。でもCGだと事も無げにできる。あとは、モーションキャプチャ収録後の動きの修正も即座に対応ができたり。その意味で実写的ですね。CGにも不得手な描写はありますが、回避する方法はこれまでの自分の経験にありますし、CGが可能なことにおいては表現を加減する必要がないというのは大きなメリットだと言えますね。シーズン0では各話で自分なりに課題をもって挑戦し、それをシーズン1に反映させています。キャラクターモデルやフェイシャルも改良されずっと良くなっているんですよ。

ライブストリーミングより

技術面の課題はいかがでしたか?

野澤:HEAPのチームはこれまでゲームタイトルは数多く開発されていらしたのですが、映像作品は初めてとのことだったので、映像的なセオリーに理解を深めていただくことからはじめました。ですが、ここを覚えてしまえばゲームと共通のツールはあるし、何より中国メンバーは技術の吸収に対して貪欲なんです。原案を教えれば、自分なりのオリジナリティを入れて良くして返してくる。「好きだからつくっている」という、熱い想いを感じます。

:HEAPのエンジニアたちはUnityには詳しいのですが、工程の前半で使うMayaなどのCGアニメーション作成用ツールについてはあまり詳しくなかったので、最初はチャレンジングだったと思います。現時点ではアニメをつくるチームとライブストリーミングの2チーム体制なのですが、日本のチームと組むことでライブストリーミングをどんどん改良してくれました。日本の方も素晴らしい経験値があるので、そこは上手くコラボレートできていると思います。

野澤:それをつなぐ通訳さんが素晴らしいお仕事をしてくれているんですよ。やり取りはSlackで行なっているのですが、自動翻訳以上のスピードと精度で行なってくれています。

:技術的な用語についても、その前に理屈を知らないと正しく翻訳できないので、中国の技術チームとミーティングして勉強させています。私は日頃から「あなたたちは単なる翻訳ではなく、架け橋だよ」と発破をかけています。翻訳チームも自社の社員なのですが、この体制を組めていることは誇りですね。


ライブストリーミングより

日本での今後の展開について教えていただけますか?

:『リブドル!』のミニプログラムの日本語化を進めて日本の方が参加しやすい体制をつくりたいと思います。それから、ライブストリーミング等のコンテンツも日本語でも実施できたらと思います。この企画がVTuberとちがうところは、しっかりと構築された世界観の中で、キャラクターIPをつくっているところです。アニメシリーズは実際のアイドルでいうドキュメンタリーの位置づけで、ライブストリーミングが劇場でのパフォーマンスやお客さんとのインタラクティブなんです。制作チームもそれぞれで起きたことを互いにフィードバックして、より高めた表現にしてシーズン2に向けて制作を進めています。Twitterの日本語アカウントではひき続き情報を出していきますので、まずは『リブドル!』で検索してください!

info.

  • 月刊CGWORLD + digital video vol.247(2019年3月号)
    第1特集:第1特集:『ReVdol!』(リブドル!)
    第2特集:第2特集:3Dエフェクト最新事情
    定価:1,512円(税込)
    判型:A4ワイド
    総ページ数:144
    発売日:2019年2月9日