>   >  CGWORLD vol. 247 連動特別企画 ~菊地 蓮氏が語る アニマが取り組むプロダクションパイプライン構築とHoudini活用~
CGWORLD vol. 247 連動特別企画  ~菊地 蓮氏が語る アニマが取り組むプロダクションパイプライン構築とHoudini活用~

CGWORLD vol. 247 連動特別企画 ~菊地 蓮氏が語る アニマが取り組むプロダクションパイプライン構築とHoudini活用~

Houdiniをフル活用してエフェクトアーティストの経験値やノウハウを共有

CGW:次に菊地さんがパイプライン設計と同じように注力しているHoudiniの導入についてお聞きしたいと思います。Houdiniに力を入れている理由はどのような点からなのでしょうか。

菊地:私自身、エフェクト制作のメインツールとしてHoudiniを使用しているのですが、使い始めてからまだ6年ぐらいです。MayaからHoudiniへ移行したのですが、Houdiniを使ったエフェクト制作は、エフェクトアーティストがエフェクトを作成するときの考え方に非常にマッチしています。また、Houdiniはエフェクトアーティストの経験値やノウハウをノードやアセットとして保存できるので残して共有しやすいしくみになっています。この集合知が加速していく感じは、Houdiniならではのものだと思います。考えたエフェクトをアセットとしてまとめて共有化して、既知のエフェクトは簡単に作成して他の新しいエフェクト開発に時間をかけることができます。

CGW:現在、社内でHoudiniを使っているのは何名ぐらいですか?

菊地:だいだい11人ほどです。新人からベテランまでとてもバランスのいい構成になっていて、メンバーも幅広いキャリアの人たちが集まっています。Houdiniの場合、常にエフェクト制作の手法が進化しているので、次々と新しい手法が出てきます。その分、過去の積み重ねが利かないのですが、若いスタッフが知識のハブになることもあるので、ベテランにとってもよい刺激になっていると思います。





エフェクト制作にHoudiniを活用し、パイプラインに効率良く組み込むことでエフェクト制作の効率とクオリティが向上した。これまでのHoudiniによるエフェクト制作のノウハウをナレッジベースとして蓄積することで、新人スタッフでもクオリティが安定したエフェクトを制作することができる。図はモンストアニメの1ショットだが、インターン時代からショットのエフェクト制作に参加している新人スタッフが作成した

CGW:菊地さんは海外経験も長いですが、海外と日本のプロダクションではどのようなちがいがありますか?

菊地:よく海外プロダクションと日本のプロダクションとの制作クオリティの差ということを聞かれるのですが、自分の経験範囲内での感想として、海外のプロダクションは求められているクオリティとそれを実現するために与えられている制作環境そのものが日本とちがうと思っています。ハリウッドのハイエンドのプロダクションは、ハイクオリティな画をつくるために数十年というスパンで多額の予算を費やして技術を蓄積してきています。この経験値の蓄積は一朝一夕に埋まるものではないので、少しでも追いついていくためにはパイプライン整備を含めた効率の良い制作環境を構築して、経験値を効率よく上げるための環境を整えながら、実際にクオリティを上げていくために個々人の目を肥やしていかないといけないと思っています。

CGW:パイプライン設計では、理想型までまだ半分ぐらいというお話でしたが、今後の菊地さんのビジョンはどのようなものなのでしょうか。

菊地:エフェクトチーム自体は良いかたちになってきているので、今後はもう少し効率化を進めたいと思っています。もっと作業を効率化して浮いた時間でリッチなエフェクトをアーティストがつくれるような環境を用意してあげたいですね。それに加えて、僕は集合知というものを大事にしていて、みんなで上に上がっていきたいと思っています。去年から今年にかけてもそうだったのですが、Houdiniを仕事で使っているフリーランスの方だったり、Houdiniを使っている会社の方に出向してもらって、僕たちのチームに入ってもらい、一緒に仕事をしてもらっています。そうすることによって、外の経験値をもった方のノウハウを社内に蓄積していけるし、外から来ているアーティストの方には、アニマで蓄えているパイプラインやHoudiniのノウハウを提供することもできるということを実践しています。出向から自分の会社に戻ったときに、その会社で出向中に得た知識を広めていったり。そんなことをしながらHoudiniがもっと普及すればいいなと思っています。

CGW:非常にいい波及効果を生み出す取り組みですね。

菊地:Houdiniが使えるアーティストや会社が増えれば、自分たちも楽になっていくし、日本のエフェクトのクオリティも上がっていくわけですから。Houdiniのコミュニティに少しでも貢献しながらみんなで上がっていきたいなと思っています。それから、現在Houdiniはエフェクト制作をメインに使用していますが、今後はもっと使う幅を広げていきたいですね。ライティングであったりクロスシミュレーション、群衆シミュレーション、キャラクターのテクニカルアニメーションなど、プロシージャルなワークフローが活きるセクションもたくさんあります。Houdiniに限らないのですが、そのようなプロシージャルなワークフローをエフェクト以外の部署でも使用していきたいと強く思っています。Houdiniを使うことで、プロダクションの制作が一気に効率化することができるので、これからも積極的にやっていきたいと思っています。もちろん、Houdiniだけではなくて、Substance Designerとかプロシージャルで使えるツールをいろいろと組み合わせてパイプラインを構築して、より生産性を上げて、アーティストがクリエイティブに時間をかけてしっかりやっていくという、僕等の理想とすると作業環境を実現できればと思っています。

Profileプロフィール

菊地 蓮/Ren Kikuchi

菊地 蓮/Ren Kikuchi

カナダ・オンタリオ州のシェリダンカレッジを卒業後、スクウェア(現スクウェア・エニックス)のヴィジュアル・ワークスでの勤務を経て、米Blizzard EntertainmentのCinematics Divisionにて数々のゲームムービーの制作に携わる。その後は日本のマーザ・アニメーションプラネット、米サンフランシスコのIndustrial Light & Magic、ニュージーランドのWeta DigitalにてSenior Effects Technical Directorとして大規模映画のVFXやフルCG映画に参加。2017年にアニマ入社。現在はCGスーパーバイザー兼VFXスーパーバイザーとして、主にエフェクトチームのマネジメントとパイプラインの開発を担当している
www.studioanima.co.jp

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